真田十勇士
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巻ノ二十九 従か戦かその十
「こうした兵糧や城の壁等を調べる」
「そのことも大事なのですな」
「戦においては」
「細かいことが」
「御主達も戦は戦の場だけでするものでないことはわかっておるな」
幸村はその家臣達に問い返した。
「そうじゃな」
「はい、そのことは」
「我等もわかっておるつもりです」
「戦に加わったこともあります」
「ですから」
「ならよい、戦はな」
何といってもと言うのだった。
「兵だけでなくな」
「兵糧や武具」
「それに城や砦を確かにさせる」
「そうしてですな」
「全てを万全にさせて」
「そうして戦うものですな」
「だからじゃ、戦の場で戦う前にな」
まさにというのだ。
「全てを整えておくのじゃ」
「そうしますか」
「全ては」
「そしてそのうえで」
「戦となりますな」
「そういうことじゃ、だからこうしてな」
彼等を連れて、というのだ。
「見回っておるのじゃ、抜かりがない様にな」
「そういうことですな」
「まずはそうしたことをしっかりとして」
「そのうえで戦に挑む」
「その用意をしておるのですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「全ての城と砦を見回り」
「何処も抜かりがない様にして」
「戦を迎えますか」
「そうなる、そして御主達にもじゃ」
幸村は山の中を進みつつ家臣達自身にも告げた。
「働いてもらうぞ」
「戦の時はですな」
「その時は」
「そうじゃ、忍としてな」
その立場からというのだ。
「この上田で働いてもらうぞ」
「この上田は山が多いですな」
「それもかなり」
「その上田において」
「存分に」
「働いてもらう」
まさにという言葉だった。
「無論拙者もな」
「殿は兵を率いられるのでは」
「そうして戦われるのでは」
「そうすると共にじゃ」
将として戦いつつというのだ。
「拙者もまた忍として戦う」
「野山を駆け巡り」
「そうしてですか」
「戦われる」
「そうされるのですか」
「そうするつもりじゃ」
家臣達と同じくというのだ。
「勝ち上田を守る為なら何でもする」
「ですか、ただ殿」
ここで根津が眉を曇らせて幸村に尋ねた。
「一つ気になることがあります」
「民のことじゃな」
「いざという時は逃げよと言われていますが」
「うむ、しかし巻き込まれるとな」
「民を戦に巻き込まぬ様にしましょう」
筧も言う。
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