IFのIFストーリー
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新たな・・・
「・・・ん」
ユリスの決闘の後、少し遠回りして帰ろうとしていたら誰かが気配を押し殺してついてくるので近くの公園まで歩き、尋ねる。
「・・そろそろ出てきてくれても良いんじゃないかな?」
「・・・あらら、バレてましたか」
とひょいっと木の影からクローディアが出てきたので少し驚く。
「なんだ。生徒会長じゃないですか。こんな時に何か用で?」
「・・ふむ。ええ、言いそびれていましたが明日、純星煌式武装(オーガルクス)の選定及び適合率検査をしますので書類にサインをして欲しいのですが、問題ありませんか?」
「・・・あー、俺はいいよ。そうゆうの興味無いし」
と手をプラプラさせて拒否する。
「まずそんな物を欲しがる奴なんて腐るほどいるだろ?そいつらからでいいよ」
「ええ。いるにはいますが先に優先されるのは序列上位者なのでなかなか回ってこないんですよ?」
「じゃあ尚更俺が受けるわけにはいかないな。会長が悪く見られるのも寝覚めが悪い」
そうやって手をすくめて見せるとクローディアはクスッと笑い
「なら問題無いですね♪もともと悪く見られてるので」
と言うと同時に俺は相手が引く気は無いと分かったので
「・・・分かった。付き合うよ」
おとなしく書類にサインした。
「では、また明日」
「ああ」
そういって風のように去る後ろ姿は何故か嬉しい顔が想像できるような足取りだった。
ー翌日ー
俺が生徒会室に向かおうとしたらどうやら綾人も検査を受けるようなので一緒に向かう。
「・・・それは大変だったな」
「あはは、まあ仕方ないさ」
どうやら昨日は沙々宮と校内を見てきたらしいが沙々宮は方向音痴らしく大変だったのこと。
「失礼しますっと・・・他にもいたんだな」
「っ⁉︎てめえは!」
「あら、お知り合いでしたか」
「知り合うって決闘しただけだけどな」
「あら」
と驚く顔には少し興奮の色も混ざっていて。
「・・・では行きましょうか」
敢えて口に出さず俺たちを先導する。
「そうだな。行くか」
「あ、ああ」
レスターは黙って同意し、綾人は状況が分からない感じの返事をしていたので軽く説明しつつクローディアについていく。
ーそこは地下でいろいろな研究者らしき姿の人が行き交っていた。
「・・・では順番はどうしますか?」
「俺から行くぜ。いいな?」
「俺は構わない」
「構わないよ」
綾人はどんなのか見てみたいというような表情だし俺は興味無いのでレスターに先を譲る。
レスターは手慣れた様子で端末を操作し始める。すると巨大な空間ウィンドウがいくつも表示されそれを真剣に眺めている。
「ずいぶんと多いんだな」
「ええ星導館学園のオーガルクスの総数は二十三。これは六学園中トップなんですよ」
ちなみに表示がグレーな物は現在貸出中とのこと。
そしてレスターが決めて検査室に入るのを見るとクローディアは驚いた。
「マクフェイルくん、黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)を選びましたか。これはまた・・・」
「また仰々しい名前だな」
そう言いつつも内心魔剣と呼ばれるだけの威圧を感じていた。
「確かにそれだけの力を秘めていますから。ああ、いえ、それはいいのですが・・・」
と何か言いづらそうにしていた。
「俺がいると言えない事か?」
「ええ。それもありますが」
「別に良いよ。というか、アレは姉さんが使っていたオーガルクスなんだね」
「綾人って兄弟いたんだな」
「まあ、いまは探してるんだけどね。っとどうやら始めるみたいだよ」
そういっていたので見ると、レスターが発動体を起動し始めた。が、閃光とともに弾き飛ばされるのでどうやら失敗のようだ。
「拒絶されましたね」
「拒絶・・ねえ。まああれだけ強い気を放ってるから意思ぐらいは持ってるんだな」
と言っている間にもレスターは果敢に挑むが何度も弾き飛ばされ、ついには
「適合率、マイナス値へ移行!これ以上は危険です、中止して下さい!」
と検査員が言うが遅い。周りが熱を持ったように熱くなり始める。
「まじかよ。あっちいなぁ。逃げていい?」
「そうだな、一旦っ?!泰人!!」
俺が立ち去ろうとした瞬間、剣がこちらに向かってきていた。かろうじて気づいた俺は真横に飛び回避する。
「っくそ!あぶねえなぁ!」
そんな苦言は意にも介さないといった様子で俺に剣先が向く。
「泰人。大丈夫か!」
「ああ。少しこいつと戯れてくる」
と割れたガラスを蹴破り広い場所に出る。
「ったく。いつまでも寝てんじゃねえよ」
と気絶していたレスターを起こすとそのまま片手で綾人のところに放る。
「レスターよく見とけ!」
剣が額を貫かんと迫るがそれを見切りで避け柄を握る。
「力でねじ伏せるってのはなぁ!こうやるんだよ!!!」
スサノオを解放。そのまま剣を抑えつつ振るう。
「っ⁈ぐっ‼︎」
すると剣から何かが俺の中に入り込んできて意識を乗っ取ろうとしてきたので負けじと気を放つ。
「オラァァァ!!」
そうして剣を下に向けて突き刺すと周りのガラスが粉々になる程の巨大な衝撃波を放った。
その後魔剣は大人しくなったのか何も起こらないので剣を抜きそれを綾人に放る。
「わっ!とと」
「ほら、次は綾人の番だぞ。あ〜疲れた。会長、帰って良いですか?」
と許可を貰おうとそちらを向くと俺の手を取ってきた。その驚きと手の火傷のせいで少し顔を顰めてしまい、痛がったと勘違いしたのか手当てを受けろと強引に座らされてしまった。
「まったく、一次はどうなる事かと・・」
と珍しく心配する姿を見て、俺は前世でもそうゆう顔をして心配してくれた人と重なってしまいズキンと胸が締め付けられた。
「・・・聞いてるんですか泰人さん?」
「あ、あ〜ゴメンゴメン。けど大してけが人はでなかったしセーフセーフ」
「どこがですか!貴方がそのけが人の中に入って無いんじゃないんですか?」
「あらら、手厳しい」
「・・とりあえず応急手当はしておきましたので後でしっかり治療を受けておいてくださいね」
「・・・なら帰っても良いですか」
と、恐る恐る聞くとにっこりと笑いかけてきてくれたのでどうやら許してくれ・・・
「まっったく反省してないですね。ダメに決まっているでしょう?」
「分かった分かった。治療受けにい「そうやって納得させようとしても無駄ですよ」・・・悪かったよ」
観念したように降参の意を示すと、やっと怒気を収めてくれたので顔を上げる。
「これが終わったら・・・ってアレは」
顔を上げたときにたまたま開きっぱなしの武器一覧が見えたのでその詳細を見る。
「・・・クローディア、あの武器」
「はい?あら泰人さん興味持ってくれたんですか?」
「・・少しな。綾人が終わったら受けてみてもいいか?」
「まったく、あんまり無茶しないで下さいね。とちょうど終わったみたいですね」
と計測を終えた綾人が戻ってくる。
「お疲れ様。さて行くかね」
「ああ、ありがとう・・って泰人も何か試すの?」
その声を背中で受けつつ
「ちょっくら行ってくる」
と右手首を左右に振りながら検査室に降りる。
「えーっと、あったあった」
端末をタップしながら出てくるのを待つ。
「神楽ね・・・よし」
ブシュッという音を出しながら出てきたのは何と刀だった。
鞘に収められたソレは長く一般的には太刀と呼ばれるもので、鞘に収められたままでも威圧感を放っている。
そうして刀を抜こうと柄を握った瞬間上からアナウンスが入ったので大人しく聞く。
「・・・泰人さん!そのオーガルクスは少し特殊でして。落星雨の時に刀と融合してしまい鞘から抜いた瞬間起動します!しかもとても重いので落として足を刺さないように」
「了解。だけど鞘を抜かなきゃ重くならないんだな。ま、そっちの方が楽でいいけどな・・・!」
ゆっくり鞘から抜こうとするが何故か刀身から鞘が離れるほど心の中がざわつき始める。
「ククッ。あ、いや測定を始めてくれ」
自分がなんで笑ったのか不思議に思いつつ、今はその雑念を払い気を集中させる。
「適合率60%です」
「順調な滑り出しか・・・っがぁっ⁉︎」
もっと気を込めようと集中していると急に悪寒が走る。脳が何かに侵されるような感覚になり、気をぬくと自我を奪われるようだった。
「適合率55%・・・大丈夫ですか?」
「あ・・っああ。続けてくれ」
表面はそう取り繕ってはいたが内心焦る、適合率云々じゃなくて本当に自分を乗っ取られそうだった。だが刀の思い通りは癪なので万華鏡写輪眼を解放し自分に幻術をかけ落ち着かせる。
「まったく変わってるにしても少し調子に乗ってんじゃねえのか・・・!」
再度気を込めると、適合率も上昇するがそれと同時に幻術を押しのけて心に侵食してくる。
「適合率80%・・・そのまま維持しつつければ合格です」
「了解。だけど全力出さないとコイツも満足しねえだろ!」
全力を出して気を込める。すると目の前が光に包まれた。思わず目を瞑ると急に暗くなりゆっくりと目を開ける。
「くっ!・・・なんだ?」
目のを開けるとそこには何かがいた。恐ろしくもあり羨ましくもあり、何より懐かしくも感じた。これは刀の意志ではない。
「・・・何を恐れている?」
何かは俺に問いかける。
「恐れる?」
「何故そんなに離れたがる。お前は生まれ変わったんだぞ」
「生まれ変わった・・・?」
ある意味生まれ変わった。それをいったらその前も含まれるが。
「そろそろ」
「・・・!」
何かは俺の目の前に来ると言った。
「ソレを出しても良いんじゃないのか?」
そういった瞬間何かが俺の中で弾けた。今まで抑えてきた。あえて嫌悪していたソレを。
あえて意識しないようにしていたソレを。
「認めても良いんじゃないのか?」
認める?これを認めたら俺が俺じゃなくなるのに?
「違う」
何かは否定する。
「ソレはお前自身だ。認めろ。受け入れろ。ソレを受け入れなきゃお前は強くなれない!!」
強・・く?違う、俺は強くなりたいんじゃない。
だんだん声を大きくし、何かは俺に訴えてくる。
「お前は強くなりたいんだろ!!強くなって大切なものを守りたいんだろ!!!今度はその手でしっかり助けたいんだろ!!!!」
俺・・は、守れなかった。護りたかった。でも、もう守りたいものが護りたいやつはいない。
「嘘をつくな!!本当にいないのか?もう守れないのか⁉︎」
嫌、だ。もう守れないのは嫌だ。
「強くなりたいならソレを受け入れろ!受け入れた上で乗り越えろ。お前には出来るだろう?守りたい者を再び守りたいのならソレを従えろ!」
何かが俺の中に入ってくる。
「・・そう、だな。この欲望を俺は遠ざけてきた。俺なんかが持っていいものじゃないと。だけど、もう良いんだな」
ソレを認める。認めた上で抑える。それは大切な心の一部として心の深くに閉じ込めておく。守りたい人を生きながら守りたいその瞬間まで。
でも、ときどき顔は出すんだろうと何処かで思っている自分もいて。
「・・クッ。ハハ。この気持ちは抑えようがねぇや」
幾多の戦いで感じたこの感情は、闘争心なんだろうか。前世では多勢を相手にした時、千冬さんを相手にした時、何より一夏らを相手にした時。心が震えた。強者に、強者たちに挑む時の感覚。その感情を俺は認める。
すると引き上げられる感覚に襲われ、気づくと俺は刀を握ったまま、立ち尽くしていた。
「・・・率、適合率200%⁉︎と、とりあえず合格しました。武器を戻してください」
「・・・ああ、お疲れ様」
刀を鞘に収める。そして武器を元に戻すと呆然としたまま綾人たちのところに戻る。
「お疲れ様です」
「・・・・・」
クローディアに声をかけられてもぼーっとしている俺に近くに寄って声をかけてくる。
「・・・泰人さん?」
「・・・・・」
「や・す・と・さ・ん?」
「・・?あら、いつのままにここに戻ってたんだ?」
「大丈夫ですか?どこかおかしいところはありませんか?」
そう言ってくるクローディアに大丈夫と返事をして寮に帰る。
そんな俺をクローディアは心配そうに見つめていた。
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