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シークレットゲーム ~Not Realistic~

作者:じーくw
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信頼




 それは、暫く山道を歩いている時の事。

「さて……、向こうに誰かいるな。」
「え?」

 日影が視線を向けたほうには茂みが繁り、木々もあり視界を遮っている。悠奈は眼を凝らしてみてみたが、確認する事は出来なかった。

「男……だな。体格も上々」
「見えないし……。一体どんな視力してんの……」

 ゆっくりと近づいていくと、木々を超えた先に少し開けた場所に出てその場に確かに男はいた。長身の男で同じく首輪を巻いており同じプレイヤーなのは間違いないだろう。

「ぬ……。なんだお前たちは?」

 男は、2人に気がついたようで振り返っていた。

 だが、この時妙な気配を感じていた。だから、悠奈と日影から適度に距離を取っていた。
どんな行動をとっても対処できるように間合いを取るその行動。どうやら、ただの素人ではないのは判る。

「(……この展開も狙っていた、とも言えるな。当然だ。この初期配置は連中が決める事だから)」

 刀真は、そう分析をしていた。

 見た所 この男は慎重派であり、体格も良く 重心を軽く低くし、やや 拳に力を入れているのも判った。恐らくは、格闘技。拳闘の類を扱えるのだろう。

「なんだ。と聞いている」

 警戒心を多少前面にむき出し、再びそう聞く男。

「ああ、私は藤堂悠奈よ。で、こっちは」
「日影……日影刀真だ」
「そ、日影さん。それで、キミは?」

 悠奈が軽く挨拶をしながら、男に名を聞こうとするが……、男は口を噤んだ。どうやら、答えるつもりは無いようだ。

「あら……、ダンマリ? 名乗らせといてそれはないんじゃない?」
「別にオレは、名を頼んだわけじゃない。『なんだ?』と聞いただけだ。……気配を消して近づいてきた怪しい輩に名乗るつもりは無い」
「……」

 返答を訊いて、刀真は少なからず後悔をしていた。

 日頃の癖で、気配を殺す事は多いのだ。それをこの男は感じ取った様子だ。それだけでも対したものだと思えるが、今はマイナスでしかない。

「それは……、まぁ こんなヘンテコな事態だし? 慎重になるのはしょうがない、って思わない? キミもそうだし」
「……それでも オレは怪しい者達に名乗る名は無い」
「ご、強情ね……。日影さんも何か言ってよ。ちょっとは」

 悠奈に話を振られた所で、刀真はゆっくりと頭を振ると、答えた。

「そうだな……。確かに、オレ達の初対面の状況が不味かったようだな。なら、こうしようか」

 男の目を見ながら、刀真は続ける。

「これから言う言葉。信じる信じないはあんたの勝手だ……、オレは 情報を1つを手に入れている。それを無料で提供しよう。そして、その代わりに自己紹介を願いたい、が。……勿論、その判断は聞いた後で構わない。内容と釣り合わないのであれば、答えなくてもいい」
「………」

 男も日影の目を見つつ考えを張り巡らせる。
 今までも色んな人間の目を見てきたが、少なくとも目の前の男、刀真は嘘をつくような感じはしなかったのだ。只者じゃないと言う気配も纏っているのも同じだ。

「勿論……、これ以上 オレは近づかない。それも約束する。……聞くだけ聞いておいて損は無いと思うぞ」

 刀真がそう続けると、男は軽くため息を吐いた。

 どうやら、その条件を呑んだ様だ。悠奈は軽く日影に笑いかける。ここは全面的に任せようと判断した。

「判った。……それで、情報とは?」
「このPDAは お前はもうある程度扱ったのか?」
「ああ……。とは言っても 首輪の解除条件とやらくらいだが。あと、マップ情報、先ほどのメッセージくらいだな」
「成る程。……十分だ。ついさっきの事、なんだが。細切れのノートらしいものを森で見つけてな」

 そう言うと、刀真はノートを鞄から取り出した。
 その鞄の存在を悠奈も知らなかったから、これに関しては、少し驚きを隠せず男同様に聞き入っていた。

「この中身に興味深い項目が多々あった……。《食料補給方法》《武器の確保》そして……恐らくはこっちが重要なんだろうな。何度も書きなぐっているようだから。《メモリーチップの入手》と言う単語が」
「……っっ!!」

 メモリーチップ、という言葉を言った途端に、男の表情が一気に強張った。

 どうやら、条件と合致しているのだろう。若しくは、それに関わってくるのだろう。その時点で、状況証拠ではあるが、相手の情報の1つを抜く事に成功した。

 確かに慎重派だが、所詮は一般人の域。
 表情から読み取るのは容易い。この話を中心的にすれば、多少は気は許す可能性もありそうだ。

「そして、後は『解除条件、……メモリーチップ ……集める』となってる。……まぁ、こんな馬鹿げたイベントはこれが初じゃないって事だろう。ノートの腐敗状況から数ヶ月以上は経っているようだからな。持ち主は、メモリーチップとやらを探していた様だ」
「……なるほど、それでそのメモリーチップについては、そのノートに記されているのか?」

 刀真の予想通り、男は話に食いついてきた。

 ここからだったら、もう話は早い。

 男が欲しているのは、間違いなくメモリーチップのようだ。
 食料・武器の単語を言っても何も変化が無かったところを見ると間違いないだろうメモリーチップが食料や武器に繋がる事を知らないと言う事もわかった。

「ああ、書き方からすると、推測の域だとは思うが……。そうだな。ん、態々読み上げるのもあれだ。このノート、そのままお前に譲ろう」
「何っ!?」

 男は次には驚愕の表情をしていた。

 この事態で何よりも情報が重宝されるのは判るだろう。だが、この男はその情報をまるまる渡そうとしているのだ。
 その条件が自己紹介?何か裏があるとしか思えなかったのだ。

「……何か裏があるとしか思えないな。その情報の対価が、オレの自己紹介だけとは到底思えない」
「ああ。聞いてくれて、逆に感謝する。――……こちらの事態も結構切羽詰っていてな。プレイヤーナンバーがわからないと文字通り、死活問題なんだ」
「プレイヤーナンバーを?」
「ああ……。わけが判らんが、説明会の文以外にもオレ達2人にメッセージが送られて来てな」

 刀真はPDAの画面を向けた。
 だが、男とは数mは離れていた為、画面の文字が見えているかどうかは判らない。

「……ここからでも、文字は見えるか?」
「ああ……見える。……なんだ? その≪R:CODE≫と言う単語は」
「それが判れば苦労はしないな……。さすがにそのあたりはこのノートでは、判らなかったんでな」

 苦笑いをする刀真。
 至る所がボロボロのノートだ。それも仕方ない事だろうと思った。

「成る程……。確かにその内容は、キツイな。お前たちの目的は大体判ったが、俺には解決は出来ないようだ」
「……と言う事は?」
「ああ、オレはナンバー4じゃない」
「ああ~……そうなんだ、それは残念」

 悠奈もそう肩を落とす。
 ……が、そこまで落ち込んでるわけではない。
 少なくとも、この男ではないという事が判ったと言うことが判っただけでも良い。PDAのナンバーを向け、見せてくれた以上は嘘では無いから。そこに表示されていたナンバーは、《7》だった。

「ん。ほら。約束だ」

 男は、ノートを放り投げた。
 そのノートは、丁度男の足元付近に落ちた。ぼろぼろだった為、ページが少しばらけてしまったが、戻すのは問題なさそうだ。

「……良いのか? 大した対価ではなかったのに。」
「別に問題はない。一応一通りは覚えている。……それに、相手の信頼を得るには、まずは無償の提供、だ……。それが基本。赤の他人、今日あったばかりの他人に信じてもらう為には、な。それに、アンタがNo.4じゃないと知れただけでもいい。それだけでも十分な収穫だ」
「……そう、か。……オレの名は真島だ」

 男はノートを拾うと、そう答える。
 どうやら、名を明かしてくれた以上は最低限の信頼は得られたようだ。

「ああ、よろしく。真島」
「改めて私は藤堂悠奈。よろしくね、真島」
「ああ……」

 まだ、警戒は完全に解いてないようだが、一歩前進と言う事だろう。

「真島、アンタはこれからどうする?」
「……日影がくれたノートを元に此処を調べてみる」
「そう、か。オレ達は会場とやらに言ってくる。何か判ればまた教えるよ。真島は行かないつもりだろう? まぁ また運良く巡り会えれば、だがな」
「……なぜ、そこまでする? ……信頼を得るために、と言うのは理解は出来ているつもりだが、なぜそこまで出来るのかがわからん」
「……俺の最終目的は物騒な首輪を外したい事。その為には仲間は多いことに越した事は無い。という事だ。おそらくはお前も色んな人間を見て経験もしているんだろう。……オレも同じと言う事だ。歳数がお前より上だから、お前が経験しているそれ以上と思ってくれていい。目を見れば大体の人間がわかる。――お前は悪い人間じゃない、とな」
「……そうか。わかった。オレの方でも何か判り、今後また会えば情報を伝える」
「そうか。今はそれで良い。ゆくゆくは、行動も共にしたい。くらいは考えているが、そこまでは互いに許しあってはないだろう?」
「その通りだ」

 真島はそう答えると、ノートを片手に森の奥へと消えていった。

 単独行動を好む性格だと言う事もこの時理解できた。……信頼できたときはわからないが、今はこの程度で良い。十分だろう。

「……交渉事は、日影さんに任せたほうがすんなり 行くんじゃない? も、全部任せていい?」
「今回は経験が物を言った、それだけだ。……それに、相手が異性となれば悠奈の方が断然交渉しやすいだろう。……適材適所だ」
「あはは……。その時は任せてくれていいよ。」

 悠奈は軽く笑ってそう言う。
 まだ、ゲームは始まったばかりで、遭遇したプレイヤーも1人だけだ。確かに、同じくらいの女の子だっていたし、何より襲撃者は女だ。今回は、男相手で更に慎重な男だったから、日影が言うとおり交渉ごとの経験がものを言ったのだろう。

 そして、2人はまだ見ぬプレイヤーナンバー4を探しつつ、会場の方へと向かった。

 森の中を歩いているその時だ。

「あ!! アイツ!!!」

 悠奈は、一気に怒気含んだ声を漏らした。
 まだ、距離はあるが数10m先に先ほどの襲撃者を発見する事が出来たのだ。決して大きな声ではないが、静寂に包まれ虫の音1つも聞こえず、風が無いから羽音も聞こえない世界。相手に聞こえたのは必然だった。

「っ!!」

 悠奈に気がついたその襲撃者はすぐさま行動を開始。撒く為に茂みの中に飛び込んでいった。

「逃がすかっての!!」
「おい。あまり無茶は。」
「危険なプレイヤーだったとしたら、野放しに出来ないでしょ! 全員をクリアさせる事が目的なんだから!」

 悠奈はそう答えると、襲撃者を追いかけた。茂みの間を抜けている以上、追いつくのは難しそうだが。

「ここは山道だぞ! 無暗矢鱈に走り抜けたら……」

 と、声を掛けるが時は遅し。
 悠奈は離れており、聞いてもいなかった。行動を共にすると言う指示が来ている以上は、自分も追いかけなければならない。

「やれやれ……。沸点が低い。随分と短気なようだ。……蹴られたのなら仕方ない、か? が、オレは銃を突きつけられたんだがな……」

 自問自答をしつつ、悠奈の後を足音を殺しつつ追いかけた。
 そして、悠奈が通り抜けていった方をみる。そこには見事に視界が開けており、足場も見えない。

「……あの馬鹿」

 日影は足早にそちらを確認する。
 確認すると、どうやら山道を通り過ぎたようで、2、3mはある崖がそこにはあった。掻き分け進んでいた為、草を踏んだ後、木の枝の折れた状況。足跡がついた地面。それらを確認したら、間違いなく悠奈はここに来たのだろう。
 十中八九、飛び出し……そして崖下へと落ちたみたいだ。

「大した高さじゃなかったのが、せめてもの救い……、だな」

 日影は軽く膝を曲げ、崖から飛び降りた。目算どおり、2m以上3m以下。大した高さじゃなく、刀真はまるで、忍者の如き身のこなしで柔らかい膝、足バネを活かし、衝撃をいなして着地をして、動きもスムーズに行った。
 そして、案の定追いかけていた悠奈はそこにいた。だが、予想は少し外れる。何故なら、悠奈以外の男もそこにはいたから。

「……全く。本当に短絡的過ぎるだろう。……ここがもうちょっと高かったらどうするつもりだったんだ?」
「あはは……ゴメンゴメン。確かにもう少し高さがあったら危なかったわ。その時は、無傷で着地は無理だったかな?」
「やれやれ……」

 流暢に会話を続ける2人だったが、突然の出来事に困惑を隠せない男が1名居合わせていた。

「一体マジで アンタ達は何者なんだよ。2人して……。初めは冗談って捉えてたが、二度見せられたら信じるしかないって事か? どうやら、さっき言ってた忍者ってのは本当らしいな」

 男は苦笑いをしていた。
 どうやら、デジャビュを感じているらしく 同じような光景を二度見ればもう笑うしかなかったようだ。

「あはは……、違う違う。で、この人はさっき言った人。協力関係を結んでる人よ。もちろん、同じプレイヤー」
「自己紹介はもうすんでいるのか?」
「ああ。……アンタの名前は聞いてないがな」
「そうか。悪いな。オレの名は日影だ」
「オレは藤田。藤田修平だ」

 無事、自己紹介も済み 経緯を其々が話をした。
 どうやら、悠奈はあの崖から飛び降りた後、修平と出会ったようだ。辺りを気にしていた修平だったのだが、流石に頭上までは確認して無かったらしく、修平にしてみれば、いきなり目の前に女が飛び降りてきて大層驚いたようだった。……気持ちは判らなくもないが。

「それは驚くはな。同じ様な光景が二度も続くなんてな。無理もない」
「まぁ……あまり無い事だからな」
「いやー、あたしも流石に無いわ」
「……当人であるオレ達が言えた事じゃないだろうが」

 笑う悠奈と同情する刀真。そして苦笑いする修平。
 日ごろ無い経験をする。こんな異常な空間でこんなくだけた話をする事になるとは思ってもいなかったようだ。

 そして、互いの呼び名を名で呼び合うことにした。

 堅苦しいのは嫌いだと。問題は2人より歳上の刀真だった。

「……なら、オレの名も刀真でいい」
「え……でも、歳上だしね。呼び捨てするのは……」
「確かに、流石に少し抵抗があるな」
「まぁ、慣れたらで構わない。オレは 呼び易い下の名で呼ばせてもらう」

 刀真がそう言うと、修平と悠奈も頷いた。
 まだ、初日でそこまで打ち解けるものでもないから徐々に、という事だ。

 そして、この状況についてを話し合うことにしていた。

 どうやら、修平は話も通じやすく、悠奈から話を進めた。

「そうだ修平。あんた、今のこの状況ってどの位まで把握している?」
「あんまりだな。良ければ情報交換をしないか?誰か他の参加者を見たとかでもいいし、気になるものを見つけたとかでもいい。……といっても、俺のほうは交換できる情報なんて殆ど無いんだけどさ」
「そうね……。君のプレイヤーナンバーを教えてくれるのなら、その情報を提供してもいいわよ?」

 悠奈が意味深に笑いを見せながらそう答える。
 駆け引きをしているようだが、今はそう言う場面でも無いと考えている刀真。が、情報が大事だと言う事、どうやら修平もわかっているらしく、その上で優位に立とうとしているのかもしれない。それも重要な事だ。

「プレイヤーナンバー?」
「あれ? どうしたの?」
「いや……、悠奈の情報にそこまでの価値があるのかと思ってさ」
「……修平の感覚は間違ってない。――悠奈は色々と端折りすぎだ。」

 やれやれと、しているのが刀真だ。
 まだ、序盤も序盤。こんな段階で明らかに情報を知っていると言う風に態度に表すのはどうかと思える。

「どういう意味だ?」
「まぁ……あまり、妄りに言うものじゃないが、物騒なメッセージが届いてな」
「ちょっとちょっと! 私を置いて進めないでって。」

 悠奈は慌てながら話しに入ってきた。
 流石にさっきの二の舞はゴメンなのだろう。相手が悪かったという所もあるが、修平は比較的話も通じやすく、初めのつかみもOKだった。これくらい、自分で信頼を摑まなければ、今後の大きな目標を達する事なんて出来るわけない。

「ま……、不信感を与えない事だ。……わけのわからない状況に放り込まれて 攫われたとして、持ち物を盗られてない。……盗られる所か手にあるのはこの島には似つかないPDAと首輪だ。……打算的に構えても進まんだろう?」

 刀真は自身のPDAを取り出しつつ、自分の首下を指差した。

 そして、修平を見て。

「はぁ……、そんな堅苦しくない様にって思ってただけなんだけど……。日影さん。別にもったいぶってる訳でも、打算的なわけでもないわよ」

 悠奈は苦笑いをしていた。
 修平は2人のやりとりを冷静に見ていて、多少の違和感は拭えないでいたが、現段階ではそこまで警戒する必要は無いと思っていた。

「……まぁ、確かに堅苦しいのは苦手って言ったけどな。ナンバーと情報の交換じゃ見合わないと思えるんだ。まだ、全容を摑んでいるわけじゃないけど、このゲームにとってパーソナルデータは重要なモノの筈なんだとオレは考えているから」

 修平は冷静に見極めてそう答えていた。
 悠奈は、考える。確かにこのゲームにおいて、自分のパーソナルデータに関する情報の扱いは慎重になったほうがいい。

 PDAを確認した以上は。

 誰がどんなクリア条件で、何を対象としているのか、知れたものではないから。それに、修平は物騒なメッセージと言うのも気になる。

「オッケー。判ったわ」

 悠奈はそう呟いて腹をくくる。
 彼が言っていた事を頭に浮かべながら。彼は先ほど、の真島と話をしている時、信頼とは無償の提供。リスクを得なければ信頼なんてつかめず、真に信じてもらうの等難しいだろう。

 ポケットからPDAを悠奈は取り出し、修平に手渡した。その行動を見ていた刀真は口を噤んで頷く。間違ってはいない。

 《ファースト条件》ではどのプレイヤーであろうと、問題ないのだ。

「はい。これ」
「……え?」
「私のPDAよ。これを見れば私が危険なプレイヤーじゃないってわかるはずだし、それに、日影……と、刀真が言っていた事、物騒なメッセージの事、そして私がナンバーを聞いた理由も判るわよ」
「本当に良いのか……? 逆にオレが危険なプレイヤーだったらどうするんだ?」
「ふふ、忠告有難う。大丈夫よ。優秀なナイト様がついてくれてるし」
「……誰が、ナイトだ。アホ」

 悠奈のウインクを軽く避ける刀真。
 呼びにくいといっていた名もあっさりと言ってのける事から、素の性格が出ていると言う事も良くわかった。

 だが、修平はまだ穏やかではいられない。自分の考えが正しければ……、情報ほどこのゲームにおいて重要なものは無いとさえ考えられるからだ。
これが≪ゲーム≫である以上は。

「アホって、ひどっ……。こほんっ、それに受け売りだけど、信用をもらうのには無償の提供、まずはこっちが先に相手に信用してもらえなきゃ駄目でしょ? じゃないと進まないし」
「……物騒なメッセージと聞いていたが、そこまでのものなんだな」
「ああ。悠奈とオレが出会った時に送られてきた。オレはやや遅かったがな……。島の所々に撮影用カメラを設置しているみたいだし。オレ達をここに、連れてきた連中は見てるみたいだな。……良い気はしないが」

 刀真も頷きながら答えた。そして、悠奈のPDAに上乗せする形で刀真も差し出す。

「ひのか……、刀真も良いのか?」
「ああ。悠奈が信頼を得ようとしているのに、俺だけ何もしないんじゃ アレだろ?」

 刀真はそう言って笑っていた。

「そうね、変な蟠りが出来るのだってゴメンだし。刀真ならそう言うってわかってたしね。あ、気になるものがあれば、全部見てくれて構わないわよ。変に疑われるくらいなら、よっぽどその方がマシだし」

 悠奈は刀真にウインクを再びしつつ、修平にそう伝えた。そして、刀真はそれを軽く避けつつ修平の返答を伺っていた。

「わかった。……じゃあ、遠慮なく見させてもらうぞ」

 悠奈は、この時≪リピータズコード≫では無く≪R:CODE≫となっていて助かったと思っていた。

 刀真が真島に見せた時にも思っていた事だ。そして、信用を得られるのなら、クリア条件だろうと、特殊機能だろうと他の情報は何一つ隠すつもりなど無い。修平はその辺りを承知の上でPDAを調べていた。

 ……そして、やがて刀真も言っていた物騒なメッセージ。メールに反応していた。

「『プレイヤーナンバー4と遭遇し、以後24時間共に行動せよ……』 そうか、だから悠奈はオレのプレイヤーナンバーが知りたかったのか」
「ええ。そう言うこと」
「ん。オレの方を確認すれば、オレも必要だって判る」
「『プレイヤーナンバーJと4に遭遇し24時間共に行動せよ……。』殆ど内容は同じ、だな」

 修平は刀真のメール文も読み上げると納得していた。
 内容文を見れば、刀真の方がやや難しいと思えるが、初めに悠奈と刀真が出会った以上は同じ難易度だ。後はナンバー4のプレイヤーに会えば良いだけなのだから。

「そうだ。オレも必然的に悠奈と行動を共にする事になったんだよ」

 やれやれとしている刀真。
 ちょっと、ムカつく!と思えたがとりあえず悠奈は平然としていた。自分より色々な意味で遥かに上であるからだ。

「でも、どうしてなんだ? オレにはこんなメールは来ていないし、それに悠奈の条件は『最終日までの生存』 刀真の条件は『PDA5台以上の所持』の筈だろ? なぜ、2人にだけ条件には全く関係無い、こんな指令が送られてきてるんだ?それに≪R:CODE≫って……?」

 修平の疑問は全てごもっともだ。
 まだ、自分以外のプレイヤーに出会ったのは、この2人だけだから、まだ結論を急ぐには早いとは思えるが。

「それが、判れば話は早いんだが……。ここにつれて来た連中に聞けない以上は答えようがないが」
「そうよね。それに、怖すぎるじゃない。条件満たしたとしても、ゲーム終了まで達成できなきゃ、首輪を爆破されるなんてさ」
「それはそうだが……」
「それともやっぱり、私たちにプレイヤーナンバーは教えられない?」
「いや、ここまで情報を見せてもらっておいて、さすがにそれはないよ。それにこのまま2人にナンバーを告げずに去ったりしたら、何が起こるかわからないからな」
「!」
「え? ってことは……」

 修平の言葉に注目する2人。
 その後に紡がれる言葉は粗方予想は出来ていた。

「ああ、オレがナンバー4のプレイヤーだ。2人が探していたな」
「本当に?」
「この期に及んで、嘘なんかつかないよ」
「……悪趣味持ちと言うわけじゃないだろうな?」
「いやいや、無いから。信用してくれ」

 修平は、苦笑いしつつ 絵柄を見せた。
 そこには間違いなく4の数字が記載されており、間違いなくそうだろうと思えた。……まだジョーカーの存在があるから一概には言えない事だが、嘘を言っている様にも見えない。

「オレは、以前に届いたメールにあった説明会に参加しようと思う。新しい情報は必要だし、何より他の参加者と顔合わせも出来るだろうし」
「そうね」
「異論は無い。ああ……、まだ情報が合ったな」

 刀真は、思い出しながらそう話し始めた

「会場に行く間に話そう」
「ああ。助かるよ」

 そして、3人は会場目指して歩き始めた。
 まず初めに悠奈が先に歩き出すと、刀真、修平の順番でやや後ろをついていた。このやり取り、そして傍から見れば信用してくれたように見えるかもしれないが、実は逆だ。おそらくだが、悠奈と刀真だけが、運営から指示が来ていると言うことに違和感を覚えているのだろう。

 だから、修平は決して2人を視界から外そうとしない。

 そして、刀真自身は至って普通。
 協力はすると、口約束はしたが それはあくまで口での約束普通はそこまで信用は出来ないものだ。

 だが、彼は意に解するそぶりを見せない。……それは悠奈にもわかっていた。仮に、悠奈と修平が裏切り彼を襲ったとしても……、敵わないと判るからだ。拳銃を所持しているからとか抜きにしても、あの時の雰囲気を知っている以上は勝てる気が全くしない。

 修平も、頭は切れるようだがそれは一般人の域を超えているわけでもない。驕りだと思えるが、圧倒的強者だからこそ、警戒する必要もないのだろう。


 悠奈は、上着の内ポケットに入れてある、ある物の重みを意識した。刀真に殺されると思ったときも、それに自然と手を伸ばしていた。

 それは、運営が唯一、悠奈に個人所持を許したもの。
 ……それさえも、連中にとってみれば、ゲームを盛り上げる為の小道具の1つかもしれないが、悠奈にとっては、それが全て。悠奈の意思そのもの。


――今度こそ、あんな事は繰り返さない。私は。


「ッ……」

 悠奈はこの時、同時に刀真にいわれた言葉を思い返していた。

『後追いをしようとしている様に見えるぞ。』
『……バトンを渡したとして、おまえ自身が死ねば、渡した相手が生きられると言う保障があるというのか?』

 自身の戒めとして心に刻んでいる言葉。
 この異常世界で、彼が残してくれた≪物≫と刀真がくれた≪言葉≫を胸に。同じ過ちは繰り返さず、そして……、自身の命も軽くみたりしないと固く誓っていた。









































~プレイヤー・ナンバー~



 No. 氏名  解除条件


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□ 4 藤田修平   ??????????


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□ 7 真島章則   ??????????


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□ J  藤堂悠奈   ??????????     
 更新:No.4と24時間行動を共にする。

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□ XIV 日陰刀真  PDAを5台以上所持する。 
 更新:No.J、4と24時間行動を共にする。(離れる場合の制限は2時間以内とする)

 
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