シークレットゲーム ~Not Realistic~
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ゲームの終わりと始まり
前書き
~一言~
少しマイナーな原作だと思いますが、好きなシリーズの1つです。
よろしくお願いします
それは、ある≪ゲーム≫が開催され、そして終了した数日後。
男が独り、薄暗い部屋で朗々と語っていた。
「――さぁ!いかがでしたか皆さん、今回のゲームは?意外に次ぐ意外な展開に、皆様もさぞ驚かれたのではと思います。」
男の周りにはエリア内で行われていた≪ゲーム≫を監視する為のモニターと、そして彼自身を映すカメラがある。彼はそのカメラの向こう、……ここではない、何処かでゲームを見ていた者たちに向け、明るく向上を述べた。
「それにしても今回のゲームは、人間関係に焦点が当たりましたね。見知らぬ他人同士が摩訶不思議に絆を結び、またあらかじめ繋がりのある者たちが、失われた絆を取り戻したりと……。しかし、結果としては僅か《2名》しか生き残らなかった……。果たして、この結末を回避する事は出来たのでしょうか? ほんのちょっと、ほんの少しの歯車のズレでゲームの展開は大きく変わっていたかもしれません。」
彼がそう言った時。
不意に、部屋に備え付けられていたスピーカーより、声が流れ出た。
「ほほぅ……。確かに、そうかも知れぬな。ならば、こう言うのはどうじゃろうか?」
「はっ……?」
それはモニターの向こうに存在する、≪客≫の声ではなかった。
このゲームに出資し、そしてゲームそのものの運営にも発言権を持つ有力者。組織の幹部一人の声だった。
「ふふふ……今回は残念じゃったがのぉ……。実は、≪あの男≫が参戦の意思を示した様なのでな。それが、次回か、そのまた先か、それは判らんが、な」
「あの男……?」
男は一体誰の事を言っているのか、考え込んだ。
だが、直ぐに解る事になる。記憶にもまだ新しい。一般プレイヤーであれば、よほどの事でも無い限り、覚えたりはしないのだが、あの男は別格。全幹部が、組織が知っていると言ってもいい存在だ。
「≪今回のゲーム≫には間に合わなかったが……、仮に《あの男》が今回、参戦したとしたら? 君ならばどう捌く? 聞かせてくれたまえ……。どうすれば、今回のゲーム以上に盛り上がっただろうか」
「ふ……む。そうですね」
その言葉を訊いて考え込む男。
今回のゲームにはいる筈の無い男が、参戦したとしたら……、それを前提に考える。
「そうですね。彼ならば。……彼は如何な状況でも対応する男です。≪過去≫においても大体がそうでした。……ならば、趣向を凝らすのはどうでしょう」
そう付け加えると、更に続けた。
「あの男の参加の大多数のゲームが、常に血に塗られたものになっています。……否、血に塗られていないゲームなどは存在しませんが、意図して、我々が彼とぶつけた事が多かった。なので、もし……彼が唯一セカンドステージへの移行を止めようとしていた《彼女》と手を組んだとしたら……? その様な状況に身を投じさせた、としたら……?」
モニター越しにだが、興味深そうに聞き入っているのが解る。
僅かだが、鼻息が聞こえてきたのだから。
「そして、更に。妹と恋人を大事にする清廉な彼とも手を組んでいたら……。そこに≪彼≫が加わったとすれば、我々にも見た事の無い≪ゲーム≫となっていたかもしれません。―――もしかしたら」
男は、ひと呼吸置くと、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……過去のどんなゲームでも見た事の無い結果となってしまったかもしれません」
その言葉を待っていた、と言わんばかりに、スピーカー越しから 声が続いた。
「なるほどなるほど。……ふふ、面白いではないか。どちら側に転んだとしても面白い。……うむ、その結果、我々の意向とは異なる結果となったとしても、望むところだな。あの男は神出鬼没だ。意向と異なる事態。それは、こちら側にも喰いつき兼ねない、と言う事。それ程の存在だからな」
組織幹部が愉快そうな笑い声を上げた。
その≪男≫と言う存在を楽しみにしていた。そして同時に同じ位……畏れもしているのだから。
―――……嘗て無い緊迫感が得られるゲームを愉しめる。
「まぁ、全ては過ぎ去ってしまった事ですから、このようなケースを望む事は不可能ですが……、あるいは別の世界では、全く別の展開と、そして 全く別の結末が待っていたのかもしれませんね」
「うむ……。別の世界でもし……、≪彼≫が今回のゲームに参戦したとしたら、ゲーム設定の変更も意に反さなかっただろう」
司会の男も、そして幹部の男も愉快そうにそう返した。
だが、それを聞く≪客≫たちのいったい何人がそんな結末を望んでいるだろう。
更なる血を欲するものばかりである事を重々承知しつつも、男は微笑んで続けた。
「……もしそのような展開をお望みの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご意見をお寄せください。私どもはユーザーの皆様が望む展開が実現するよう、最大限の努力を惜しまないものであります」
そして……男は一礼をし深く頭を下げ。
「されではまた……、次のゲームで!」
その宣言と共に、モニターは闇で包まれた。
――ここまでが1つのゲームの終わりであり、ここからが新たなゲームが始まるのである――
それは《何処か別の世界》での出来事。
そこは とても冷たく……暗い場所。否、温度など全く感じられない無機質な空間だった。仮に世に地獄と呼ばれる場所があるとするのなら……或いはここがそうなのかもしれない。
場所の雰囲気だけでなく、その場に集う人間も何処か表情は暗い。だが、感じるのはドス黒い殺意を孕んだかのような空気。まるで触れるもの全てを切り刻む人斬りナイフの様な人間達がその場に集っていた。
「……今日、皆を此処に集めたのは他でもない」
その集団の中心に、壇上に位置する男がそう呟く。
「……次の≪ゲーム≫の開催時期が決まったようだ。」
そのゲームと言う単語が飛んだ瞬間。
その場の空気が更にどろりと濁っていた。あらゆる負の感情が入り乱れた。目は血走り、拳には不自然に力がこもっている。
「今回は特別だ……、我々は今回のゲームで攻勢をかけることに決めた」
その声に少なからず笑みを浮かべるものも多かった。だが、その表情は険しいままだ。
「我々の組織…… はっきり言えばまだ、弱小の組織だ。支援も貰えず、世にはテロリストとして定着している……。だが、私は ここにいるメンバーは固く強い絆で結ばれていると信じている。メンバーの全て、組織の人事を司る私が調べた結果、この中に≪裏切り者≫はいないと判断した。だからこそ、話したのだ」
その言葉に強く頷くもの、何も言わずただ、強い視線のみを送るもの、目を瞑り考え込むもの……様々な反応を見せていたが、皆それぞれがわかっているようだった。
「……そして、今回のゲームには≪あの男≫に出てもらうと画策している。……既に内通者には話しを通してある。……いつものゲームとは違う《No.》を持つ男として、ゲームに参戦してもらおうとな」
そして資料をプロジェクターを起動し映し出した。
「……まだ弱者である我々が最強足りうる程の切り札、だ。そして うまく機能をすれば今回、攻勢に出る。―――最強の、ワイルドカードを切るんだからな。そして、仕込みに仕込んだ仕掛け……起爆剤。それを起動する為にも。この男の力が必要だろう」
プロジェクターで移された顔写真にレーザーポインターを当てながらそう説明し続けた。
映し出されるのは男の姿と、そして今ゲームの舞台である衛星写真。そして、仕込みの詳細、起爆剤、と称するモノも正体。
全てが敵側にバレれば、破綻してしまう事だろう。……だが、そんな事にはならない。此処を仕切る彼が全てを賭けて、集めたメンバーなのだから。
そして、今回のキー。重要な人物となる男。
その男は、あの組織では しらぬ者などおらぬ、とされる程、有名だ。
何故ならば……、致死率、死亡率の以上に高いゲームにおいて、異常ともされている程、その男はゲームの参戦回数が多い。
そして、組織でさえその扱いを持て余していると言う事。
あまりの強さに、反旗を翻すやも知れぬ、と言う理由から 刺客を差し向けた事を決定した組織。……故に強硬手段にとった組織から、派遣された刺客、兵士達も全て悉く打ち負かしていたのだ。
それは、古くから続く歴史のあるゲームにおいて、初めてだった。
唯一組織の手で消す事の出来ない男だった。
或いは、重火器等で攻めたら? と一時は、全面戦争を組織も考えたが如何に組織とは言え、法治国家である日本ではそこまであからさまな事は出来なかったから、実行する事は無かった。
そんな事をするくらいなら……
『その男を最大限利用しよう』
と最終決定をしたのだ。
男の客受けも最高であり、大人気だ。史上最高の男、だと言える。
故に、オッズが偏ってしまうが、その男が入ればそれで良いという声まで少なからず上がっている。……そして何より、決して組織の不利益になる様な事は一切していないと言う事もある。その素性は元傭兵と言う肩書きだけで それ以外の生い立ちはまるで解らない。
だからこそ、そこまで躍起になって、男を消そうと攻めていないのだとも取れる。
男の最大の特徴……、それは、《必ず生き残る》と言う所。
そして、≪会場≫に設置された無数のライブカメラでもその行動は収めきれないという所だった。
――……どのようにして、生き残っている?
――……一体どこに潜伏している?
――……どうやってクリア条件を満たしている?
その術の全てもわからない。ただ、判るのは 必ず生き残るという事だけだった。
生き残り続けていく内に、参戦回数も、異常数値をたたき出し続けた。
過去リピーターは何人もいたが……それとは比べ物にならない。最早レギュラー……といっても差し支えない程だった。
ある回のゲームでは、《この男》のみでゲームの賭けが成立したほどだ。
つまりは……、
――……この男は今回は生き残れるか、否か。
――……一対多数……果たして生き残れるか、否か。
その時のメンバーの大半はゲーム経験者。
つまりは、全員がリピーターなのだ。
過去のどのゲームよりも、賞金を高くした。その参戦者の中には特殊訓練をも受けている者もいる。自衛隊上がり、果ては元SWAT、グリーンベレーに所属していた男。戦いのエリート達が集った豪勢なメンバーで行ったゲーム。
……だが、彼は生き残った。
相手の全てを、己が全滅させた……と言う訳じゃないが、生き残ったんだ。
いや、それもこちらの言い訳だろう。解除条件を≪自分を除く全てのプレイヤーの死≫
≪キラークイーン≫にしたとしても彼は勝つ。過去勝っているのだ。
そうしてから付いた渾名が……。
《死神》
死を司る神だった。
「………今回のゲーム中に海上で開催されているであろう例のカジノの地点も模索する。……いや、彼以外はそれに全てを注ぐのだ。場所が判明し次第 一斉報復に出る。尚、ゲーム期間中に判明せずともゲームマスターさえ捕らえれば良いと判断する」
そう説明する。
だが、懸念声も流石に上がってきた。
そう……ゲームの方は良い。だが、見つからなかった時の事を考えての事だ。……必ずゲームに勝つ事のできる男とは言え、自分達の真の敵は主催者。
ゲームの参戦者の殆どは……違うのだ。
だからこそ、悪戯に……増やすのは好ましくない。≪彼≫がどう思っているのかは解らないが、コチラとしては本当に好まないのだ。
≪犠牲者≫を増やすのは……。
この場に集った者たちは、いや この組織の全て、皆がゲームの被害者なのだ。
ある者は、ゲームによって人生を変えられた。
ある者は、ゲームによって家族を奪われた。
ある者は、主催者側からの報復で家族が奪われた。
つまり、全員がゲームを憎んでいる、憎みぬいている者たちなのだ。
だが、それを捻じ曲げたとしても……ゲームを潰す為に手段を選んでいる場合じゃなかったんだ。
男はニヤリと笑った。
「……様々な会場で施してきた起爆剤。それが機能する。仮に場所が判明しなくとも……、その起爆剤を、そしてそれを使うのがあの男ならば……、炙りだせる。……ゲームマスターをな……。今回のゲームステージは、孤島。……ゲームを操るのならばその孤島にいなければ不可能だろう。……そして、運良く我々の仕掛けも十分に機能できるものだ」
その声に一段と声が上がる。
≪ゲームマスター≫
影でゲームを操っている存在。
カジノのディーラーだ。その男から組織に繋がる有益な情報を得られると考えているのだ。
「ゲームマスター……ディーラーは恐らくはゲームエリアにはいないだろう。進入禁止エリアで操っていると考えられる」
映し出された映像は、そこで途切れた。
「話は以上だ……。ゲーム開催は二週間後……。武運を祈る」
男は胸の心臓の部分を強く叩く。
それに従い皆が強く叩き、会議も終了した。
そして……ゲームは始まった。
~プレイヤー・ナンバー~
No. 氏名 解除条件
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