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真田十勇士

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巻ノ二十九 従か戦かその六

「ご安心下さい」
「非常にじゃな」
「よき流れになっています」
「そうなのか」
「そのことはご安心下さい」
「ではな、ここは羽柴家と和を成してな」
「上田とも」
 天海もこの地について言及した。
「話を収めますか」
「戦は出来るだけ避けたいが」
「殿、その上田のことですが」
 ここでだ、天海は言った。
「どうも真田家にはとりわけ強い光を放つ赤い星がある様です」
「源五郎殿か」
 昌幸のことである。
「主の」
「あの方ではなくです」
「違うか」
「ご次男の源四郎殿です」
「まだ若いというがかなりの者と聞いておる」
 服部からだ、家康は聞いていた。
「あの御仁か」
「どうやら」
「そうか、では戦の時はか」
「はい、お気をつけよ」
「そうじゃな、源四郎殿の下には十人もの豪傑もいるし」
「出来れば戦はせぬべきです」
 天海も言うのだった。
「特に真田家とは」
「そして源四郎殿はじゃな」
「お気をつけを」
「わかった、ではな」
 家康は天海野言葉に頷いた、そしてだった。
 そうした話をしてだった、家康は上田に人をやった。そのうえで真田家に対して恭順を促したが。
 その話を受けてだ、昌幸は徳川家の使者にすぐに言った。
「その申し出断らせてもらう」
「それは何故ですか」
「徳川家に入れば十万石はないと言われたな」
「はい」
 そうだとだ、使者も答えた。
「殿のお考えでは」
「五万石か」
「そのうえで従って欲しいとです」
「それでは」
「従えぬと」
「十万石の安堵」
 昌幸が出す条件はこれだった。
「そうであればいいが」
「それはです」
 使者は強い声で昌幸に返した。
「申し訳ありませんが」
「当家はあくまで上田の者」
「そして十万石の」
「左様、そのことさえ認めれもらえれば」
「当家に従ってくれますか」
「しかし」
 それでもとだ、昌幸は使者に返した。
「それではです」
「当家には従えぬと」
「そしてその五万石の領地は」
「五万は確かです」
「しかし上田にありましょうか」
「それは」
 使者は家康に全て包み隠さず話すことを言われている、それで実際に昌幸に偽ることなく話したのだった。 
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