心理
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
5部分:第五章
第五章
「おかし過ぎますね」
「そうだな。あからさまだな」
「そうとしか言えませんね」
「それでだ」
梨田は話を続ける。
「被害者が店長をしていた店は」
「はい、ここです」
今度は店を検索する。そこには店員の紹介もあった。するとだった。
「警部、これって」
「ああ」
その店員の中にあの美女がいたのだ。名前まではっきりと書かれていた。
「米村索絵か」
「あの美女の名前ですね」
「よし、これで事件は解決した」
梨田はここでこう言い切ったのだった。
「これでな」
「これで、ですか」
「明日店に行くぞ」
彼は岩隈に対して告げた。
「開店と同時にな」
「それでこの店員に会うんですか」
「事件はそれで終わる」
梨田はまた言った。
「それでな」
「それだけですか?」
岩隈はそれを言われても殆ど信じられなかった。
「この事件が終わるんですか」
「信じられないか?」
「ちょっと」
首を傾げさせての返答だった。
「思えませんね」
「すぐに思うようになる」
だが梨田は笑ってそんな彼に告げるのだった。
「すぐにな」
「そうですかね」
「明日になればわかる」
またこう言うのであった。
「さてと、それじゃあな」
「寝ますか」
「カップヌードルでも食ってからな」
夜食というわけである。それからだというのだ。
「ゆっくりとな」
「明日に備えてですね」
「そうだ。あとはだ」
「まだ何かありますか?」
「寝る前に歯を磨いておくようにな」
このことを言うのを忘れない梨田だった。
「それはな」
「おっと、そうですね」
そのことを言われて頷く岩隈でもあった。
「寝る前にはしっかりとですね」
「歯は命だからな」
梨田はこうも言った。
「自分でどうにかするものだからな」
「磨いてしっかりと手入れしてですね」
「そういうことだ。それじゃあな」
「はい、ちゃんと磨いてから寝ます」
そんな話をしてから寝る二人だった。そうして次の日。被害者がいたその店に向かいすぐにだった。その彼女を呼んでもらった。
彼女に会ってまずはこう言ったのであった。
「わかりますね」
「・・・・・・はい」
梨田がまず彼女に問うとこれで終わりだった。事件は解決した。彼女は全てを悟って罪を認めたのだ。
殺害の理由は別れ話のもつれだった。被害者は妻子がいたが店員であり部下だった彼女と不倫関係にあった。被害者はその関係を妻に知られそうになっていることを察して彼女に別れ話を切り出した。それを怨んだ加害者に夜帰宅途中に襲われて殺されたのだ。
「話の解決自体はすぐでしたね」
「言った通りだったろう?」
二人は今街のスーパー銭湯のサウナ室の中にいる。そこで裸で汗をかいている。布の敷きタオルの上に座って部屋にあるテレビを横目で見ながら話をしているのだ。
ページ上へ戻る