心理
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3部分:第三章
第三章
「今度はその理由を言おうか」
「御願いします」
梨田のその言葉に頷く岩隈だった。
「それは何でなんですか?」
「あの女の目を見るんだ」
目を、というのだった。
「目をな」
「目ですか」
「どうなってる?」
「ええと」
岩隈は目を細めさせてそのうえで女を見る。化粧は濃いが奇麗な顔をしているのは事実だ。その彼女の目を見てみたのだ。
まず気付いたのはその濃い目張りだった。しかし梨田の言葉からそれはここでは全く問題になっていないことはわかった。
そうしてまた見てみるとだった。その目がやけに動いていた。しきりに橋の下の細かいところまで見ていた。
それと共に顔も動く。あちこち回ったりしている。彼はこのことにも気付いたのだ。
「何か探してるみたいですね」
「そうだろ?普通こんな場所で何か探すか?」
「まずないですね」
岩隈にもこのことはよくわかった。
「それは」
「そうだな。怪しいな」
「はい、そう考えてみてみると」
やはり怪しいとわかった。彼にも。
「かなり」
「そういうことだ。まずこれだよ」
「これですか」
「そして」
岩隈にさらに言う梨田であった。
「あの美人の職業は何だと思う?」
「OLですかね」
その服装から言う彼女だった。
「何処に勤めてるかはわからないですけれど」
「ブランドもののファッション店の店員だな」
梨田はそれだというのだ。
「あれはな」
「あっ、そういえば」
岩隈もここで気付いた。
「着ているスーツはかなり」
「ハイヒールもいいものだろ」
「はい」
言われてそのことにも気付いたのだった。
「それも」
「わかったな。これは」
「何かアクセサリーもですね」
岩隈は話をしているうちにそれにも気付いたのだ。女が身に着けているブレスレットやネックレスを見てだ。やけにいいものなのに気付いたのである。
「かなりいいものですね」
「そうだな。それでだ」
「今度は」
「被害者の職業は」
このことを言ってきた梨田だった。
「あるブランドもののファッション店の店長だったな」
「ええ、そうでした」
このことは既に承知のことだった。被害者の身元を把握しなくて捜査は有り得ないことであるからだ。
「それもかなり有名な」
「あの別嬪さんの服どう思う?」
そのことを話したうえでまた岩隈に問うてみせた梨田だった。
「アクセサリーもな」
「いいものですね」
そのことに頷く岩隈だった。頷きながらもその服やアクセサリーを再び見る。見れば見る程高そうでしかもセンスのいいものであった。
「じゃああれは」
「ブランドものに間違いないな」
「そうですね。だとすると」
「あの服のブランドが何かはわからないが」
梨田はそういうことには詳しくなかった。これは彼にとってはいささか残念なことであった。
「それでもな」
「それでも?」
「被害者のブランドを一応調べておいてだ」
「はい」
「それであの別嬪さんの服も覚えておこう」
こう言うのである。
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