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問題児ともう一人の原典者がやって来るそうですよ?~未知の原典者~

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第零話  『対象者:神智黒白』

第壱話 『対象者:神智黒白』

――――――――作戦名〝正体不明起動〟










『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能を試すことを望むのならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの“箱庭”に来られたし』













――――――〝対象者:神智 黒白〟



――――――〝バックアップを記憶にインプット〟

――――――〝対象者:神智黒白を観測せよ〟
















「――――――ッ!?」

光の波長――――――溢れる色彩が覚醒し、開かれた双眸をより鮮明に脳裏にその光景が焼き付く。



視界に広がるのは、完全無欠の異世界。






「………………………私を含めて四人――+猫ですか」

無機質、無感情、無表情、何一つ感じることの出来ない言語が脳裏に浮かび、発する。
重力の法則に従い、自由落下を行っていた。
高度四千メートルの高さから、猫を含めた四人は落下している。
少年は軽く大空を見上げ、無表情だったが途端に口角を三日月にして

「…面白い」

数十秒後、水面に叩き付けられる直後に緩和材の役割と成った何かの力が働き湖に四つの高い水柱が出来た。














「やれやれですね、突然落とされるとは…」

少年――――――黒白は先に上がった四人を軽く見た後、大空を見上げてそう呟く。

「…何を騒いでるのでしょうか?」

耳が水に浸かり、良く聴こえないが何か言い争って居た。

――――――刹那、秒にも満たない本の僅かな時間に言い争っている三人の後方で草むらが動いた。
しかも、青いウサ耳が飛び出していた。

殺気を宿した鋭利な視線を一瞬放つとほぼ同時にウサ耳が硬直したため、直ぐに視線をズラしながら身体を起こして三人の元に向かう。

「(………先程のウサ耳…何と言えば宜しいのでしょうか………“頭隠して尻隠さず”…………この場合は、“身体隠してウサ耳隠さず”と言うべきでは?)」














「――――――逆廻十六夜だ。お嬢様。」
「そう、説明書でもくれたら考えてあげるわ。」

黒白が三人を見て最初に思ったのが、
ビリビリッ!!と瞳から電気が走っていそうなほど、気が立っている高飛車なお嬢様と、どう見ても普通では無い金髪にヘッドホンを着けた少年が対立している。 後、大人しい茶髪のペタン胸の女の子が猫を抱き締めているのを忘れてそうだった。

そして、三人を観察している黒白に白羽の矢が立ったのだ。

「それで、のんびりと浮かんでいた…貴方は?」
「………神智黒白。」
「しんちこくびゃく? 変な名前ね。」
「………」

名前を訊いて早々に罵倒?お前等には一切合切言われたくねぇーよ。と喉元まで出掛かったが大きく深呼吸をして冷静に保つ。

黒白は、高飛車なお嬢様と猫を抱き締めた女性陣に全く興味を持たず、紫水晶を沸騰させる綺麗な双眸をした少年?に興味を示した。

「………………っと、御名前を御伺いしても?」
「…逆廻十六夜だ。」
「逆廻…十六夜さんですね。」

と、その時………











「ウォオオオオオオオオオオッ!!!!???」

遥か上空からまた一人、落とされたみたいだ。







四人はリプレイを見ているように湖に水柱を立てて、もう一人は落ちてきた。

「痛ってぇ、急に視界が変化したら、四千メートルからヒモ無しバンジーとか洒落に成らねぇぞ!? 全く封筒の持ち主の神経を伺うぜ。」
「それで、早速だけど貴方の御名前は?」
「――――…人に名乗らす前に自分から名乗るのが礼儀じゃねぇのかクソガキ? そんなことも出来ないほど甘ったれた教育を受けてきたのか? 手始めに二千年代でその年齢でその喋り方はおかしい、二千年代なら名家の家柄なら丁寧な口調も納得出来るが、二千年代に歴史の転換期はまず少ない。 なら喋り方は近代の喋り方だから、召喚された年代は戦前後の時代だ。 封筒は彼奴の旗印が刻まれていた。 ならば日本語から察するに名家生まれの戦後後の日本から召喚された。 戦後の日本は乗除不安定な状態だからな............etc.って訳か?」
「………………」

一切の的外れの無い推理に召喚された三人は著しく警戒心を強め、殺気を宿した鋭利な視線を少年に向けた。猫を抱き締めた少女は数瞬で黒白達の後ろに身を潜めていた。
黒白も十六夜も目の前の相手を強者と認識し、戦闘の体型を取る。

それとは対照に三人の殺気を宿した視線に動じるどころか、全く興味を持たず、少年は大空を見上げ、虚空を幾度となぞる。

「………ッ、俺が召喚したからには女王が動く筈だが…。」

ボソボソと何かを呟くも、四人には聞こえない。

黒白と十六夜は相手が此方に敵意を――――――何も関心がないことを悟ると、戦闘の構えを辞めて訊ねる。それと同時に身を潜めていた少女も顔を出した。

「私は、神智黒白です。 此方が――――――」
「逆廻十六夜だ。」
「春日部耀。」
「…そうだな………神威、法月神威と名乗ろう。」

その双眸はギラリッ!!と光沢を放ち、修羅神仏さえ恐縮させそうなほど未知なる力を秘めているのは――――――この時、黒白しか気づかなかった。



















〝Irregularis apparuit, ut bene sit advertentia albo fama regulariter. Periculum est comparabilis IX Level〟





「――――――ア"ア"ッッ!!!??」

機械のような無機質な意味の不明の言葉が、黒白の脳内に再生された。頭を抱え、その場にしゃがみ込む。
その間にも、突然の言葉と激痛に絶叫を挙げ、気を失った。

突然の絶叫を間近で訊かされた十六夜達は耳を塞ぐと同時に、要因と成る黒白を見ると、








十六夜に向かって倒れ込んだ。

「………ぁ、っ。」
「――――――ッ!?」
「金髪の奴支えろッ!!」

神威は0.1秒にも満たない時間の間に必要な力を引き出し、右手を黒白に向け、第六宇宙速度で未知の光の粒子を飛ばし、打ち込む。

糸が切れた人形のように意識を失い、咄嗟の神威の力により原因は不明だが、打ち込んだ光の粒子を操り昏睡状態に反転させる。
十六夜は神威の言葉に無意識に反応し、黒白の手を掴み抱き締める形を取る。

ぐったりと身体を十六夜に預け、胸に顔面を押していた。

十六夜は押し付ける黒白の顔をじっくりと眺め、

「(以外に童顔…だし、良く見れば顔の肌だって、艶も張りも俺よりも綺麗だ。)」

値踏みをするかのように黒白の観察をする。

と、







「さて、もうそろそろ良い頃合いだろ? 値踏みは金髪――――――十六夜だけで十分だから、草むらに隠れていやがるお前出てこい。」
『――――――ッ!!!!???』

此方に殺気を向けていないとは言え、一瞬で感じた“死”を沸騰させたその声は確実に殺気を宿し、明確な警告だった。心臓を握り潰されるような声は気絶している黒白を除く三人を問答無用で黙らせ、草むらに隠れている人物に狙いを定めている。

唯一飛び出したウサ耳はビィーン!!と冷や汗を大量を流し、硬直していた+十六夜も黒白を抱き締める力を少し強め、警戒を怠らない。

それから数十秒経っても出てこない事に神威は密かに苛立ち、青筋を浮かびあがらせていた。

「………神威…。」
「んだ? ………名前は?」
「さっき言った。 春日部耀。」
「ああ、忘れてた済まん。 春日部――いや、耀何の用だ?」

神威に近寄り、春日部耀は強まる殺気に固唾を飲みながら、神威に告げる。

「…そんなに殺気を出してたら、向こうも出てこれない…。」
「それも、そう………! ちょっと耀耳貸せ。」
「何? ………………………面白そうやる。」

神威は口角を三日月にしてニヒルのように薄気味悪い、不気味さを体現させたような微笑みとは言い難い笑みを見せて、…ゴニョゴニョと春日部の耳元で話をする。

話を終えると、春日部も好奇心に満ち溢れた少年を沸騰させる笑みを浮かばせ、気配と存在感を消して神威に告げられた位置に近づく。

と、

「………今だ。」
「デラックスウサ耳引っこ抜き!!」
『――――――フギャッっっっっっ!!!???』

アイコンタクトで、硬直していたウサ耳の近寄っていた耀に合図をすると、本気でウサ耳を引っ張った。

それはもう、あからさまに抜くと言う意識を持っての行動――――――もとい、虐めだった。

絶叫に似た声を放ち、青かった筈のウサ耳は淡い緋色に変幻しており、耀の一撃に幾度か尻をバウンドさせて、二人の前に出された。

「良くやった。 耀と、もう一人の………」
「………………はあ、久遠飛鳥よ、先程は失礼したわ。」
「飛鳥ちゃんね、」
「飛鳥ちゃん!!??」
「此方こそ失礼した。 それで飛鳥ちゃんはどうする? ウサ耳を小一時間ほど弄るけど。(このウサ耳本物か確かめる。)」
「………分かったわ、弄るのに十分な時間ね。(本物かどうか確かめましょう。)」
『ちょっと御待ちを!? 本音と建前が真ぎゃ――――――フギャッ!?』
「うっさい。」










それから小一時間――――――ウサ耳を弄られまくったそうだ。




 
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