ロックマンゼロ~救世主達~
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第43話 オリジナルエックスの準備
前書き
トレーニング
レジスタンスベースに向かって進攻していたネオ・アルカディア軍を撃退し、残るはコピーエックスのいるネオ・アルカディアのエリアX-2のみだ。
この勢いのまま、コピーエックスを倒しに行きたいところだが、ネオ・アルカディア本部の位置の特定と転送ルートが定まっていないために、時間が余ってしまった。
ならば時間を潰すためと、今までのミッションで回収したDNAデータを解析して新しい技を開発するために、ゼロとルインはトレーニングルームに籠もっていた。
「行くぞルイン、こいつを受けてみろ」
「いつでもいいよ!!」
ZXセイバーの出力を最大にして構えるルインに対して、ゼロはシールドブーメランを構えた。
まず最初に繰り出すのは、アヌビステップ・ネクロマンセス5世のDNAデータを解析して編み出したシールドブーメラン用の必殺技だ。
「クロールシールド!!」
勢いよく投擲したシールドブーメランが地形を沿って転がる。
どうやらこれは対地用の技のようだ。
即座に反応したルインはセイバーで転がってきたシールドブーメランを受け止める。
しばらく拮抗していたが、シールドブーメランはゼロの元に戻っていく。
「どうだ?」
「この技、結構使えそうだね。メットールみたいな小型メカニロイドを倒す時とかに便利かも…スピードもかなりあるし。貴重な対地用の技だね」
前の戦いでは地面を這うパンテオンなどがいたが、あの時の戦いでもこれがあればかなり楽だったかもしれない。
「ふむ…ならばこれも受けてみてくれないか?」
アイスのボディチップを起動し、バスターショットを取り出し、ルインに向ける。
恐らくは、ブリザック・スタグロフRのDNAデータを解析して編み出したバスター用の必殺技だろう。
「OK、いつでも撃ってきていいよ」
「分かった。では、行くぞ」
バスターのエネルギーチャージが終了し、ルインに向けたバスターの銃口の前に冷気球が発生し、そこから氷弾が三発放たれた。
「はっ!!」
即座にZXバスターを構えてショットを連射して氷弾を粉砕すると、氷弾の速度を見てゼロが口を開いた。
「速度が遅い…敵に確実に当てるには至近距離で撃つ必要がありそうだ」
「うん、思い切って近接戦闘用の技だと思った方が良さそうだね」
氷弾は感知器の反応を見て、かなりの威力を有しているようだから使わないのは勿体ない。
「ではこれで最後だ。ルイン、受けてみろ」
最後にZセイバーを構えるゼロ。
それを見て、ルインは恐らくはハヌマシーンRのDNAデータを解析して編み出したセイバー用の必殺技だと見抜く。
フレイムのボディチップを起動させ、ゼロはダッシュで間合いを詰めるとセイバーを構えてジャンプした。
「天烈刃!!」
前回の天昇斬と同じ系統の技のようだ。
天昇斬と同じく空中にいる敵に扱う対空技で、ルインはセイバーを構えてゼロの斬撃を受け止めた。
「セイバーの対空技だね。空中にいる敵への攻撃手段として使えそう。」
「ああ、次は新技の練度を上げる。ルイン、もう少し付き合え」
「うん、勿論だよ。強くなってみんなを守らなきゃね」
新技の練度と実力向上のために、更にトレーニングルームに籠もる二人の訓練は激しさを増していった。
一方、サイバー空間ではファントムと共にこちらに迷い込んだ“彼ら”を探してようやく見つけたものの、魂は未だに相当なダメージを受けており、エックスの言葉も届かない程であった。
だが、エックスにはやるべき事があるためにファントムに任せ、レジスタンスベースに転送ルートの座標を送っていた。
ネオ・アルカディアの守りが比較的薄く、コピーエックスのいるエリアX-2に近い座標だ。
「これでよし…頼んだよ…ゼロ…ルイン…彼を…僕の影を止めてくれ…」
自身の影と言えるコピーエックスの暴挙を止められるのはゼロとルインのみ。
だが、コピーエックスを止めたところでまだバイルとオメガがいるのでまだまだ気は抜けない。
「Dr.バイル…あなたの好きにはさせない…。」
エックスは再び球体の姿となり、再びサイバー空間の深淵へと姿を消した。
そしてレジスタンスベースでは、エックスが送った座標が届き、ゼロとルインを呼び出した。
「どうしたのシエル?」
「あ、二人共…トレーニングの途中だったのにごめんなさい」
「いや、もうほとんど終えていたから問題ない。それよりも何があった?」
ゼロに説明を促されたシエルが口を開いた。
「ええ、実はネオ・アルカディア軍の進行ルートを解析して、コピーエックスのいるネオ・アルカディア本部の位置を特定することに成功したの」
「え?そうなの?」
思っていたよりも早く敵の本拠地であるネオ・アルカディア本部の特定に成功したことに目を見開く。
「ええ、でもこれはエックスがレジスタンスベースに座標データを送ってくれたことも大きいんだけど…。コピーエックスとバイルは、そこで全軍の指揮を執っているらしいのよ。」
「ここを叩けば…ネオ・アルカディアを止めることが出来る…か…」
「早く止めないと。コピーエックスとバイル、オメガをこのままにしておくとやばいことになりそうだしね」
エックスが望む人間とレプリロイドの共存を実現するには、この三人が大きな障害となるのは間違いない。
「準備はよろしいでしょうか?」
「勿論だよ」
「転送を頼む」
二人は中央のトランスサーバーに乗り込んだ。
「ミッション発令…各員、転送準備にかかれ」
ジョーヌの指示で、司令室に警報が鳴り響き、転送準備が始まる。
「転送準備完了…」
「「転送!!」」
二人の声が司令室に響いたのと同時にゼロとルインの二人がネオ・アルカディア本部へと転送された。
「ゼロ…ルイン…二人共…必ず…帰ってきて…ね…」
ゼロとルインの二人がネオ・アルカディア本部のエリアXー2に向かった一方、サイバー空間ではメンテナンスルームで治療を受けているはずのハルピュイアの姿があった。
「ハルピュイア」
「エックス…様…?」
目を覚ましたらいきなり未知の空間にいたことに戸惑っていたハルピュイアの目の前に現れたエックスに目を見開くが、自分の本分を思い出してすぐさま跪いた。
エックスは相変わらずのハルピュイアの様子に苦笑を浮かべた。
「すまない、いきなりこんな所に連れてこられて驚いただろう?」
「エックス様…この空間は一体…?」
ただ何もない空間、深い深い闇がどこまでも続いている。
しかし何故か不思議な安心感がある。
「レプリロイドの魂とサイバーエルフ達が住む狭間の世界だよ。悪いけど、君の魂をサイバー空間に引っ張ってきたんだ…。僕には向こうの世界で実体化出来る時間がかなり限られてきたから…こうするしかなかった」
来たるべき時…オメガとの決戦までには出来るだけ力を温存しておきたい。
ゼロとルインのためにも…今回の戦いは過去の宿命に決着をつけることでもあるのだから。
「ハルピュイア…今から、世界に大変な事が起きようとしている。ダークエルフがバイルとオメガの手に渡った以上、バイルがもう一人の僕から完全にネオ・アルカディアの全権を掌握するのも時間の問題だ。じきに世界中でレプリロイド達による混乱が起こるだろう。ゼロとルインがもう一人の僕を倒しにネオ・アルカディアに向かうことをバイルが見越していないはずがないからね」
「ゼロとルインがもう一人のエックス様…コピーエックス様を倒しに…」
「君には辛いかもしれないけれど…」
「……いえ、大丈夫です…こうなることは…予想していました」
複雑そうな表情を浮かべるハルピュイアだが、今のコピーエックスはバイルの都合のいい傀儡になっている。
このままにしておくとバイルの言うことに従い、無実のレプリロイド、そして人間に害することになるのは間違いない。
しかしエックスにハルピュイアは聞きたいことがあった。
「エックス様…エックス様はコピーエックス様を憎んでおられますか?」
「…どうしてそんなことを?」
突然の問いに呆然となりながらも首を傾げるエックス。
「コピーエックス様…そして今までの俺達がしてきたことはあなたが…エックス様が認めることはないと頭の中では理解していました…ですが……」
コピーエックスのボディは本来ならダークエルフ封印の際にボディから弾き出されてしまったエックスのボディとなるはずだったのだが、エックスは残った人間とレプリロイド達の足で立ち、前へ進んで欲しいという思いからそれを拒否して姿を眩ましてしまった。
しかし当時のネオ・アルカディア政府は急遽コピーエックスのサイバーエルフをボディに入れてエックスの代理とした。
それからのコピーエックスの姿をハルピュイアは見てきた。
いきなりネオ・アルカディアの統治者となり、周囲には親しい友人達もいない。
それは四天王である自分達も同じではあったが、同僚であるのと同時に兄弟でもあるファントム達と主であり、父親でもあるエックスとの思い出もあった。
しかしコピーエックスにはそんなものなどいなかったのだ。
個人としての時間を統治者としての業務に忙殺され、それでも今までネオ・アルカディアを支えようとしてきたコピーエックスの姿をずっと見てきたからこそ、今でもハルピュイアはコピーエックスを主として忠誠を誓っていた。
「大丈夫だよハルピュイア…僕も分かっているよ…君達がどれだけの思いで生きていたのかくらいね……ハルピュイア、恐らくもう一人の僕が倒された直後に、百年前の戦争…妖精戦争の悲劇が再び繰り返されるはず、それを止められるのは、ゼロとルイン…そして君達四天王だけだ。今の僕には…君に僕の持つ情報を与えることしか出来ない。せめてそれらが君の助けになるように……。全てを話すよ。オメガの事、Dr.バイルの事を……」
エックスは語り始める。
オメガのことを、バイルのことを全て。
しばらくエックスの話を聞いていたハルピュイアは驚愕で目を見開いていた。
「まさか…オメガが?」
「うん…ゼロとルインなら大丈夫だとは思うけれど、やっぱり、動揺を抑えられないと思うんだ。出来ることなら、ゼロとルインに力を貸して欲しい。」
「分かりました。エックス様の命令なら喜んで…」
穏やかに微笑むハルピュイアにエックスもまた微笑む。
「ありがとう…本当ならゼロとルインのサポートは僕がするべきなんだろうけど…」
サイバーエルフとしての力が底を尽きかけている状態ではゼロとルインへの積極的なサポートがやり辛くなっているため、ハルピュイアに頼むしかなかった。
ハルピュイアが快く受け入れてくれたので、エックスは安堵した。
「それじゃあ、ハルピュイア、君は帰らないと…それから一人で背負い込んだり、無茶だけはしないように。」
ルインが言っていたようなことを言われ、ハルピュイアは苦笑したが、次第に意識が薄れていく。
これは自分の魂が元の体に戻ろうと、サイバー空間を去ろうとしているせいだろうとハルピュイアは感じた。
無茶はしないと言いたいが、自分にも譲れない物があるため、ハルピュイアの魂が元の身体に戻る寸前に口を開いた。
「エックス様、俺はこれからも人間を守るため戦い続けます。例え正義に賭けたこの命、尽きようとも…」
ハルピュイアはエックスに告げるかのように呟くと、何となくだがエックスが苦笑したように感じた。
人間を守るために。
オリジナルエックスとコピーエックス、正反対だった二人のエックスの共通していた願いと意志を継ぐために。
ハルピュイアの魂は元の体のある世界へと帰っていった。
「頼んだよハルピュイア……僕もネオ・アルカディアに向かわなくては…」
共に戦うことは出来ないが、何か力になれるかもしれないと思い、エックスはネオ・アルカディアに向かうのだった。
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