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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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強くなりすぎた男

 
前書き
前に言ってたシリルが天空の滅悪魔法覚える説あったじゃないですか?
あれって仮に覚えたらシリルは『天空シスターズ』に分類されるのかな?それともレオンとチーム結成するのかな?歌って踊らせるなら天空シスターズだけど、それはそれでシリル複雑そう・・・ 

 
「す・・・すげぇ・・・」
「こいつ・・・マジかよ・・・」

シリルの土壇場での覚醒を間近で見ていた2人の男は、その姿にただ感心することしかできない。

「どうだ、レオン。もうお前の魔法は通用しないぜ」

左手をダランとさせて得意気な表情をしているシリル。ガジルの踏ん張りと彼の発想力でこの絶体絶命の状況を打破したかに思えた。しかしこの時、実はシリルがさらなる大ピンチに陥っていたことに誰1人として気づくことはなかった。

(ヤバい・・・左手の感覚がない・・・)

ダランと力なく垂らされている左腕。レオンに視線を向けつつ、横目で自分の手を確認したシリルは、試しに指を動かそうとしてみる。しかし、全く動く様子がない。

(あれ?これヤバいんじゃね?)

一抹の不安が拭いきれない少年は、一瞬ではあるが表情をひきつらせた。
彼がさらなるピンチに陥った理由・・・それはもちろん、シリルがソフィアの返し魔法(カウンター)を繰り出したからである。
返し魔法(カウンター)は本来、強靭な体と圧倒的な力がなければ繰り出すことができない。 相手の魔法を受け止め、押し返すだけの業がなければ、逆に自分がやられてしまう。
ただ、ソフィアは力もなければ強靭な体があるわけではない。それなのにこの魔法が繰り出せる理由は、彼女のしなやかな体がそれらの役割を果たしているからなのだ。
対するシリルは、強靭な体があるわけでもなく、レオンのように抜群に優れた力があるわけでもなく、ソフィアのようにしなやかな肉体を持っているわけでもない。それなのにこの魔法を使ってしまったがために、左腕が異常をきたし、一切の動きを取ることができなくなっているのだ。

(いや・・・それ以上に、痛みを感じないことが何よりも問題なんだが・・・)

他者に悟られないように左手をそっと触るシリル。彼の右手は確かに力なく垂れ下げられている左手に触れているはずなのに、その感覚が全くない。おそらく・・・いや、間違いなくレオンの『絶対零度』を弾いた時に腕がイカれてしまったのだった。

「なんだ。そういうことか」

一連の動きを見ていたレオンがボソッと呟く。その声がかすかに聞こえたシリルは何事もなかったかのように左腕を離すが、その時にはもう手遅れだった。

「シリル、もう返し魔法(カウンター)は使えないんだね」
「!!」

バレてる・・・彼の驚いた顔がレオンの読みが的中していることを物語っていた。シリルの左腕が使えない今、右腕で弾くことしか彼にはできない。しかしその場合、利き腕である右腕も左腕と同様のことになってしまったらと考えると、とてもじゃないが大事な腕を犠牲にしてまで彼の魔法を弾こうとは考えられない。
レオンはそんな彼の思考を完全に読み取っており、先程と同じように黒い冷気を左腕に纏わせていく。

「チッ。おいガキ!!どうするつもりだ!?」
「どうって言われましても・・・」

時間稼ぎのせいでかなりの傷を負ってしまったガジルは全く身動きを取ることができない。シリルもまさか腕が使えなくなってしまうとは予想していなかったらしく、このあとどうすれば良いのか、考えが纏まらない。

「どうしたの?シリル。早くお前も魔力を溜めろよ」
「え?」

焦る2人を見据え、最強の魔導士へと覚醒を遂げたレオンがそう言う。

「『片腕が使えなくなったからレオンに負けた』って思われたくないからね。こっちも左腕しか使わない。正々堂々と戦ってあげるよ」

もはやシリルとガジルが2人がかりで挑んでいる時点で決して正々堂々とは言えないが、これは彼らに取ってはありがたい提案だ。

「その余裕・・・後悔させてやるぜ!!レオン!!」
「来い!!シリル!!」

シリルは右腕に水と風の二属性を集中させていく。3日目の競技パートで見せたあの奥義を使うため。

『さぁ!!大変なことになってきました!!レオンとシリル!!共に奥義の体勢に入っています!!果たしてどちらの奥義が敵を射抜くのか!?』

今まで数々の敵を撃破してきた滅竜奥義。それに対するは強化素材でできた魔水晶(ラクリマ)ビジョンをも破壊する絶対的な力を持った滅神奥義。それを放つ2人の少年は、相手に半身になるように構える。

「「・・・」」

敵を見据え、今すぐにでも相手に向かっていける準備は整っているはずの2人。それなのに、両者は互いに一歩も動かない。それはまるで、その場所だけ時が止まってしまったかのように皆の目に映った。

『ど・・・どうしたのでしょうか?先程まで激しい戦いをしていたシリルとレオン。その2人が突然動かなくなってしまいました』
『ん?』
『か・・・カボ?』

観客たちもなぜ2人が動かないのか、理解をすることができずにざわつき始めている。
一時は魔水晶(ラクリマ)ビジョンが故障したのかとも思われたが、2人が時々瞬きをしているのが確認できるのでその可能性は否定される。
あまりの静かさに、皆不気味さを感じていた。

「すごいですね、この2人は」

全く動きを見せないシリルとレオンを見てそう口を開いたのは妖精軍師ことメイビス・ヴァーミリオン。彼女の周りにいる妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々は一番前にいる少女が2人に感心している理由がわからず、顔を見合わせている。

「初代?これの何がすごいんだ?」
「ただ動かなくなってるだけじゃねぇのか?」

マカオとワカバが皆の考えを代表して彼女に伝える。それを聞いた少女は「フフッ」と可愛らしく微笑む。

「戦いというものには、様々な種類があります。どちらかが強すぎれば先程のレオンとガジルのようになりますし、互いの力が均衡していればラクサスとジュラのように激戦となります」

確かに、と納得している妖精の尻尾(フェアリーテイル)メンバーたち。しかし、それがなぜ今のシリルとレオンの状態をすごいと言えるのか、全く見えてこない。

「では、互いの能力が高く、集中している場合はどうなると思いますか?」
「そりゃあ・・・ラクサスたちみたいに激しくぶつかり合うんじゃないのかい?」

少女の問いにカナが答える。それに対してメイビスは1度、小さくうなずいてから言葉を紡ぐ。

「そういうこともあります。しかし、本当に強い者同士の戦いでは、なかなかそうはならないのですよ」
「?どういうこと?」
「確かに実力が高ければ激しくぶつかり合い、他者の想像を遥かに越える戦いをすることもできるでしょう。しかし、本当に能力を限界まで高めた場合、相手を一瞬で蹴散らすことも可能です。今の彼らはまさしくその状態でしょう。つまり、どちらかが動いた瞬間にこの戦いは終わりを迎えると言っていいでしょう」

シリルの滅竜奥義は3日目のバトルパートで絶対に無理だとされていたSクラスモンスターの撃破やBIG3の一角、カミューニを倒す時に使用した魔法。相手を倒す“決め技”と言っていいだろう。
それを対するレオンの滅神奥義は間違いなくこの大陸・・・いや、この世界の最強クラスの威力ある魔法と言っていい。それだけのものを喰らえば、例えどれだけの強者であったとしても気絶以上になるのは目に見えている。
両者共にこの一撃で戦いを決めるため、自身の最高の技を繰り出そうとしているのだ。当然、この一打で戦いは終わりを迎えると考えるのが当たり前だ。

「恐らく、2人の頭の中には同じイメージが出来上がっているはずです。一瞬の判断ミスで、相手の奥義が自身の体を貫くイメージが」

メイビスの言う通りであった。シリルとレオン・・・2人の頭の中には、自分が相手よりも先に動いてしまったら、その瞬間に敵の最大の魔法を受けてしまうイメージが浮かび上がっていた。

「となると、互いに敵に一切の隙を見せてはいけなくなります。そして、その隙を見落とさないように、相手から集中を途切れさせることもできなくなります。故に両者に動きがなく、ただ好機を待ち構えているのです」

自身の奥義が決まれば勝利を手にすることができる。しかし、それは相手も同じこと。
実力だけでいえば間違いなくレオンが有利だ。速度、パワー、その両方において今までのどの敵よりも強いことは火を見るより明らかだ。だが、シリルには相手の動きを見切れる目がある。先程まではレオンの速さについていけていなかったが、ガジルが時間を作ってくれたおかげでやっと彼の圧倒的な動きに目が慣れてきた。となると相手の動きにいち早く反応できるシリルにも分があると考えていい。
絶対に負けることができない戦い。それゆえに、両者は一切の隙をなくし、いまだ動かないのである。

「この領域には、ただ戦闘能力を高めただけでは絶対にたどり着くことができません。絶対に切れることのない集中力。何事にも動じない強き精神力。相手の動きを見抜く力。そして、何があってもブレない想い。それらすべてを極めたものにのみできる戦いなのです。
その領域に彼らは踏み込んだ・・・いえ、レオンがシリルを引き上げたといった方が正しいでしょうか?」

すべての魔導士を超越するほどの力を持つレオン。彼と戦っているこの状況だからこそ、シリルの意識が研ぎ澄まされていき、今のレベルまで・・・彼と同じ領域までたどり着いたのだ。もし仮に、この戦いが終わった後、もう1度同じことをやれと言われても、2度と行うことはできないであろう。それだけハイレベルな状況なのである。
一瞬の判断と見極めが全てを決する対決に、ざわついていた観客たちも次第に口数が減っていき、いつしか会場は大会中とは思えないほどの静かな状態へとなっていた。

(この勝負・・・俺が入っていける場面じゃねぇな・・・)

水髪の小さな少年の後ろに座り込んでいる黒髪の男はそんなことを考えていた。自分がレオンの注意を引ければそれに越したことはない。しかし、彼には動く気力もほとんどなく、ましてやこの魔力を限界まで高めた2人の間に割って入る勇気もない。

(見届けてやるぜ。どっちが勝つのかをな)

一番の特等席で、この大会一の戦いを観戦することができると、男はその場で黙って、幼き2人の天才の戦いを食い入るように見つめていた。










どれほどの時間が経ったのであろうか。互いに大いなる魔力を腕に纏わせた2人の少年はただ相手をじっと睨み付け、彼らの間を吹き抜ける風の音だけが周囲に響き渡る。

ポタンッ

ふと、一粒の汗が少年の頬から地面へと落ちた。しかし、それが流れた跡を少年は拭うことすら許されない。自分の意識が目の前の少年からわずかにでも逸れれば、その瞬間に勝敗が決してしまうからだ。

(やべぇ・・・マジで隙がねぇな・・・)

心の中で毒づいたのは少女のように麗しい美少年。彼の細い腕には、奥義を発動させるための水と風がなんとか維持されていた。
魔力を一定の場所に維持し続けるだけでもかなりの体力と気力を使うにも関わらず、それにプラスして相手から一切注意を逸らしてはならない。さらには、自分自身が相手から攻めてこられないようにわずかな隙すら作ることを許されない。そのあまりの緊張感は、徐々に徐々に少年のわずかに残された気力と体力を奪い去っていく。

「くっ・・・」

少年の表情が一瞬歪んだ。大半の人間にはわからないほどの動きであったが、見るものから見れば確実にわかる歪みだった。だが、それを見ても目の前の金髪の少年は動きを見せない。

(た・・・助かった・・・)

見落としたわけではない。金色の少年は間違いなくその歪みに気づいていた。だが、あまりにも一瞬だったためにあえて突撃することはしなかったのだ。
少年は相手の圧力に押されて思わず怯んでしまうところだった。だが、なんとかそれに耐えて再び集中力を高めていく。

ドッドッドッ

速まっていく鼓動。それを落ち着けるために一度深呼吸をしたいところではあるが、それをすれば相手にチャンスを与えてしまう。少年は自分を落ち着けたい気持ちをグッと堪え、高鳴る緊張感に飲み込まれないように気持ちを維持し続ける。
それに対する少年は、全く動じた様子もなく、ただ水色の少年を見据えている。
互いに全身ボロボロ。条件は同じはずなのに、金色の少年はそれを一切感じさせない佇まいをしている。
まるで石像と化しているかのようにすら思えるほど微動だにしない少年。しかし、だからといって下手に動いてしまえば彼の氷の渦が体を貫くことは明らかであった。

次第に汗の量が増え、口で呼吸するようになってしまった妖精と、彼と同じ条件とは全く思わせない驚異的な集中力を発揮している蛇姫。妖精が耐えきれなくなって飛び出すのが先なのか、はたまた蛇姫が何らかの異変で隙を作ってしまうのか。息を飲み、この静寂なかけひきを見ている人々も、戦っている2人も、彼らのそばにいる竜にも、その時は誰にもわからなかった。
そして、この2人の戦いは、思わぬ形で決着を迎えることとなる。






















「見切った!!」

ミネルバの爆発の合間を掻い潜り、エルザが彼女を短剣を切り裂く。

「なっ!!」

やられた格好のミネルバは両手に魔力を纏わせ、エルザを攻める。しかし、その攻撃は彼女には当たらず、逆にエルザの攻撃を受けてしまう。

おのれ(イ・ラルガス)!!」
「私の怒りは、ギルドの怒り!!」

突如エルザの体が光に包まれる。それを見て彼女に突進しようとしていたミネルバは思わず足を止めた。

第二魔法源(セカンドオリジン)!!解放!!」

エルザが解き放ったのは大魔闘演舞直前にウルティアの魔法により手にいれたもの。ずっと使っているとばかり思っていたジェットたちはそれを見て驚愕している。



「進め若者よ、野風の如く」


大いなる光に包まれたエルザ。その光が晴れた時、彼女は金と青の初めて見る鎧を身に纏っていた。

天一神(なかがみ)の鎧!!」

















地べたに座り込んでいる水髪の女性と、その横に立って敵を見据えている黒髪の男性。2人は共に激しい戦いで傷付いており、息を乱していた。

「さすがにキツくなってきやがった」
「ジュビアも・・・魔力がもう・・・」

長時間の戦いのせいで体力的にも厳しくなってきているグレイとジュビア。彼らの目の前には、銀髪の青年と赤紫髪の少女が同様に、全身ボロボロで構えていた。

「許してくれ、ジュビア」
「そろそろトドメを刺そうよ!!リオン!!」

リオンとシェリアがそう言う。彼らは完全に2人の妖精を追い詰めていた。それなのに、なかなか勝負を決められずにいる。

「女性を痛め付けるのは趣味じゃない。ましてや相手はジュビアだ。ジュビアはお前がケリをつけろ」
「またそんなこと言って!!リオンの方が強いんだから、一気にやっつけちゃえばいいじゃない!!
私の回復魔法で力を戻してあげるから」

少女の口から発せられた思いもよらなかった発言。それを聞いたジュビアとグレイはわずかに焦りの表情を浮かべる。

「回復魔法・・・」
「そうか。そっちにはそんな手があったんだな」
「そう簡単に、手の内を晒すわけにはいかないからな」

天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)であるシェリア。彼女はウェンディ同様に回復の魔法を使用することができる。ただし、自己回復時には体力を回復することができないため、疲れきった今の彼女よりもリオンに最後を委ねた方が得策だと考えているようだ。

「リオン!!早くトドメを刺しちゃおうってば!!」
「だから!!ジュビアはお前に任せると言っているだろう!!」
「なんであたしなのよ!!」
「いいからやれと言ったらやれ!!」

優勢にも関わらずなかなか決めきれない理由はこれ。リオンは一目惚れしてしまったジュビアを傷付けたくない。だからライバルであるグレイだけを担当し、彼女はシェリアに最後を任せようと考えているのだ。
対してシェリアは体力も限界。さらにはリオンの方が彼女よりも実力も高く、トドメを確実に刺すには彼が適任だと考えているのだ。ただ、自分が想いを寄せている彼が、敵であるジュビアばかりを気遣っていて面白くないという気持ちも多少あるのだろうが。

言い争っているリオンとシェリア。そんな2人を横目で見た後、グレイは座っているジュビアの肩にそっと手を置き、彼女もその手をぎゅっと握る。

「奴等の弱点は、チームワークだ。俺たちなら、もっと力を合わせられる」
「グレイ様」

ジュビアの手をしっかりと握り、ゆっくりと立たせるグレイ。

「全魔力をぶつける!!」
「はい!!」


「あなた方の燃えるような血と汗と涙は、日暈のように美しい」















「滅竜奥義!!」

「恐るるなかれ、若者よ。進めばそこが道となる」

鳴御雷(ナルミカヅチ)!!」

自身の魔力を全て使い、全身全霊の雷の拳を叩き込むラクサス。それをまともに喰らったジュラは、ゆっくりと崩れ落ちていく。

「参った」

力尽き、地面へと倒れるジュラ。彼の口からその言葉が発せられた時、全てのものたちが番狂わせに大いに湧いた。

『ラクサスの勝利ィ!!聖十の魔導士を撃破!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!ついについに・・・』

この勝敗を受けて、魔水晶(ラクリマ)ビジョンに映し出された順位が音を立てて変化する。

1位 蛇姫の鱗(ラミアスケイル) 61P
2位 妖精の尻尾(フェアリーテイル) 60P
3位 剣咬の虎(セイバートゥース) 59P

『2位浮上!!』

6ポイントもの大差を蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に開けられていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)。彼らはついに、1ポイントまでその差を詰めた。



















「うおおおおおお!!」
「はああああああ!!」

両手の指をしっかりと絡み合わせ、互いの魔力を融合させていくグレイとジュビア。

「おのれ・・・俺の前で、あからさまにイチャツキおって!!」

目の前でその光景を見せつけられたリオンは先程までの様子から一転し、愛しているジュビアにさえも苛立っている様子。

「もはや手加減はしない。シェリア!!」

自身の体力を回復させるため、隣にいる少女の方を向くリオン。しかし、シェリアはなぜかうっとりとグレイとジュビアの方を見つめて動かない。

「素敵・・・」

氷と水の融合・・・2人の気持ちが1つにならなければ絶対にできない魔法、合体魔法(ユニゾンレイド)
シェリアは美しい2人の“愛”に見とれており、リオンの呼び掛けに全く気づく様子がない。

「何をしているシェリア!!回復だ!!」

両肩を掴み、彼女を揺するリオン。それでもシェリアの心は帰ってこない。

「いけぇ!!」
「ああああああ!!」
「シェリア!!ボーッとするな!!」
「え?」

ようやくリオンの声が彼女の耳に届いた。しかし、時すでに遅し。

水流昇霞(ウォーターネブラ)!!」
氷欠泉(アイスゲイザー)!!」

融合した水と氷。その攻撃がリオンとシェリアを捉える。

「おのれシェリアァ!!」
「ごめんなさ~い!!」

2人の合体魔法(ユニゾンレイド)に吹き飛ばされたリオンとシェリア。空へと高々と打ち上げられた2人の蛇姫は、夕日に照らされたお星様となった。

「チームワークの勝利だな」

互いの気持ちが1つになったことで勝つことができた妖精2人。しばし2人は見つめあっていたが、グレイがあるところへと視線を落とす。

「いつまで手、握ってんだ?」
「ウフフフ♪一生です」
「コエーよ!!」

なかなか手を離さないジュビア。彼女の言葉にグレイは恐怖していたが、彼自身手をしっかりと握っていたため、周りからはただのカップルのようにしか見えなかった。
























「!!」

リオンとシェリアが破れたのと時を同じくして、睨み合っていた2人の少年の戦いに動きが起きた。

「シェリア!!」
「!!」

遠く離れた場所で自分が憧れ続けた、ずっと前を走り続けてきた少女の敗北を感じ取ったレオン。彼は予想だにしなかった展開に気が動転し、その方角へと顔を向けてしまった。つまり・・・シリルから目を切ってしまった。

(今だ!!)

もちろんその明らかな隙をこの少年が見落とすわけがない。シリルは自分から注意を逸らしたレオンに向かって全速力で接近する。

「!!」

近づいてくる足音でようやく自分が戦いの渦中にいたことを思い出したレオン。彼はすぐにシリルに視線を向け、技を繰り出し迎え打とうとする。

「滅竜奥義改!!」

だが、レオンが技を繰り出すよりも早く・・・

「水中天嵐舞!!」

シリルの奥義が零距離で、レオンの顔面を捉えた。

「っ!!」

ゆっくりと・・・まるでスローモーションかのように倒れていくレオン。彼のその表情は驚きと悔しさでいっぱいだった。
実力的には完全に敵を圧倒し、静寂な駆け引きでも誰の目から見ても優位性を保ち続けていた少年。しかし、たった1つのミスが時に取り返しのつかないものとなることがある。
強くなりすぎたレオン。彼の放った魔法の数々は、要所要所で敵である妖精たちに味方し、味方である蛇姫たちに悪影響をもたらし、最後に自分の元に跳ね返ってきた。
少年のその高すぎる能力が・・・才能が・・・彼を・・・いや、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)を敗北へと誘ってしまった。

















 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ついにシリル対レオン終了です。この2人の戦いはやりたいこと多すぎて長くなってしまいましたね。ごめんなさい。
まさかのレオンの倒され方。皆さんの予想の斜め上をいった気がします。
そして次でいよいよ楽しかった大魔闘演舞決着です。
次回もよろしくお願いします。 
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