美人秘書
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第五章
「日本ハムは必ずシリーズに出ますので」
「じゃあ甲子園でお会いしましょう」
「是非」
「その時は」
「私は三塁側にいます」
甲子園では、というのだ。
「ですから」
「はい、じゃあ」
「その時はそういうことで」
女子社員達も応える、話す雰囲気は和気藹々としていた。
しかし誰も知らなかった、玲子の会社の外での素顔を。実は玲子は。
会社から二駅離れた場所にあるマンションに住んでいた、しかも。
そこには一人ではなかった、玲子が家に帰ると。
「只今」
「お帰り」
若い男の声が返って来た、そして。
明るい顔立ちで浅黒い肌を持つ背の高い男が出て来た、髪は短くしていて服装は清潔な感じだ。その彼がだ。
帰って来た玲子を出迎えてだ、こう言って来た。
「待ってたよ」
「ええ、それじゃあね」
(今からだね」
「お料理作るわね」
会社での笑顔とはまた違った、にこにことした優しい笑顔での言葉だった。
「これからね」
「うん、じゃあ待ってるよ」
「今日はどうだったの?」
玲子は玄関でハイヒールを脱ぎつつ男に尋ねた。
「あなたの方は」
「別に何もね」
「なかったの」
「一人変なお客さんがいたけれど」
「それでもなのね」
「こっちの職場は今日も平和だったよ」
彼はこう玲子に答えた。
「フィットネスクラブはね」
「それは何よりね」
「まあその変なお客さんがあれこれ言ってたけれど」
「その人はどうなったの?」
「所長が処理してくれたよ」
フィットネスクラブの責任者がというのだ。
「ちゃんとね」
「じゃあ問題ないのね」
「うん、その人他のお客さんから聞いたけれどクレーマーらしいし」
つまり騒ぐ客だったというのだ。
「だからね」
「もうそのクレームを聞いて」
「終わったよ」
「クレーマーの人ってフィットネスクラブでもいるのね」
「それこそ何処でもいるよ」
クレーマーは、というのだ。二人はリビングに入りながら話した。
「そうした人は」
「そうなのね、じゃあ」
「ああ、着替えないと」
彼はスーツ姿のままの玲子に言った。
「部屋着に」
「そうね、ちゃんとね」
「それで今晩は何かな」
「ゴーヤチャンプルとね」
玲子が挙げた料理はまずはこれだった。
「それと菊菜のお浸し、大根のお味噌汁よ」
「そうなんだ、もう御飯は炊いてるから」
勿論彼が炊いたものだ、米を洗って電子ジャーでそうしたのだ。
「後はね」
「ええ、私が着替えてからおかず作って」
「一緒に食べれば終わりだよ」
「そうね、ただ」
「ただ?」
「今思ったけれど」
くすりと笑ってだ、玲子は彼にこうしたことを言った。
「ここで服脱いでね」
「着替えるとか?」
「違うわ、下着だけになってね」
そのうえでというのだ。
「その上にエプロンとかどうかしら」
「それじゃあアイドルのグラビアだよ」
彼は玲子のその提案を聞いて笑って返した。
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