白くさせたい
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第一章
白くさせたい
イタリアはサルディニア王国の主導でようやく統一されローマを首都とするイタリア王国となった。
しかしだ、そのイタリアの子供達はというと。
「すりに盗みに」
「喧嘩ばかりだ」
「困った状況だな」
「どうしたものか」
イタリアの良識のある人はそのイタリアの子供達を見て頭を悩ませていた。その中にはイタリア統一を心から喜んでいた政治家でありかつては活動家だったエドモンド=デ=アミーチスもいた。
アミーチスはその八の字にさせてやや反り返らせた髭を自分の手で撫でつつだった。憂いのある顔で友人達に話した。
「教育は大事だよ」
「教育は国の礎」
「まさにそうだね」
「そう、教育がよければ」
それでというのだ。
「よい人材が出て来て」
「国をよくする」
「そうなるね」
「国家には人材が必要だ」
かなり真剣にだ、アミーチスはその丸い目で語った。
「何と言ってもそこから国ははじまる」
「その通りだね」
「まずは教育だよ」
「よい国を作る為には」
「そこからだね」
「うん、しかし」
アミーチスは腕を組んで困った顔で言った。
「今はどうだろうか」
「今のイタリアは」
「そう言うんだね」
「今のイタリアの状況は」
「統一は成った」
このことは非常に喜ばしいというのだ。
「しかしどうだろうか、今のイタリアの子供達は」
「荒れているね」
「お世辞にもいい状況とは言えないね」
「学校の中でもね」
「悪い話は尽きないよ」
「子供達が将来のイタリアを担っていくんだ」
アミーチスは心から憂いていた、そのことが言葉にも出ている。
「それで子供達が荒んでいてどうするのか」
「そこを何とかしたい」
「君はそう考えているんだね」
「イタリアを想う者として」
「そうだね」
「そう、けれど教育の体制を充実させて識字率をよくしても」
それでもというのだった。
「根本的な解決になるかどうか」
「イタリアの子供達の荒れた状況を改善するかどうか」
「そのことがだね」
「問題だね」
「所謂道徳のことだね」
「まずは聖書がある」
イタリアはバチカンがあることからもわかる様にキリスト教それもローマ=カトリック教会のお膝元だ。だからこの書が第一に出るのは当然だった。
しかしだ、それでもなのだ。
「聖書だとわかりにくいところもあるだろう」
「子供にはだね」
「どうしてもそうしたところがある」
「だからだね」
「聖書の他にも必要だね」
「そうも考えているんだ」
実際にとだ、アミーチスは友人達に言った。コーヒーを飲みながらの話である筈だがそれでもだ。彼等はコーヒーに手をつけず話していた。
「子供達に必要なものは何か」
「わかりやすく子供達を導ける」
「その荒んだ心を奇麗にしたい」
「そう考えているんだね」
「そう、どうすべきか」
真剣に考えてだ、彼は言った。腕を組んで。
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