血と肉と
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
3部分:第三章
第三章
やがてその婦警の後ろからだ。一人の男が近寄ってきた。それは。
「あれは?」
「黒く丈の長い服ですね」
「見たところ」
「そうだな」
この日も物陰に隠れている警部達がだ。話をするのだった。
「あれだな」
「身動きが不審ですし」
見ればだ。明らかに忍び寄っている。しかも右手には何かを持っている。
それを見てだ。警部達も身構える。警部はここで言った。
「いいか」
「はい、今すぐに出て」
「あの男を止めましょう」
「そして逮捕を」
「いや、してからだ」
こう言うのであった。これが警部の考えだった。
「あいつが襲ってからだ。そこで一斉に襲い掛かるぞ」
「そうですね。言われてみればですね」
「まずはそうして捕まえて」
「証拠を押さえてですね」
「そうだ、そうする」
警部は確かな声で言った。
「わかったな」
「はい、それじゃあ今は」
「そうしましょう」
「そして捕まえましょう」
こうしてだった。彼等は様子を見守るのだった。その間にも男は暗がりの中を忍び寄ってだ。そうしてであった。
男がその囮の婦警を後ろから掴んだ。そして。
右手に持っているそれを婦警の顔にやった。そこでだ。
「よし、今だ」
「はい、それじゃあ!」
「ここで!」
皆一斉に出てだ。そうしてだった。
彼を取り押さえた。その彼は。
何と教会の神父だった。町の教会の神父であった。神父らしく信仰心の篤い品行方正と評判の人物だった。その神父はこう言うのであった。
「神への尊い贄なのだ」
こう言うのである。
「全ては。そうなのだ」
この話は忽ちのうちにマスコミやネットに伝わった。それでだ。
どちらもセンセーショナルな記事や書き込みが続いた。神父の連続猟奇殺人としてだ。あることないこと書かれることになった。
そしてその中でだ。和久田は警官達に話すのだった。とりあえず事件が終わってだ。警察は落ち着いていた。その中での話だった。
「生贄だったんだな、ガイ者は」
「はい、そうですね」
「あの神父はそう言っていますね」
警官達も彼のその言葉に応えて言う。
「神への」
「確かにそう言っていますね」
「身体も血も神への捧げものか」
和久田はここで神父のその証言をそのまま言った。
ページ上へ戻る