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天邪鬼

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第一章

                 天邪鬼
 天邪鬼は妖怪の皆からもです、素直でないことが知られています。
 ある日のことです、河童がその天邪鬼に怒って尋ねました。
「だからどっちなんだよ」
「相撲なんて嫌だよ」
 天邪鬼はこう河童に言い返します。
「絶対にね」
「そう言うけれど顔は笑ってるよ」
「だから嫌なんだよ」
 笑顔でこう言う天邪鬼でした。
「他の遊びがいいよ」
「けれどもう四股を踏んでるじゃない」 
 相撲の四股をというのです。
「準備体操をもしたし」
「だから嫌なんだよ」
「嫌なのにどうして四股踏むんだよ」
「嫌だからだよ」
「嫌だ嫌だって言ってもしたい様にしか見えないよ」
 河童にはです。
「だからどっちなんだよ」
「ああ、天邪鬼はね」
 ここで怒っている河童にです、猫又が言いました。
「言ってることは逆だから」
「それじゃあ」
「うん、いいんだよ」
 お相撲で、というのです。
「むしろ早くしたくて仕方ないんだ」
「そうなんだ」
「だから四股も踏んでるんだよ」
「ややこしいな」
 河童は猫又のお話を聞いて腕を組んで言いました。
「言ってることが逆なんて」
「そういう子だからね」
「それでなんだね」
「そのことは納得してね」
「付き合わないといけないんだね」
「そうだよ、天邪鬼は言っていることとは逆なんだ」
 それが天邪鬼だというのです。
「そういうことでね」
「わかったよ」
 河童もようやく頷きました、こうして妖怪の皆は天邪鬼と一緒にお相撲を楽しむのでした。そしてある日のことです。
 天邪鬼は皆にです、笑顔で言いました。
「明日僕のお家に来ないでね」
「ああ、来て欲しいんだ」
「そうなんだね」
「そうだよ、来ないでね」
 こう妖怪の皆に言います。
「絶対に」
「わかったよ、じゃあね」
「絶対に行くから」
「楽しみにしているよ」
「楽しみにしていなくていいよ」
 これが天邪鬼の返事です。
「お菓子やお茶だけでなくとびきりの燻製も何もないから」
「ああ、そういえば」
「天邪鬼って燻製が好きだったんだ」
「それも大好物だったね」
「あんなの大嫌いだよ」
 その燻製は、とです。天邪鬼はこうも言いました。
「何処が美味しいのか、だから皆にもね」
「食べさせてくれるんだね」
「その燻製を」
「僕達にも」
「全然用意とかしていないから」
 天邪鬼は言います、その人間の子供の姿に着物を着た姿で。頭の天辺に一本だけ角が生えています。髪の毛の間に。
「来なくていいよ」
「それじゃあね」
「そういうことでね」 
 皆は天邪鬼の言葉に応えました、そしてです。
 皆は天邪鬼の前から去った後で、です。こうお話するのでした。
「何かね」
「言うことが逆さまだからね」
「ちょっと聞いたら」
「何かって思うよね」
「全くだよ」
 お相撲をする時に怒った河童も言います。 
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