大空へと
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第二章
「全くな」
「そうさ、諦めていないさ」
「今日も造ったしな」
「二人でな」
「絶対にだ」
ウィルバーは強い声で言い切った。
「飛行機は空を飛ぶ」
「そうさ、絶対にな」
「車も船もだ」
「動いているよな」
「鉄の船を見るんだ」
ウィルバーが言うのはこのことだった。
「ちゃんと浮かんでいるよな」
「水の上にな」
「確かに普通にやったら鉄は沈む」
「それでも浮力や重さを計算して造ったらな」
「ちゃんと浮かんでるな」
「それで動くな」
こう弟に言うのだった。
「今は水の中を進める船だってあるんだ」
「潜水艦だな」
「ああ、だからな」
「機械は空だって飛べるな」
「翼があって」
そして、というのだ。
「後は飛ぶ力があれば」
「機械も空を飛ぶ」
「ロック鳥みたいに飛ぶんだ」
アラビアンナイトに出て来るこ巨大な鳥の様にというのだ。
「それが出来る、だからな」
「それを証明しような」
「俺達二人でな」
こう話してだ、二人は飛行機を造っていった。鉄でだ。
そしてだ、その外見はというと。
羽根は上下に二段あってだ、尾翼もある。前にはプロペラがあり下の翼には車輪がある。その二枚羽根の後ろに操縦席がある。
その飛行機を見てだ、他の者達は言った。
「これが飛ぶ!?」
「如何にも重そうだぞ」
「地面を走るならともかく」
「これが飛ぶのか!?」
「絶対に無理だ」
「飛ぶ筈がないぞ、やっぱり」
「飛んだら驚きだ」
こう言うのだった、そしてだ。
兄弟にもだ、口々に言った。
「やっぱりどう考えてもだ」
「この飛行機は飛ばないぞ」
「無理だ」
「あんた達がどう思ってるか知らないがだ」
「この飛行機は飛ばないぞ」
「絶対にな」
「何があってもだ」
こう言う、しかし二人は正面きって反論した。
「いや、飛ぶ」
「この飛行機は絶対に空を飛ぶ」
「これまで何度も検証してきた」
「実験もしてきた」
だからだというのだ。
「これは飛ぶんだ」
「飛行機は空を飛ぶ」
「俺達は嘘を言っていない」
「確実に空を飛ぶぞ」
「君達はそう言うけれどな」
「これはとでも」
その二枚羽根の飛行機、前にプロペラが付いている細長い機体を見ながらだ。誰もが難しい顔で言うのだった。彼等自身にも。
「飛ばないぞ」
「どうやったらこんなのが飛ぶんだ」
「気球や飛行船とは違う」
「グライダーにしてももう少しな」
似ているが、というのだ。形が。
「それでもな」
「グライダーは軽いが」
「これは機械を積んでいる」
「鉄の機械をだぞ」
「他にも燃料を積んでいるな」
「それだけ重いんだぞ」
「重いものがどうして空を飛ぶんだ」
彼等はあくまで言うがだ、二人はまた言ったのだった。
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