大きな木の下で
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第四章
「何もすることないしな」
「そうだな、じゃあな」
「今日はここでこうしてな」
「時間を過ごすな」
「そうした日曜もいいな」
「たまにはな」
こう話してだ、そしてだった。
二人は実際に背中を幹にもたれかけさせたまま周りを見ていた、今度は定年をとっくに過ぎたと思われる老夫婦が来てだった。
夫がだ、妻に言った。
「ここで休むか」
「そうね、疲れたし」
「木陰に入ってそうして」
「ゆっくり休みましょう」
夫婦で話してだ、そしてだった。
老夫婦も木陰に入ってその中に座って休んだ。そして老夫婦の後は。
少し柄の悪い感じの青年が来たが。彼も。
木陰に入ってその場に寝転がって寝だした、外見は悪そうだがその寝ている顔は穏やかで悪いものはなかった。
人々と生きものはゆっくりと休んで楽しんだ、それが夕刻になると。
まずは猫達が起きて背伸びをしてだった、そのうえで。
木の下から出ていった。柴犬と飼い主の男の子だ。
小鳥達や栗鼠も声がしなくなっていて老夫婦も帰って。
青年もだ、身体を伸ばして起きてだった。
何処かに去った、カップルも帰って。
女の子達もままごとを終えて帰った、後に残ったのは登輝と和也だけになってだ。和也からこう言って来た。
「もうな」
「ああ、俺達もな」
「帰ろうか」
「そうしようか、寝なかったけれどな」
「いい時間を過ごせたな」
「そうだな」
登輝は微笑んでだ、和也に答えた。
「中々な」
「いい時間だったな、ではな」
「帰るか」
「僕達のそれぞれの家にな」
「こんな日曜もいいな」
登輝はこうも言った。
「たまには」
「たまにはか」
「いつもここでのんびりも悪くないにしても」
それでもというのだった。
「俺遊ぶのも好きだしな」
「だからか」
「それでたまだよ」
こうなるというというのだ。
「じゃあいいな」
「ああ、たまにはな」
「ここに来て休もうな」
「そうするか」
「そしてこうした時間を過ごそうな」
二人は幹から背中を離して立ち上がってだった。
彼等も帰路についた、木は夕刻が深まり夜になるとその闇の中に消えていった。そしてその夜の中で休むのだった。
大きな木の下で 完
2015・9・24
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