FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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救世主
前書き
原作では私の希望通りウェンディ&シェリアvs.ディマリアの構図が出来上がった様子。そこで私なりに勝手に考えてみたウェンディがカグラとシェリアの二の舞にならない方法。
それは・・・ニルビット族に伝わる織物!! ウェンディの今の服装はニルビット族に伝わる織り方をした秘伝の衣装。あの服装の時のウェンディってほとんどの確率で服が破れてない気がするんです。それはきっと何かすごい生地やら織り方やらをしてるからだと思うんですよ!!
いける!!いけるぞ!!これでウェンディがディマリアを攻略できる!!←妙な自信
「ま・・・マジかよ・・・」
やってしまった感が半端ではない。力ではレオンに勝てない俺が彼に勝っていたのは魔力を溜める速度とそのわずかな動きを見切ること。なのに、こいつはこの戦いの中で1つの優位点を俺から奪ってしまったのか。
「これでやっと・・・シリルと五分の戦いができるかな?」
序盤は俺がレオンを押していた。破滅の冬が発動してからはレオンが一気に主導権を奪った。今はその吹雪も晴れ、俺は水天竜モードと付加魔法で能力を底上げした。だから俺が序盤のように優位に進められると思っていたのに・・・
「いや・・・まだ大丈夫だ!!」
悲観的な考えはよそう。俺にはまだ目を使っての戦い方が残っている。レオンが魔力を早く溜めることができようが、俺がそれ以上に早く反応して回避すればいい。そしてレオンの体力を削って、勝利をもぎ取る!!
「いくぜ」
「来い!!」
俺に対して構えるレオン。俺も彼に対抗すべく構える。
(集中しろ・・・この目があれば、捉えられない動きなんかない!!)
全神経を目に集中させ、意識を高めていく。すると、レオンの魔力が腕に集中していくのがわかる。
(永久凍土か・・・なら・・・)
横にステップして交わした後、後ろから鉄拳を叩き込む。そう作戦を考えていると突如・・・レオンが視界から消えた。
「え・・・?」
なぜ消えたのか、全く理解が出来なかった。辺りをキョロキョロしていると、後ろから人の気配を感じる。
「そこか!!」
振り向いて攻めてきているであろうレオンに一撃を喰らわせようとした。だが、俺が体を反転させようとしたその瞬間、
ブシャッ
体の至るところから血が吹き出してきた。
「がはっ・・・」
何が起きたのかわからずその場に倒れる。なんとか痛みに耐えて顔を上げると、そこにはこちらに背を向けているレオンの姿があった。
「勝負あり・・・かな?」
そう呟いた彼の手にはわずかに血が付着していた。それも、見た感じ彼の血ではない。たぶん・・・俺のものだ・・・
第三者side
『な・・・え!?』
あまりの出来事に目を白黒させているチャパティ。その横にいるヤジマもマトー君も唖然としており、シリルの身に一体何が起きたのかわからずにいた。
「な・・・なんじゃ!?一体何が起きたんじゃ!?」
驚いているのは実況席だけではない。妖精の尻尾の応援席では、ジュラと同じ聖十の称号を持つこの老人でさえも、意味がわからずにその場に思わず立ち上がっていた。
「み・・・見えたか?今の」
「ぜ・・・全然見えなかったよ」
エルフマンとその横にいるアルザックが互いに顔を見合わせ、レオンがシリルに一体何をしたのか話している。
「シリルお姉ちゃん・・・いきなり倒れてどうしちゃったの?」
「ほ・・・本当にどうしちゃったのかしら・・・」
何も見えなかったため、アスカはシリルが勝手に倒れたのだと思っている様子。だが、彼女の後ろにいたビスカは勝手に倒れたわけではないのだとわかっているため、苦笑いをすることしか出来ない。
そしてこれには妖精の尻尾のみならず、他のギルドの魔導士や一般の観客たちも呆然としていた。レオン・バスティアの所属している蛇姫の鱗のメンバーでさえもだ。
『さ・・・先程の瞬間をハイスピード魔水晶で解析しましたので、その映像を流します!!』
闘技場にある魔水晶ビジョンの1つの映像が切り替わり、先程の瞬間を捉えたVTRが流される。これをドムス・フラウにいる者は全て、食い入るように見つめている。
『いくぜ!!』
『来い!!』
共に構えるレオンとシリル。レオンの魔力が拳に集中され、シリルがそれに備えて若干踵を浮かせる。ここまではさっき見えていた通り。だが、次の瞬間、
ヒュンッ
超スロー映像であるはずの画面が・・・いや、レオンが通常と同じ・・・もしくはそれ以上の速さでシリルの懐に入る。
『さ・・・さらに速度を落としてみます!!』
レオンが懐に入るまでの速度が速すぎて、これではその後の映像も見えにくいのではないかと判断したチャパティは、かなりスローになっている映像をさらに遅くしていく。
どのくらい下げたのだろうか、ようやく一般の観客たちでも何が起きたのかわかる速度までレオンの動きが遅くなった。
そしてそれは、驚きを連発させるものだった。
まず、レオンの左の拳がシリルの胸元を掠め、左腕を同じように掠め、額、右太もも、左脇腹、首の順番で拳に付いている氷の結晶で掠らせるように切り裂き、最後にジャンプしながら最初に胸元に攻撃した跡とクロスするように爪先で傷をつけ、後方へと着地している。
そして着地して少ししてからシリルが後ろからの気配を察知し、振り向いたところで傷跡が大きく開き、血が吹き出したようだ。
『し・・・信じられない!!わずか数秒・・・いや!!ゼロコンマ数秒の世界でこれだけの高速攻撃!!』
『さっきまでの動きとあまりにも違いすぎるねぇ』
『す・・・すごすぎるカボ・・・』
実況席のこの反応はもちろんのこと、大魔闘演舞に出場している全てのギルド、そして観客たちは歓声を上げればいいのか、それとも何か別のことをすればいいのかわからなくなり、呆けていることしか出来ない。
「ば・・・バッカス・・・今の攻撃・・・お前の酔・劈掛掌と同じくらい速かったんじゃ・・・」
「いや・・・」
四つ首の仔犬のロッカーがガタガタと震えながら、自身のギルドの最強魔導士であるバッカスにそう言う。
バッカスは2日目のバトルパートでエルフマンと対戦した際、一瞬のうちに7発もの攻撃を叩き込むことができていた。先程のレオンと同じように。
しかし、バッカスは額に汗を浮かべながらロッカーの言葉を否定する。
「俺なんかとは比べ物にならねぇぜ」
バッカスは両手を使い7発もの平手を一気にエルフマンに入れた。しかしレオンは最初の6発に関しては左手だけで攻撃している。しかも全力で叩き込むのではなく、あえて掠らせるという器用な芸当を見せて。
最後の一撃はすでにシリルの後ろに回り込むことが目的だったようで、爪先でちょっと掠り取っただけのように見えるのに、実際には血が吹き出すほどの大打撃。スピードのみならず、パワーに関しても通常では考えられないほどのものだと言わざるを得ない。
「カグラさんよりも速かったよね?」
「そう見えたね・・・」
「しかもまだ全力じゃないように見えたよ」
人魚の踵の面々もレオンのあまりの速度に震えが止まらない。その力は明らかに、4日目に彼を納刀したまま倒したカグラのそれを上回っていた。
「め・・・メェーン・・・」
「ウソだろ?」
「シリルちゃんがあんな簡単に・・・」
青い天馬の一夜、レン、イヴも完全に呆然自失。その隣では古文書を駆使してヒビキが何やら計算している様子だったが、それにすら気付くことがない。
「何してるの?ヒビキ」
「今のレオンくんの速度を計算してるんだ。だけど・・・」
突然手を止めるヒビキ。彼はため息を大きく1度ついた後、展開していた古文書を閉じる。
「計算とかができるレベルじゃないよ、今のは」
「ぐ・・・グラシアン・・・今の見えた?」
「分かりきった質問するな」
ドムス・フラウのすぐ下で倒れていたグラシアン。彼の元に心配して飛んできたキセキがその位置から見える魔水晶ビジョンを見て、相棒であるその男に質問をしていた。
「だ・・・だよね・・・」
「あぁ・・・」
震えが止まらないキセキをギュッと抱き寄せるグラシアン。彼はまだ起き上がることの出来ないほどのダメージを自分に与えた相手のさらなる進化を見て、表情を歪ませる。
「俺はとんでもない奴を目覚めさせたのかも知れないな・・・」
「れ・・・レオン・・・」
「あ・・・あんなのありですの?」
ありとあらゆる者の度肝を抜いた彼の所属するギルド、蛇姫の鱗でも皆固まってしまっていた。目を回していたはずのトビーですら、その衝撃に目の焦点がしっかりと合うほどの出来事だったのだから。
「こ・・・これは・・・」
レオンのことをかなり高く評価していたオーバ。彼女はずっと指をクルクルと回転させていたはずなのに、その仕草を忘れて固まってしまっていた。
「私の予想を遥かに越えてたねぇ・・・レオン」
自分でもレオンはかなり高く評価し、ジュラをも越えると言っていたオーバ。だが、彼女は彼の底知れなさを見て、自分が彼にしていた評価がまだ低かったことを認識していた。
「しょ・・・初代!!これはどうすれば・・・」
妖精軍師と呼ばれた頭脳を持つメイビス。彼女にどうすればレオンに対抗できるのか聞こうとしたマカロフは、隣に立っている少女の姿を見て、言葉を飲んだ。
「そんな・・・魔力の溜め方がわかったくらいで、ここまでスピードが増すなんてこと・・・」
そう言う彼女の目尻にはいっぱいの涙が溜まっていた。
「も・・・もう私の手に負えません・・・グス・・・」
「だ・・・誰か!!初代を全力であやせ!!」
自分の計算を越えてしまったレオンを前にし、もはや計算することすら出来なくなったメイビス。だが彼女は知らない。レオンを倒すことより、自分をあやすことの方が難しいということを。
「くっ・・・うぅ・・・」
ボタボタと血を垂らしながら、地面に手を付いてなんとか立ち上がろうとするシリル。しかし、
「うっ!!」
体のダメージが大きすぎて、崩れ落ちてしまう。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
それでもなお、立ち上がろうと体に力を入れていくシリル。それに気付いたレオンは、彼の方をゆっくりと振り向く。
「まだ動けるんだ。やっぱりすごいよ、シリル」
至るところから血を吹き出しているにも関わらず、起き上がって敵に勝負を挑もうとするシリルに、レオンは感心していた。
「でも、もうやめた方が良くない?これ以上やったら危ないと思うよ」
優しく忠告するレオン。しかし、シリルはそれに何も答えずに、痛む脇腹を押さえながらなんとか立ち上がる。
『妖精の尻尾のシリル!!なんとか立ち上がりました!!まだ戦える模様です!!』
先程までの真剣な眼差しから一転、苦痛と絶望感に苛まれたような表情のシリルは、水色に輝く瞳をできる限り開き、レオンを見据える。
「悪いけど、俺は・・・絶対に・・・諦めないよ・・・最後の最後まで・・・」
それを聞いたレオンは口元を緩ませる。
「さっすが!!それでこそシリルだよ」
興奮気味にそういい、レオンは両手を広げてみせる。
「俺もやっとみんなと同じ土俵で戦えるんだ。評議院の連中に見せてやりたいぜ」
かつて自分をバカにした評議院。しかし、彼はそんな評議院の考えていたものを越えた。自分ではシェリアと並べない。いとこであるリオンにも及ばない。その考えを彼は自分自身の力で退けた。
ただ、彼は勘違いしている。自分の力が当にシェリアとリオン・・・いや、それどころか、大陸で10本の指に入るジュラさえも凌駕していることを。
ようやく彼らに並んだと思っているレオン。実際にはこの大陸の全ての魔導士をも越えて、別の土俵に入っているとも知らずに、彼はシリルとの戦いを楽しみにしていた。
(でも・・・おかしいよな・・・)
痛みで息も絶え絶えのシリル。彼はさっきのレオンの動きを見て何か違和感を感じざるを得ない状況だった。
(魔力の溜めが早くなったのはわかったけど・・・だからってあれだけスピードが増すなんて・・・絶対おかしい)
レオンは初め、魔力を集めるのが下手で、その分攻撃などの速度を上げているとシリルは感じた。だけど、下手だったものが自分たちと同レベルになったくらいであれほどまでに速度が上昇するだろうか?
(それはない!!絶対ない!!となると・・・)
シリルの頭の中にある結論が浮かんだ。たぶん・・・いや、間違いなくこれが理由だとシリルは確信した。
(レオンは魔力を溜めるのが遅かったから、速く動けなかったんだ!!)
レオンは魔力が必要な部位に上手に集めることが出来ずにいた。そのせいで本来彼の出せる限界の速度まで引き上げることができず、シリルがついていけるレベルだったのだと。そして今、レオンは魔力を溜める速度が通常の魔導士レベルになったため、自身の限界まで攻撃や移動の速度を上げることができるのだと。
「化け物じゃねぇかよ・・・」
これがレオンの本来の力。本来の能力。自分がさっきまで戦っていたのは、彼の限界に全く届いていない少年の力の一部だったのだと知ったシリルは、思わずそう呟いた。
(勝てるのか?・・・いや・・・)
頭の中に浮かんでくるのは今、自分と同じように戦ってくる仲間たちの顔。さらには囚われてしまった女性と、それを救出するために向かった桜髪の青年と銀髪の女性。そして・・・
「ウェンディ・・・」
自分が愛してやまない最愛の少女。
「勝つ!!」
迷いを全て捨てて、目の前の敵に全神経を集中させる。
(俺の目が追い付けない敵なんかいるわけない。ヴァッサボーネがエドラスのヴァッサボーネを通じてまで俺にくれたこの目が・・・負けるはずない!!)
父を信じ、自分を信じる。その真っ直ぐな瞳を見てレオンは足を半歩引く。
「来る!!」
彼の魔力の流れに意識を集めていく。一瞬でも動きを見落としてしまえば、おそらく瞬殺されてしまう。一部の隙も見せることはできないと待ち構えるシリル。だが、
クルッ
そんな彼のやる気を削ぐかのように、レオンが背を向けた。
「なっ!?くそっ!!」
ナメられたのか?はたまた何か狙いがあるのか?なぜわざわざ背を向けて、相手から視線を反らすのか?シリルにはそれが解せなかったが、今はこのチャンスを逃してはならないと突進する。
罠とも知らないで。
「うあっ!!」
1歩踏み出した途端、頬が、肩が、左の太ももが、切り裂かれるような痛みを感じた。そこからはさっきほどではないが、血が出ているのを触れてみた手を見て確認する。
「う・・・ウソ・・・」
レオンは彼のやる気を削ぐために背を向けたのではない。すでにシリルへの攻撃が済んでいたから、もう相手にする必要がなかったから、そのように動いたのだった。
「そんな・・・」
目の前が滲んでくる。痛みじゃない。苦しいからじゃない。ただ悔しくて、彼は目を潤ませていた。仲間のために勝たねばならなかったのに、それを叶えることが出来なかった自分が情けなくて、大粒の涙を流したのだった。
「く・・・そ・・・」
手を力強く握りしめて、それを震わせる。そして彼はガムシャラに金髪の少年に向かって駆け出す。
「あああああああ!!」
パシッ
水と風を纏わせた、今まで何人もの強敵にを打ち勝ってきた拳は、その少年の前には無力だった。
「もうやめよう。これ以上は無駄だよ」
「くっ・・・」
掴んだシリルの手を投げるように離すレオン。シリルはふらつきながら、彼との距離を置く。
「別にいいじゃん。まだラクサスさんもエルザさんもいる。俺よりも強い人はそっちにはいるんだから、その人に任せちゃいなよ」
その体じゃもう限界だろ?と付け加え、シリルに降参するように諭すレオン。そんな彼の言葉にシリルは首を振る。
「出来ない・・・例え負けるとわかってても、降参は絶対に出来ない!!」
頭を上げた反動で、彼の目に溜まっていた涙が弾け飛ぶ。
「みんな傷だらけでも頑張ってる!!エルフマンさんもウェンディも、辛くても降参しなかった!!だから俺も・・・絶対に降参なんかしない!!」
シリルがそう言うと、レオンは大きく息をつき、何かの決心を固める。
「わかった。じゃあこれで終わりにしてあげるよ」
体を捻り、頬を大きく膨らませるレオン。それを見たドムス・フラウの人々に緊張が走った。
「まさか・・・ブレス!?」
「このタイミングで!?」
マカロフとロメオはレオンのまさかの判断に目を疑う。
「レオン!!」
「あのバカ!!今とシリルにそれを使ったら・・・」
蛇姫の鱗の一同にも緊張が走る。だが、その声はレオンに届くことなどあり得ない。
「氷神の・・・怒号!!」
素早く放たれた黒い冷気の塊は、一直線にシリルへと伸びていく。
「!!」
体の前で腕を交差させ、それに耐えきろうと歯を食い縛るシリル。だが、そんなもので塞ぎきれるほど、レオンのブレスは甘くない。
想像を絶するような・・・いや、最悪の事態さえ想定してもおかしくない一撃。しかし、それがシリルを直撃する直前、
ガァン
シリルの脇腹に何かが当たり、ブレスの範囲外へと弾き出された。
「いてっ!!」
完全に予想外なところからの衝撃だったため、何も反応できずに顔から地面に落とされてしまう。
その直後、シリルが元いた場所を黒い冷気が通過していった。
バキッ
何かが折れる音と一緒に。
「うおおおおおおっ!!」
それと同時に聞き覚えのある叫び声が聞こえてくる。シリルは血が出ている鼻を押さえながら、そちらを振り向く。
「俺の鉄竜棍を砕くとは、大した力だな。ギヒッ」
そこにいたのは、長くてボサボサの黒い髪をした、シリルと同じ竜がいた。
『あぁっと!!なんとここで!!ガジル乱入だぁ!!』
絶対絶命のピンチに突如現れた鉄竜。彼が妖精を救う救世主となるのか?
後書き
いかがだったでしょうか。
ずっと暇を持て余していたガジルの登場です。
ごめんなさい・・・やりたかったんです。ガジル登場が。
ていうかこの話書いてて思ったけど、ゼレフやアクノロギアじゃなくてレオンこそがラスボスにふさわしいと思う。
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