とある科学の傀儡師(エクスマキナ)
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第1章 幻想御手編
第4話 幻想御手
前書き
第1章スタートです。
章設定をするか迷い中
いつしか謎の忍「サソリ」の入院する病院へと学校帰りに寄ることが日課となったある日。
柵川中学に通う佐天と初春は病院へと入るための自動ドアを潜っていった。
御坂と白井は中学が違うため、合流せずに向かう。エレベータを出てすぐ目の前には病院に備えてあるテレビを稼働させるためのカードを発行する券売機のような機械の前で立ち止まる。そこで佐天はウキウキしながらカード(千円分)を購入していた。
「それをサソリさんに渡すのですか?」
「んー、まあね!いやー、そろそろお約束をしておこうかなと思ってね」
「お約束……ですか?」
「そうそう、サソリって(暫定的に)過去からタイムスリップしてきたみたいじゃん。ということは現代文明に驚愕するエピソードを披露しておかないと視聴者様に申し訳がね」
「視聴者って誰ですか?……」
佐天は取り出したカードを初春の前で軽く振った。
つまり、これから起きることを事前に説明しておくと。
過去から未来へとタイムスリップしてきた人に当時の常識を超えた力で動いている奇想天外の物品を見せるという話が結構ある。
人間が走るよりも早い鉄の乗り物(車など)。
移動に便利なエスカレータにおっかなびっくりしながら試乗してみるなど身近にたくさんある。
佐天は、あの赤い髪の少年にも見せたらどんな反応をするか考える心から湧いてくるワクワク心は抑えられない。
そこで見せるべきものを考えてみると、入院しているのだから気軽に外出はできないので最もポピュラーな現代の利器となる「テレビ」を用いる。目の前にある箱から小さな人間が話をしたり動いたりしていれば、いやでも珍妙なやり取りになるであろう。
過去からタイムスリップしてきた少年にテレビを見せる。
「なな!なぜ箱の中で人が動いているのだ!?おのれ無礼な奴!叩切ってやるわ」
自分の居た世界では考えられないような文化的衝撃(カルチャーショック)を受けて、刀を振り上げるサソリに身を挺して止める佐天を連想する。
「大丈夫だから!これはテレビといって……」と説明する。
ここまではテンプレの流れである。
「やっぱり、鉄板ネタよね」
「サソリさんの時代設定っていつでしたっけ?」
まずそんな口調でしたっけ……と初春は頭の中で思った。
佐天がカードを片手にサソリの部屋の引き戸を勢い良く開け、いざ現代と過去の思考の科学反応を見ようと気合を入れる。
「たのもー!ってあれ?」
しかし、病室に入ってみるとサソリは看護婦から懇々と説教をくらっているのを見えた
「良いですか!!あなたは重傷なんですよ。患者だと言うこと自覚してください」
「へいへい」
耳を塞いで説教を受け流すサソリ。
「もう、今度見つけたらベッドに縛り付けますからね」
と言い放つとサソリの病室を若干引き戸の開ける音を大きくしながら威嚇するように出て行ってしまった。
「何したの?」
「腕立て伏せをしていたら見つかった。あーうるさいやつだ」
と背中の筋肉を伸ばすように反ると横になって腹筋を始めるサソリ。
「いや、ダメでしょ!」
「オレの身体だからどう使おうと勝手だろ。お前らは奴が来るのを見張っててくれ」
見つけた当初はヒョロヒョロに痩せていたが、治療と(隠れた)筋トレのせいか少しだけ筋肉がついてきたサソリ。
流石、元忍と自称するだけのことはある。この弛まぬ訓練で常人離れした身体能力を身に着けていくのだろう。
さて本題に!
「ところでサソリ!はいじゃーん!」
とサソリにカードを見せる佐天。
「ん?札か?」
『おー、待ってましたよその反応』とばかりに笑顔で自分の頭を叩いて向ける。
「実はね、これをこの箱に入れるとね」
「ああ、それで映るようになるんだな」
「えっ!?」
「それがないとダメだったのか……どうりで弄っても動かねえわけだ」
と固まっている佐天からカードを受け取るとサソリは差し込み口に入れる。
画面にニュース番組が流れ始めた。あとは手元のリモコンを使って操作を確認するようにボタンを押していく。
「んー、無線か、なかなかだな」
慣れた手つきチャンネルを変えていくサソリを尻目に佐天は側にいる初春の首根っこを掴むとヒソヒソと話し合いを始めた。
「何、なんで知ってんの?初春が教えたの?」
「違いますよ。御坂さんたちじゃないですか」
「あー、しまった。おいしいところ持っていかれたわ」
とヒソヒソ話を切り上げてサソリの元へと向かう。
「誰に教えてもらったの?」
「いや、別にオレのところにもあったし」
な、なに!?
「まあ、ある程度実用段階だった気がするが」
そんなサソリの予想外の行動に佐天は「う、う……」とうめくように呟き、ブルブルと震えながらサソリに指をさした。
「裏切りものー!アンタこの時代の人間だな!返してよ千円」
「何でだよ。お前が勝手にやったんじゃねーか」
キィキィと騒ぐ佐天を初春がなだめる。
しかし、一度メモリが減ったカードは返金不可のため泣き寝入り。
「うう、こんなはずじゃなかった」
佐天が落ち込んでいると、サソリが面倒くさそうに頭を掻きながら。
「悪かったよ。よく分からんが……この札どうすんだ?」
「あげるわよ!!それで裏切った数々の視聴者様の怨念を思い出しながら観ればいいのよ」
「佐天さん落ち着いてください」
病室のベッドを握り潰さんばかりに力を込めていく佐天。初春は苦笑いを浮かべながらどうして良いか分からずに目線でサソリに助けを求める。
「仕方ねえな……おい、そこの引き戸開けろ」
サソリが初春に指示を出した。
「はい?ここですか」
と備えつけてある引き出しを開けると、中から有名菓子ブランドのチョコが出てきた。
「あ、これ」
「お前たちから貰ったんだが、甘ったるくてな……やる」
あ、確かに一つ食べてある。
「さあ、佐天さんこれでも食べて機嫌を直してくださ」
「おーいーしぃ!!さすが有名チョコメーカー!」
早い!そして機嫌が直ったかのように普段通りの活発な女子へと早変わりする。
佐天がチョコに夢中になっている間にサソリは中断していた筋トレを再開していた。
腹筋をしていくが腕には点滴の管が付いており、時折、鬱陶しそうに睨み付ける。
腹筋が終われば、身体を起こして柔軟体操をする。
「ちっ!!大分鈍っているな。嫌になる」
舌打ちをかましながらも両足に腕が苦も無くペタッとくっつくことには二人は一種の羨望の眼差しで見やる。
「サソリさんは、身体が柔らかいのですね」
「こんなもん普通だろ。硬かったら負けだ」
一通り体を慣らすとベッドから起き上がり、壁に向かう。
「さて……ボツボツ始めるか」
何やら印を結んでいるサソリに「何すんの?」と佐天が聞く。
「チャクラの制御、ちょっとこれ持ってろ」
と言うと点滴台を佐天に向かって差し出す。
「お、おう」
と佐天が応じて、握るが疑問符を初春に投げかける。
「おし」
サソリは、印を結んでいた指を離して壁に右足の底をくっつけると吸盤にでも張り付いたかのように吸い付いて、左足も壁へとくっつけて普通に歩くように病院の壁をスイスイと垂直に上って行った。
「え、えっ!?どうなって!!」
「ふう、大分戻ったな。もう少し訓練は必要だが」
図らずも二人を見下ろす形となったサソリだが、唖然と口を開けている二人に首を傾ける。
「どうした?」
「それこっちのセリフ……まるで忍者みたい」
「忍だぞ……チャクラを足の裏に集めて吸着させている」
涼しい顔で答えるサソリ。一人重力を無視した佇まいに一同が冷や汗をかいていると……
「サソリさーん!そろそろ検温のお時間です……よ」
常識では考えられない姿勢(垂直に壁を二足歩行で登っている形)の受け持ち患者に看護師の顔がドンドン引きつっていくのが傍目からも理解できた。
「あっ……」
「サ・ソ・リ・さ・ん!!大人しく横になっていてくださいとあれ程言ったじゃないですか」
「一応、横になっているが。規則に壁に垂直に上るなと書いてないし」
「常識的に考えてありえないからですよ。登らないで降りてきなさい」
サソリは注意を無視してヒョイヒョイと壁を登り、とうとう天井までやってきて三人を見下ろす。
「降りたら怒られるのに、誰が大人しく降りるか」
子供のように腕を組んでプイと横に向くサソリ。
すると、左腕に付いている点滴の管から血が逆流し始めて、サソリの身体から血の気が失せていくのが見て取れる。
「ん?」
サソリは貧血となりチャクラの制御がままならぬようになり、ベッドの上へと自由落下で落ちてきた。
その後サソリは看護師と佐天、初春に自分の行いを責められたがサソリの興味は別のところにあるため聞き流す。
******
とある昼下がりの公園でブランコに乗りながら、景気よく自分の履いている靴を蹴り飛ばす黒髪の女性がいた。最初に出てきた物語の語り部「フウエイ」と名乗った女性だ。
蹴り飛ばした靴の着地地点を視覚で確認するとブランコから降りる。
「さて、明日の天気は?」
ケンケンと片足で跳ねながら自分の靴を見に行く。
「雨ですか……」
裏返しになっている靴に少しだけ元気をなくす。
「しかし、これから私の能力を使って『晴れ』にいたしましょう」
黒髪のセミロングの女性は両手を広げると、周囲の砂場から黒い砂が集まりだして、靴の周囲を取り囲むとフワフワと空中に浮かべ、靴の向きを正し落とす。今度は靴底が下になった状態だ。
「はい、晴れになりました」
パチパチと笑顔で拍手をすると靴を履いていく。そのような奇異な女性を何やら物珍しそうに周りの子供と学生がチラチラと見ていた。フウエイは周囲の関心が自分に向いたところで演説を始めた。
「このように能力があれば、明日の天気がコントロールできますね……はい?インチキだ?いえいえ、とんでもない、戦略の一つですよ。ここに集まっている人は見事に私の目論見に掛かりました。注意を引くという目的に……です」
フウエイは砂を集めて、手のひらでクルクルと球状に回しだした。
「あなたは、もし簡単に能力が手に入ったり、能力の性能が上がったりしたときに何に使いますか?私のように明日の天気を占いますか?いや、ここは」
フウエイは砂を人型に変えて、思い切り殴り飛ばした。
「日ごろの鬱憤を晴らすように暴れてみますか?……それはあなたの選択です。でも、能力が手に入った背景を知らないと大変な目に合いますよ……」
フウエイは袂から場違いな音楽プレイヤーを出して、イヤホンを耳にセットする。なにやら音楽を聴いているようだ。
そして、赤い髪をした人形を出すと。
「まあ、私の興味はサソリ様の活躍でございますが」
赤い髪をした目つきの鋭い人形を手にして抱きしめた。
「いよいよ、第1章の話へと進みましょう」
女性は人形に糸を飛ばして、赤い髪の少年を静かに動かし始めた。
第1章 幻想御手(レベルアッパー)編 始
学園都市には冒頭で述べたように超能力開発に力を入れている。しかし、超能力というのは個々人の才能に寄与することが多く。最初から高位能力者になれる者もいれば、思うように開発が進まずに低能力者の烙印を押されるものも少なくない。それによりランク付けされ暗黙の階級というのが存在してしまう。この世は形を変えても弱肉強食の理から外れることはなかった。そのため下位の能力者は1日でも1秒でも高位になる方法を模索し努力するものもいれば、いかに楽をして高位となるかを考える者もいる。それもいつの世も変わりない。
そんな階級に支配される、学園都市に突如として湧いた「幻想御手(レベルアッパー)」の情報。使用するだけで能力の威力が底上げされ一気に高位能力者に近づくことができるあまりに甘美な誘惑に我慢できずに手を出してしまう。
最初は、ネットで都市伝説というより単なる噂話に近かったが、実際に使用した者がいた。手に入れたという情報が入れば、多くの下位能力者は縋り付くように求め始めるのは、人の欲が及ぼす業に近い。
下位能力者による風紀委員(ジャッジメント)を狙った爆破事件を調べていく過程で、そのレベルアッパーの認知は急速に進む。
洋服のチェーン店を半壊に追いやった爆破犯は、その威力とはかけ離れた下位能力者であることが判明した。とても屋内を吹き飛ばすような威力のある爆弾を作ることなど到底できないということだ。
その名称も虚空爆破事件(グラビトン)、解決に尽力した風紀委員(ジャッジメント)の初春は、疲労が重なり微熱ながらも風邪の症状を訴えて自分の部屋で横になっていた。
今日も、御坂さんと会い、赤髪君の見舞いが予定に入っている。佐天は初春に安眠を提供するために家を出た。
公園で御坂と白井に合流すると、やはり昨日起こった爆破事件が話題に上がる。
公園で売っていたかき氷を買い、サソリが入院している病室へ向かった。
そこには、ベッドに横になりながらいつものように不機嫌そうな少年が点滴台を恨めしそうに弄っていた。
「どうしたの?」
「安眠を妨害された……この点滴のせいでな」
話を聞いてみると、昨夜サソリが寝ていると看護師がサソリの点滴が無くなっていることに気が付いて、交換をしたところでサソリは目が覚めてしまったらしい。
そのせいでうまく寝れずにイライラしていたとのこと。
子供か!?
「そんなことで……」
「オレにとっては大きな問題だ」
不機嫌さに加速をかけるように横を向く。
「まあまあ、お見舞いのかき氷を持ってきたからお姉さんと食べようか」
「……」無反応でそっぽを向く。
「全く素直じゃないですわね。私たちが来ないと本当にぼっちですわよ」
「うるせえ、ちび」
ピシっ!!
「このくそ生意気なお子様には、世界の果てにでも置いて来てやりましょうか」
再び白井がサソリの頭をぐりぐりしようと近づくが、サソリはチャクラ糸を飛ばして白井の腕を拘束した。
「ばかが、そう何度もかかるか」
勝ち誇ったかのように薄ら笑みを見せる。
チャクラ糸でクモの巣に掛かった獲物を狩るが如く青い光の糸で白井を巻き取っていくサソリに対して、白井は悪魔の笑みを浮かべて即座に座標計算しテレポートを発動し、チャクラ糸の束が空いた隙間を埋めるようにクターと萎む。
「!?」
白井が移動したベッドの反対側で白井とサソリが睨み合ったまま動かなくなり、即座に臨戦体勢となる二人の間に火花が散り始める。イメージ的には凶暴な猫と毒槍を折られた蠍の映像が浮かぶ。
「ハイハイ、おとなしくしなさい」
と手を叩いて御坂が睨み合う二人をなだめる。
「生意気な娘は嫌いだ」
「あら、奇遇ですわね。私もですわよ。たかが、一睡できないくらいで大騒ぎするようなお子ちゃまには私の魅力なんて到底わかりませんわ」
傀儡さえあればこんな小娘……
「そこまで!!」と佐天が両者の頬にかき氷をくっ付けさせる。
「「冷た!!」」
2人は目を見開いて行動を起こした佐天と氷を交互に見る。
佐天は満面の笑みで「かき氷買ってきたから、おいしいから食べましょうよ」
公園買ってきたかき氷を見舞いの品としてサソリの前に並べ始める。
「かき氷?」
「まさか、かき氷を知らないってことはないわよね」
「違えよ。オレのところにもあったし」
「さすがにそこまで田舎者ではないみたいね」
「ただ、食べるのは初めてだ」
う……何か触れてはいけない部分に触れてしまった気がする
「……あんた大変だったのね。よく耐えたわ」
なんかの勘違いをしたらしく、涙ぐむ御坂に背中をバンバン叩かれた。
体中の凄惨な傷跡を思い出して、更に悲しみに追い打ちをかける。
「ほら、量なんて気にしなくて良いからたくさん食べなさい」
「今回は、特別ですわ」
「はいスプーンですぅ……グズ」
「お前ら何か……」
「言わなくて結構。何かあれば暴力を振るわれ、寒い中をベランダに出され、今日生きていくのに必死で……虐待反対!!」
「そして、ひねくれた性格に……ああ、なんてかわいそうなんでしょう」
「よくここまで逃げてきたわ。えらいわ」
壮大な勘違いをしているが、面倒なので出されたかき氷をスプーンで掬って食べる。
「……氷なんて食って何になるかと思っていたが……意外に上手いな」
サソリは、元の世界では人傀儡として生きてきたため、物を食べることをしなくても生きていられた。しかし、人間の身となっては食べなければ生きていけなくなる。
思えば、人間としての生命維持義務を果たさずとも生きていけた。
サソリは、自分の生命力の強さにまあ感心した。
そして、頭に強烈な痛みが増して顔を伏せる。
「痛っ!!」
額の辺りに冷たい棒が射しこまれたような痛みに眼をつむって耐える。
「お、早速洗礼を味わいましたね」
「まあ、食べたことがないなら経験ないわね」
サソリは、何か自分の体に不調が起きたのかと錯覚したが、三人の様子を観察している内にこの原因というのが自身が握っている氷にあると察した。
「なんだっけ……アイスクリーム頭痛って言うやつでしたっけ?痛くなったら額にかき氷を当てると良いみたいよ」
と佐天がサソリの置いたかき氷を持ちサソリの額にあてた。
不思議と痛みが和らいでいく。
知識だけでは通用しない経験だ。
「そういえば、さっきの会話の続きだけどレベルアッパーの噂。サソリは何か知ってる?」
御坂がかき氷を口に含みながら言う。
「れべるあっぱー……?」
初めて聞く言葉に眉間にしわがよる。
「流石、お姉様!怪しい連中が持っているということで聞くなんて」
「違うわよ!サソリは一応、まあ、忍者だから術であるのかなって……簡単に説明すると、短時間で能力を引き上げることができる装置かな……サソリは何か知ってる?」
短時間で能力が上がる。
「無いことはないな……」
「そうよね、そんなに都合良く……ってええええええええ」
「そのれべる何とかというのは?」
「詳しくは知らないけど……」
佐天はレベルアッパーの情報を知っている限りのことを話してみる。
使用した者は自分の能力のレベルが格段に上がる。
しかも簡単に。
どこかの学者が遺した論文か。
料理のレシピか。
そして幻想御手(レベルアッパー)というものを使ったという人の書き込みがインターネットの掲示板にあるということ。
「ただ、都市伝説みたいな感じで」
サソリは少し考える素振りを見せると……
「何かリスクはあるか?」
「今のところは」
「……オレのところで短期間に術の性能が上がるのは、丸薬を飲むか、八門遁甲をこじ開けるかだな」
サソリは、残りの氷を掻き込んで言う。
「がんやく、はつもんとんこう?」
「薬を使ってチャクラを上げるのと脳のリミッターを意図的に外すということ」
「使うと」
「相応のリスクがあるな。力が強大になればなるほど身体の損傷が激しくなって、最悪の場合死に至る」
サソリの言葉に、白井と御坂は少しだけある情報が頭を過ぎる。
一連の事件に原因不明の昏睡状態に陥ってる学生がいるということだ。
サソリは融けて液体状になった氷シロップを飲んでいくと。
「別にリスクがないなら、使っていいんじゃねーの?」
「そういう訳にはいかないでしょ。もしかしたら危険性があるかもしれないのに……現に」
と言ったところで御坂がしまったと云わんばかりに口を押えた。
「現に……か。ということはお前らなんか知ってるな。それも悪い情報を」
白井が頭を抱えると口を押えている御坂より前に出ていく。
「まだ調査段階ですのよ」
「そうか、まあいいや……オレはそれがどんなものか知らねえし」
バツが悪くなった白井が御坂を連れて病室から消えていった。
後に残った佐天はイスに腰かけながらサソリの方へと顔を向ける。
「レベルアッパーってマジモンなの?」
「変な言い回しだな。あの感じだとありそうだな……」
サソリの病室に夕日が差し込んでくる時分だ。そろそろ病室の一般開放は終わりを告げる時間だ。
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