なんだかんだ言ってるけど結局の所、大天使様も〇〇なんだよね
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蓬莱の島々・弍
...ザザザザッ...ザザザザッ...
波の音が聞こえる...あれ?私、どうしたんだっけ...?あぁ、先輩のタイムマシンで...
「...おい!おい!あんた大丈夫かい!おい!」
うるさいなぁ...
「ちょいと!佐吉、医者呼んできなさい!」
医者...?
「わ、わかった母ちゃん!で、でもよぉ〜、こ、この女、海から来たし変な服装してるくないか...?」
海から来た?変な服装?
「いいからっ!さっさとおし!」
「お、おう!」
......私の意識はまた遠のいて行った...
「...ん...んんんっ...」
「おや?ようやく目が覚めたかね?あんた、真冬だってのに浜辺で倒れてたんだよ?」
私は浜辺で倒れてた?そしてこの女の人に助けられた?
「...あ、あの...先ぱ...もう一人男の人はいませんでしたか?」
「おいおい、あんた先に母さんに礼の一つでも言うもんじゃねーのかい?」
確かにその通りだと思う。私はまだこの状況が読み込めていない様だ。
「いぃんだ、佐吉。このお嬢さんは多分まだよく解ってないんだよ。何がなんだか。」
この女の人は40前後だろうか?佐吉と呼ばれる男の子は10歳位に見える。
「その...ありがとうございました...。唐突で申し訳ないのですが今年は暦では何年ですか?」
私はタイムマシンで過去、戦国時代に飛んだはずだ。ここで何年か聞いておくのはいいことだろう。
「はははっ!面白い事を聞く子だねぇ。今は正親町天皇の永禄10年だよ。ちょっと前に織田の殿が美濃の国を手に入れたそうだよ。」
ということは1567年あたりってことになるわね。
「あの...ここは何処の国ですか?」
今自分の居る場所を把握しておいた方がいいと私は判断した。
「ここかね?ここは蝦夷地の徳山館...蠣崎李広様が収める天皇様の国の最北端だよ。」
蠣崎李広...確か戦国時代に東北の大名にたくさん娘を嫁がせ、家の基盤を作ったと言う...?
「李広様はとても良い方なんだぜ!俺、この前『コンフェイト』っていう甘い物貰ったんだぜ!これがうまいのなんの!」
確かコンフェイトとは金平糖のことだったと思う。だけど、蠣崎氏にこの時南蛮の物がそう易々と...?
「コンフェイトは南蛮の物ですよね...?」
すると二人は少し驚いたようで
「そんなことは当たり前じゃないかい。あんた、南蛮の物、初めてかい?」
いや、初めてではない。ここに南蛮の物が有るのが不思議なのだ。
「...いえ。ここは南蛮の物がそんなに出回っているのですか?」
すると佐吉は笑いながら
「あったりめぇじゃねーか!ここは南蛮貿易の最大拠点なのよっ!まぁ、密貿易なんだがね」
蝦夷が南蛮貿易?私的に佐吉君が知ってるなら密貿易でもないような...
...ドンドンドンッ...!
おーい!雅殿!居られるかね?
そう言って初老男性のような声が聞こえてきた。
「これはこれは...李広様、よぉおいでくださいました...」
「わぁ!李広様だっ!」
この男性が蠣崎李広...!
「いやぁ乳母どの、浜辺に航客が流れてきたと言うから慌てて見に来たぞ!もしやこの娘が航客か?」
航客?私のことなのだろうか?
「はいそうでございますよ。」
雅さんが言うならそうなのだろう。
「おぉ!そちが航客か!いやぁ、是非そちの国の話を...といかんいかん。騙されんぞ、乳母どの!航客ならなぜ話がつたわるのだ!」
話が伝わる伝わらないって...日本語じゃん...ってあれ?よく考えたら未来の日本語と、よく似ている...
「いえ、間違いありませぬ。この服を見てくだされ。」
そう言って私の干していたであろう服を李広に見せた。
「まさしくこれよのぉ...。わしが10の頃見たのとよく似ておる...。そなた、名はなんと言う?」
私の名前?昔にも未来人が来たのかしら?
「...鈴下 雪乃と申します...」
とりあえず目上の人に接するように丁寧に挨拶しておく。
「ほう...姓名もちか...。ふむ。では雪乃、わしに仕えると良い!航客は国に利をもたらす。古来よりそう伝わっておるでな」
航客が国利を?
「申し訳ありません、航客とはその...なんなのでしょうか?」
私がきくと、
「悪い悪い、航客とはの。この蝦夷よりはるか北、世界の果てより来たる者の事じゃ。帝がもっておわす、天映球...それを使った反動で外界との道ができる...雪乃よ、そなたはこれに巻き込まれてしまったのじゃ。」
天映球...世界の果て...外界...わからない事ばかりだ。
「とりあえず、館へ行こうではないか!そなたには追って屋敷を与える!」
初対面の人間に気をゆるしすぎではないかな?私はちょっぴり不安になる。
先輩、どうしてるかな...
「では乳母どの、またな!佐吉も母様を困らせるんじゃないぞ!」
「うんわかった!」
雅さんの家を出るとそこには馬が止まっていた。
「そなた、馬は乗った事あるかね?悪いがわしと相乗りだが...それっ!」
ぐいっと私の右手を掴んで軽々馬に私を乗せてしまった。
「では行くぞ!それっ...!」
ムチの音を鳴らして馬が走り出した。漆黒の若い馬のように私は見えた。
ヒューーーーーッ...ズズッ...
「うっ...」
李広さんが馬から落ちた!
「大丈夫ですかっ!?」
「そなた、気をつけよ、奴らが来る...!」
李広は右胸に矢が刺さっていた。致命傷ではないものの、急がなければ危ない。
「頭、イキの良さそうな娘がいますぜぇ...」
「ぐははっ!この殿様をいたぶったあと、ゆっくり可愛がってやるとするか...!」
山賊の様な男3人が李広に近づく。
「ていっ!」
私はとっさに空手で鍛えた突きを放っていた。
「...ってぇな!お前ら、男は後だ、縛っとけ!まずはこのクソ娘からだっ!」
そう言って刀で切りかかってきた男を私は避けながら...
「そこの者っ!動くな!父親から離れろっ!」
若い青年の声と数十の甲冑の音が聞こえてきた。
「...くそっ、ひけっ、」
山賊達は逃げて行った。
「父親っ!大丈夫ですか!遅れながら慶広、参りましたぞっ!」
青年が李広に走ってきた。
「...うむ。大事ない。雪乃殿のおかげだ。」
「おぉ!そなたは航客の!よくぞ...よくぞ父親を!...感謝致す!」
私はとっさに体が反応しただけなのだが...
「慶広さまぁ!た、大変でございまするっ!安東様が攻めてまいりました!」
安東家、確か蠣崎家とは主従関係じゃなかったかな?
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