とんだ妖怪
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2部分:第二章
第二章
「ではです」
「はい、早速祓われますね」
「いえ、新さんに会わせて下さい」
これが魏参の言葉だった。
「そうさせて下さい」
「新にですか」
「御願いできますか」
「構いませんが」
いぶかしみながらもだ。王単は頷きだ。
そのうえで彼を新に合わせた。屋敷の中は行き来するだけでも結構歩く。庭は整えられ屋敷の中も赤と白で奇麗に飾られている。
その屋敷の中を歩いたうえでだ。その娘の部屋の前に来る。その部屋の中からだ。
呻き声が聞こえてきた。その声を聞いてだ。王単は項垂れ溜息と共に言った。
「こんな有様なのです」
「ふむ。これは」
「どう思われますか?」
「犬の様ですね」
そうした感じだというのだ。
「さかりのついた犬の如くですね」
「やはりそう思われますか」
「犬の様です」
魏参はこう言うのだった。部屋の扉を見ながら。
「しかも一匹ではない感じですね」
「常にああして滅茶苦茶に暴れているので」
「左様ですか」
「困ったことです」
「わかりました。では」
「はい、新をですね」
「呼んで頂ければ」
魏参がこう言うとだった。早速だ。
王単は扉に向けてだ。こう言ったのである。
「おい新」
「あっ、はい」
扉の向こうからだ。驚いた様な声が返って来た。その瞬間呻き声が一つになった。
「何でしょうか」
「出て来てくれるか」
「わ、わかりました」
その声に応えてだ。慌しくだ。
背の高い奇麗な女が出て来た。服がいささか乱れている。
その彼女が来てだ。こう言ったのである。
「あの、それで」
「うむ、実はだ」
王単はその女にだ。魏参を指し示して話した。
「この方がだ」
「女の方ですか」
「いや、男の方だ」
ここでまたこの話になった。
「この方は道士なのだ」
「道士の方ですか」
「娘の憑きものを祓いに来た」
こう新に話すのだった。
「その為にお呼びしたのですか」
「そうですか」
「そうだ。それで娘は」
「お嬢様は今も」
「そうか」
新は悲しい顔で述べる。その顔を見てだ。
魏参はその顔にだ。何か演技めいたものを見た。
だがそのことについては何も言わずにだ。こう新に尋ねたのである。
「それでなのですが」
「はい」
「お嬢様はどういった状況でしょうか」
「暴れられ。そして叫ばれ」
「生のものを召し上がられてですね」
「かなり危険な状況です」
王単と同じことをだ。新も述べる。
「本当にどうなるか」
「わかりました。それではです」
「お祓いをでしょうか」
「準備をします」
その用意をだとだ。魏参は述べてだ。
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