学園黙示録ガンサバイバーウォーズ
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第六話
あ~なんだ。いま起きている状況を説明するぜ。今日一日で世界が崩壊。この世界で初めて生きた人間を殺して、止めの一発にエロゲーのイベントが起きている。もう、色々とカオス過ぎてどうツッコんでいいか俺自身よくわからん。
小室は現在、鞠川先生を運んで下のベットに寝かせにいっている。その後は宮本も酒によって小室に絡んでいる。なんというか、小室ってけっこう女性に対するトラブルが多いんだなと思った。
「ええええ!?」
小室の驚く声が聞こえた。気になり、階段を降りて一階に行くと……は?
「どうした?」
毒島……お前なあ~。俺はお前に対する認識がかなり変わってしまいそうだよ。だってなあ~。
「どうしたも何も、ツッコミを入れる気力も起きねえよ」
だってお前……。何でリアルで裸エプロンの格好になってんだよ。何処のエロゲーかAVかと思うほど素直な男なら「よっしゃー!」と叫ぶべきか?それとも本気でツッコミを入れた方がいいのかと思うほどに、衝撃が強すぎる。
ちなみに毒島の下着は黒だ。似合うと言うべきか、それとも過激というべきか……そういえばクラスの男子仲間で、毒島に裸エプロンで出迎えてもらいたいと馬鹿な話をした記憶があるが、どうやら俺はその男子たちの夢をかなえたようだ。
「実は、私のサイズに合う服がなくてな。洗濯が終わるまでこれで代用しているのだ。はしたなさ過ぎたようだな。すまない」
「い、いえ。そんなことは……」
だったら鼻と股間を抑えてないで、堂々と言え小室。まあ思春期な男には、色々と刺激が強い格好を見ればわからなくもないな。
俺は、何というか前世の影響なのか。確かに目福と感じる光景かと思うが、小室ほど感情を表に出すほど興奮はしないんだよな。なんか前世で女性に対して半分幻滅した経験があるからだろうな。
俺は一応、前世でも若いころは女と関係を数度ほどもった事がある。だが基本的に長続きしなかった。まあ、過去の俺は女性を見る目がなかったとしか言えなかったな。何しろ美人でスタイルが良いという事もあり話をかけて、何とか顔を覚えてもらおうと当時は必死になり、付き合う関係まで発展したが、関係を持って一年を待たずに破局した。
原因は、女の浮気だ。俺は基本手に尻の軽い女と何度もあたって女は、ブランドとスイーツだけあれば良いという感じで男は財布なんだと俺は、そう思ってしまった。その事もあって俺は、女性不振に陥って、それから基本的に最低限話はするが、ある一線を超える関係は築かないと決めるようにした。
まあ、そのおかげで、前世は四十を過ぎたいい歳になったおっさんになっても結婚願望がなくて独身のままで終わってしまったが、この転生した世界でも女性に対する認識は変わりはない。基本的に必要とあれば会話もして助けはするが、ある一線を超える関係は築かない方針は崩していない。
「そ、その。いつ<奴ら>が来るかもわからないのに……」
「君達が警戒しているからな。評価すべき男には絶対の信頼を与える事にしているのだ。私は」
評価すべきね。随分と信頼されているだな。小室も照れくさそうな仕草をしており、毒島の言葉をまんざらでもない様子だ。
そういえば階段で宮本が酔いつぶれていたな。さっきから小室の名前を叫んでいる。毒島は、小室に対して、女は時として弱く振舞いたいから見てやれとアドバイスを送った。
ーーー。
俺はあれから銃の点検をしている。今回のように、安心して銃の整備ができる所も限られてくるし、出来るうちにやって置くことににしている。現在は、みんなそれぞれの役割をこなしている。毒島は明日の朝食と今日の夜食の準備に、タカトさんは、寝ているアリスちゃんを安心させるように一緒にいる。平野は上で外の監視を続けている。いま言った意外の連中は酒に酔って寝ている。小室は宮本を安心させるために一緒にいる。卓造も小室と理由は同じだ。
そして俺は銃の点検だ。現在、俺が使用している銃以外も家の中にある。この部屋にあった銃ではなく、あの秘密工場で入手した武器だ。
タボールTAR21、モスバーグM590、MP5SD6、FN FAL、ブローニングハイパワー、SIGSAUER P220である。拳銃も基本的に9mm口径に統一している。ハイパワーを除いてSIG社のP220にしたのは、マガジンがシングルカラムだからだ。装弾数こそハイパワーより少ないが、ダブルカラムマガジンを採用している拳銃は、基本的にグリップが太い。現在、俺が一緒にいるグループが女性陣が多い。グリップが太いと女性には撃ちにくいと判断して俺がシングルカラムを採用しているP220にしたのだ。
とにかく、このように安心した環境で銃の点検が出来るのは有賀い事だ。学校から今に至るまで、かなり銃を使用してきて問題なく作動したが、いつ作動不良が起きないように念入りにチェックする。これで弾が飛ばなければ、アサルトライフルやバトルライフル等は鉄の槍やこん棒に成り下がり、拳銃は鉄くずに変わるのだ。生き残るためには、このように自分の武器に対するメンテナンスは欠かさないようにしないといけない。
そうやってチェックを続けていくと、犬の鳴き声が聞こえた。俺は嫌な予感がしたので、TAR21にマガジンを装着して、二階のベランダに向かった。
そこには、先に到着した小室と、監視を続けていた平野がいた。小室と平野は、ベランダから外の光景を睨み付けるように見ていた。
「畜生。ひどすぎる……」
気分は悪いわな小室。何しろ外では犬の声で引きつけられた<奴ら>から逃れよとしている人はいるが、明かりのついている家に逃げ込もうとするが、結局は家に入れず<奴ら>の餌になっている。
あ、いま深刻な問題に気がついたわ。
「明かりを消すぞ。今すぐに」
「ど、どうしてですか田中先輩!?」
「襲われている者たちは、光と人のいる所に群がってくるという事だ。」
いつのまにか毒島がいた。真剣な表情で言っているが、裸エプロンの格好で悪いが、色々と台無しだよ。と、今はそんな事にツッコミを入れてる場合じゃないな。
ここで叫び声を上げてこっちに来たら<奴ら>も一緒に、この部屋に群がってくる。そうなったらマンションの通路は<奴ら>で満杯になって逃げ場がなくなる。それで銃でぶっ放して撃退しても、更に下にいる<奴ら>が音を聞きつけて群がって、俺達は弾がなくってゲームオーバーだ。
「なら、助けないと!」
「ダメだ。撃ったら<奴ら>が群がってくるぞ」
「そ、それなら銃声が聞こえないサイレンサーっていう装備をしている銃が確かあった筈ですよ!それを使えば!」
「サイレンサーって言っても確実に銃声が遮断されるわけじゃない。機関部の作動音とかが響く場合もある。仮に一人助ければ、また更に<奴ら>に襲われている人が俺達を助けてくれと求めにくる。明確な目的を持たない奴を何十人も抱えて率いていけるほど、今の俺達には、そんな余裕はない」
「っ!!」
小室は納得しない表情で俺に睨みつけてくる。
「田中君の言う通りだ。我々には、彼らを助ける力はない。彼らは自分の力で生きていかなければならないのだ。我々がそうしているように」
「先輩達は、もう少し違う考えだと思いましたよ」
「間違えるな小室君。私は現実がそうだと言っているだけだ。それを好んでなどいない」
そう言って毒島は一階の方へ戻っていった。俺達三人だけになって気まずい。毒島と同じように小室になんだかんだ言って注意してしまったからな。
「すいません田中先輩。俺、あまりにも周りが見えていませんでした」
お、意外にも素直に謝ってきた。そして本当に申し訳なさそうな表情で誤ってくるので、俺も少しは気持ち的に楽になった。
「まあ、誰だって理性だけで動くことは出来ないさ。お前が気にする必要はないよ小室」
「ありがとうございます。でも、これからどう動けばいいんだろう。」
外は<奴ら>で満杯だ。<奴ら>の声に犬の鳴き声のオーケストラに、俺は少しうんざりする。
「動かない方が適切だ。こんな<奴ら>が集中している状況で、安全に車に乗り込める状況じゃないしな。橋はまだ封鎖されているし、橋には<奴ら>が群がっているし、無理にいく必要はないさ。夜はライトがあっても視界に制限が、かかるからむやみに動く事はやめといたほうがいい。今日はこのマンションで朝まで過ごそうぜ」
「その方がよさそうですね」
「僕も、そう思います。」
二人は納得した表情で呟く。とはいえ、マンションの柵のお蔭で<奴ら>の侵入が防げるとはいえ、まだまだ安心できないな。長い夜になりそうだ。
ーーー。
あれからみんなは就寝した。色々とあって疲れが出たんだろうな。まあ、俺は一応、監視の事もあってまだ起きている。ベランダの外でデスバレットの購入システムで購入したウイスキーを飲みながらである。デスバレットで購入した酒は、VR技術で味が再現されて何杯も飲むと、『酔い』というバットステータスがかかって移動制限がかかる。
特にステータス恩地があるアイテムではないが、経済事情で高い酒を買えないプレイヤーが好んで購入して馬鹿みたいに飲むプレイヤーが多く。以外にも酒は人気商品であった。
この世界に来ても味は最高であり、俺は寮に住んでいる間でも先生達に見つからないように飲んだものだ。
「とはいえ。夜景の眺めが最高ならもっと美味いんだろうけどな」
下の状況が<奴ら>だらけじゃ、夜景の光景も台無しと言ってもいいよな。
そのとき、部屋から足音が聞こえて、俺は近くにあったTAR21に手をかけて安全装置を解除した。
「なんだ。お前らか」
「先輩……」
足音の正体は卓造とナオミであった。紫藤のマイクロバスから俺達についてきた物好きなカップルだ。
「眠れないのか?」
「い、いえ。そういうわけでは……」
「だったら明日に備えて寝たほうがいいぜ。今日のように安心して眠れる環境が明日もあるとは限らないからな」
「そ、その……」
どうやら何か深刻に悩んでいるそうだな二人は……
「すいません。先輩たちは明日は車で外に向かうなら、俺とナオミは、この部屋に残ります!」
そして隣にいるナオミも同じように頷いた。まあ、いつかは誰かはこうなると思っていた。何しろ今日だけで、この死体が動いて人間を食らい、食われた人間も死体もどきの仲間入り。それが世界中で起きており、こんな非日常で明確に目的をもって外で行動しようとする者もいるが、今回のように部屋に籠って安全を確保したいと思う輩も現れる。
そう目先に安全な場所があるなら、ここでじっとするという考えにいたる奴らは沢山いる。外にいる連中を見捨てて自分の命を確保しようとする光景は、嫌というほどベランダから見たからな。
「いいのか?自衛隊や警察が助けがくる保証はないぜ」
「それでも。俺もナオミも、小室達のように動けない。あの時は紫藤達に洗脳される事を恐れて、小室達について行きましたが、でも……俺とナオミに小室達のように割り切る事が出来ない」
紫藤の異常性には気がついて俺達について来たのはいいが、外に出れば<奴ら>以外に人間も相手にしなければいけない。それが嫌なら部屋に籠ろと考えたわけか。
「ついていけないなら俺は構わない。こんな状況で半端な気持ちでついてこられても、俺達が迷惑だからな。まあ、渡した武器はお前達にくれてやる。最低限、それで自分の身くらいは守りな」
俺はそれだけ言って後は、もう話す事はないと酒を飲むことを再開した。正直いって、この異常な世界で正解を選択していると俺も分からん。卓造の選択も俺は反対だが、ひょっとしたら正解かもしれないし、外で行動するという事は、それだけ<奴ら>と戦う機会も増えてくる。
もう、俺達は戻れないのだ。この壊れた世界で、確実な正解など存在はしない。その選択を移したからには、命をかける。それが、この世界で生きていくうえでのルールだ。
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