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天才小学生と真選組の方々。

作者:沖田
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新たな犠牲者と生贄

私がデータベースに(違法な方法で)アクセスしてから二時間ほど経った頃。
捜査は…これといった目新しい発見はなかった。というよりも、全く進んでいなかった。神威の心理がわかったところで、神威のもとに「お前はこれこれこう言う心理なんだな!」とか言って乗り込むわけにはいかないし、これから何か調べようと思ってもこれ以上の手がかりがない限り調べられないので、みんなはやる気を無くし、トランプなんかしたり、今流行りの「〇〇から始まるリズムに合わせて〜」や「指スマ」をやったりと随分余裕のある過ごし方をしていた。
そんなほのぼのしている間に、事件は起きていたのだった。

「今回の被害者は、この人だ」
目暮警部がそう言って指差したのは、まだ20代くらいの男の人だった。苦しそうな顔をして亡くなっていた。
「そして、傍にはこれが」高木刑事が小五郎さんに紙切れを渡す。「意味不明のことしか書かれてませんが…毛利さん、わかります?」
「うーん…」毛利さんが紙切れを見つめて考える。「誰について書いてあるんでしょうか…」
誰について?なんて書いてあるのだろうか。
「歩美たちにも見せて!」「早く貸してくださいよ!」「おせーぞおっさん!」
「うるせぇ!小僧どもは黙ってろ!」小五郎さんが怒鳴ると、子供達は静かになる。
「これは子供が見るものじゃないよ」と高木刑事も優しく言い、毛利さんから紙を受け取ると、私たちに言った。「あ、あなたたちも見ますか?どうぞ。」
土方さんが受けとり、みんなでその紙を囲むようにして覗き込む。
紙にはこう書いてあった。
〈生まれながらに強くならなければならなかった男。その男は、自分を本当の子供のように育ててくれた師を自らの手で殺した。
 喧嘩など縁もゆかりもない少年。その少年は、男に拾われた。
 幼くして母を亡くし、兄も無くした少女。
 最愛の人を亡くした男。
 最愛の姉を亡くした少年。
 強さゆえ、「姫」と呼ばれた少女。その少女は、姉を亡くした少年を傷つけた。
 全国の悪党よ、ハンターよ
 少年を傷つけた少女を許すな
 懸賞金一億。少女を捕まえろ。
 生け捕りにできればどんな乱暴な手を使っても良い。
 生け捕りにしてこちらにもってこい。
 我々は必要な時にいる。そちらからこちらに来る必要もない。
 少女を捕まえれば、莫大な金と、権力を与えてやろう
 その少女に法の裁きを受けさせよう〉
自分でも手と足が震えているのが分かった。みんなの視線が私に集まっているのも。
「これは俺たちのことだ」旦那が静かに言う。「ザキと近藤さんは入ってないが、その他は俺たちのこと。最後の少女ってのは…」
「私」私は震える声で言う。「私。総悟を傷つけたのは、私」
余計なことまで言ってしまった。すぐに後悔をする。
「恋奈」総悟が言う。「お前に責任はないでさぁ。」
私は頷く。でも、心ではそんなこと思ってなかった。総悟のお姉ちゃんのミツバさんが亡くなったのも、総悟が傷ついたのも私のせい。心では分かっていた。これ以上の犠牲者を出さないためには、私が生け捕りになるしかない。
「恋奈、まさか…」神楽ちゃんが涙目で言う。「自分から生け捕りになりに行こうとか思ってないヨロシ?」
「しょうがないでしょ、私が生け捕りになれば、これ以上の犠牲者は出さない。この手紙はそう言ってる。行かないと。これ以上私のために人が死ぬのを見たくない。」
「あのな」旦那が私に木刀を突きつける。他の人が動揺し、後ずさった。「こいつの命無駄にするわけにいかねぇだろうよ。こいつがもしお前のために亡くなったんだとしたら、お前が死んで天国いったらこいつはどう思う?『俺の魂無駄にしやがって』って怒るだろうよ。そうならないためにやることは一つ。こいつの屍踏み台にしてでも、おめーは生きなきゃなんねえんだよ。」
確かに。旦那の言うことはもっともだった。言い返す言葉もなく、私はただ頷く。
「とにかく、だ」目暮警部が咳払いをして言った。「これまでに殺された3人、そして今殺された1人を合わせて殺し方が同じだったことから、すべての殺人の犯人は同じと考えていいだろう。一刻も早く犯人を捕まえることが最優先だ。」
私たちは頷く。その時だった。
「これが4人目の被害者かぁ〜。俺と同じくらいの年齢じゃない?こんな年で早死にするなんて、この男の人も運に見放されたのかなぁ。ねぇ、阿伏兎?」
後ろから声が聞こえる。と、遺体のそばにしゃがみ込んでいるのは神威だった。その周りには、先ほど会った時と同じメンバー、阿伏兎、高杉、また子、万斉が思い思いの格好で立っていた。
「そうだな、団長」言ってから、阿伏兎が周りを見渡す。「しかしよ、団長。こんなサツがうじゃうじゃいるとこに無防備な格好で入っちゃっていいのか?」
「大丈夫だよ阿伏兎」神威は立ち上がって、満面の笑みを受かべる。「だって、ここには子供たちがいるじゃん。それに一般人も。だから、警察も迂闊に手出しできないよ」
「なぁお前ら」旦那が高木刑事から紙切れを取り、神威たちに見せる。「これ書いたのお前らだろ。」
神威たちはじっくり紙を見つめていたが、違うよ、という風に首を横に振った。
「こんな馬鹿なことするわけないだろ」高杉が言う。「俺たちだったらこんなことしないですぐに捕まえに行く。」
「それに」阿伏兎が続ける。「俺たちのところにもそれに似たものが来てたしな。」
と言って見せられたのは私たちが持っている紙と同じような紙切れ。そして内容も同じだった。
「これが来てる以上、僕たちは犯人じゃないよね?じゃ、僕たち急いでるから!」と、前回と同じように神威たちは行ってしまった。
「あいつらも怪しいな」平次君が言う。「あの紙が自分たちのところにも来てるとか言ってたが、嘘の可能性も…」
「いいえ」私は静かに言う。「神威たちは今回の犯人じゃない。」
「なんでお姉さんはそう思うの?」きっぱりという私を不思議に思ったのか、コナン君が聞いてきた。
「夜兎のカン。」
私は静かにそういった。事件は迷宮入りしそうだな、と思いながら。 
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