ホワイト=バレンタイン
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第三章
女の子の人数分貰っていく、そのうえで言うのだった。
「何かな」
「本当に義理だな」
「バレンタインだからあげるって感じの」
「ガチ義理チョコだな」
「いいチョコは本命さんに貰ってね」
「私達もそうしてるから」
「義理でもチョコはチョコよ」
こうかなりなおざりに言う女子連中だった。
「貰えるだけいいでしょ」
「だったら有り難く受け取ってね」
「お礼は三月にマシュマロかキャンデーね」
しっかりとお返しのことも言ってだ、そのうえで。
バレンタインの儀式の一つを朝のうちに済ませた、それから。
授業と昼食の時はそのまま普通に過ごしてだった、由美子と朋美は。
放課後の吹奏楽の部活が終わってからだった、二人で部室を出て話した。
「じゃあね」
「今からね」
朝とは違い真剣な感じで話す。
「お互いにね」
「彼氏にチョコレートあげましょう」
その手作りのそれをというのだ。
「力込めて作ったのを」
「そうましょう」
こう話してだった、二人はその日別れてそれぞれの彼氏のところに向かおうとした、だが。
雪は朝の時よりさらに積もっていた、もうバスも電車も止まりそうだった。そうした記録的な大雪だったので。
由美子は朋美にだ、眉を曇らせて尋ねた。
「あげるのはいいにしても」
「それでもね」
「後よね」
「ええ、どうしたものかしらね」
「家、帰られる?」
「歩いてになるわ」
朋美は由美子に答えた。
「絶対にね」
「私もよ、バス通学だけれど」
「お互いにね」
「バス停まってるわね」
「そうみたいよ」
朋美は携帯を出してそこから気象情報を調べて答えた。
「もうね」
「そうなのね」
「電車もね」
そちらもというのだ。
「交通はね」
「マヒ状態ね」
「やれやれね」
「それで佳彦君まだ学校にいるの?」
「彼も部活があるから」
「こっちもだけれどね」
「今から連絡して渡すわ」
そうするというのだ。
「これからね、ただね」
「問題は渡した後ね」
「どうして帰ろうかしら」
「歩いてしかないわね」
朋美はその細い眉を顰めさせて由美子に答えた。
「結局は」
「やっぱりそうなのね」
「どっちにしても今から帰るにしたら」
「バス停まってるから」
「歩いて帰るしかないわ」
この選択肢しかないというのだ。
「覚悟決めてね」
「それじゃあね」
「渡さないで帰るなんて考えてないでしょ」
「それは朋美と同じよ」
これが由美子の返事だった。
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