その手で引き金を引け!!
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第九章 長い長い一日
第八話 長い一日6
見えない武器を避けることは三輪には難しい。
ユウは楽々避けるが、彼だけはうまくいかない。
すでに左腕を斬られている。
二人は待っていたのだ。仲間が来るのを。
ユウはメテオラを頭上に出して、全体を攻撃した。
火力で押し始めたように思えた。
見えない武器を使うティナは、武器を身の回りに集め、ガードしようとした。
爆発して煙がたつ中、ティナは視界の端にトリガー使いをとらえた。
三人のトリガーはティナに白い粉を撒いた。
白い粉とは小麦粉のこと。
三人のトリガー使い(米屋、奈良坂、古寺)は、攻撃はせずに距離をおく。
彼らの狙いは武器に色を付け、識別すること。
メテオラを防ごうと集めたのが、仇になったのだ。
「三輪、今だ!!」
正直、小麦粉などすぐに武器から落ちてしまう。
一瞬さえ見えれば良かったのだ。
三輪の鉛弾が武器を撃つまで時間があれば。
見えないせいで攻撃を避けることに慣れていない、という推理が当たった。
八本の武器に鉛弾がつく。
「貴様っ!!」
米屋とユウに奈良坂と古寺の集中攻撃に、武器は重さ故に対処できない。
特殊という強みを失い、無様に斬られたティナを三輪は見下すように眺める。
「見えない武器か・・・ユウさーん、あれの仕組みなに?」
米屋は好奇心に流されるまま尋ねた。
ティナを捕まえるのが先でありながら、ご丁寧に答えるユウ。
「武器の色が黒だからな」
「・・・?奈良坂、全然わからんねぇ」
「真の黒は見えないんですよ、米屋先輩」
古寺で親切に答えた。
そう、真の黒は人の目には認識されないのだ。
無駄のないうまいトリガーの作り方をしている。
ユウはティナに目を戻した。
聞くべきことはたくさんあるが、今は捕まえるだけで良かった。
「はっ・・・誰が捕まるか!!」
ティナは立ち上がると姿を消してしまった。
レーダーにも映る訳もなく、熱の識別もないまま、跡形もなく消えたのだ。
三輪は激怒した。
「なんだと!?何故消えた!!」
「三輪、落ち着け。地の利が我々にはない。
むやみに追うな。」
ユウはそう言いつつ、内心舌打ちをした。
熱光学迷彩がこの国にあったことを理解が出来ただけ、良いとしよう。
カメレオンも似た仕組みなのだろうから、あってもおかしくない。
「他のやつらは・・・」
「如月は無事らしいぜ?歌川から連絡があった。
風間さんは・・・わからんねぇ」
米屋がそう言った瞬間、建物の一部が吹き飛んだ。
黒トリガーだ、と感じるぐらいの威力で。
何が起きたのか、誰しもがそちらを見た。
そこに風間がいることを確認し、誰しもが驚いた。
「風間さんが・・・負けた・・・」
風間のトリオン体はすでに破損。
生身になっているのがわかるが、助けようにも距離が遠すぎた。
奈良坂は狙撃しようとした。
それより早く、眼鏡の少女が二人の間に割り込んだ。
風間を抱え、こちらに走ってくる。
「私が食い止めるから、逃げて!!」
「貴様も近界民か?」
「・・・早く風間さんを連れて。遠征艇で逃げて。」
彼女を追うように現れた歌川と菊地原。
菊地原は如月を抱えている。
かなり顔色がよくない。意識も薄い。
弓使いのトリガー使いはそんな如月を狙っているらしく、菊地原はそれに気づいた。
距離を置いたら撃たれてしまう。
「早く!!私は黒トリガーだから大丈夫!!」
「でも・・・」
ユウは気絶した風間を抱き上げ、菊地原の手を引いて走り出した。
他の全員がそれに迷いながら、シンクを置き去りにしていく。
最後まで迷った三輪は米屋に手を引かれた。
遠征艇までたどり着くと、ユウは全員が乗ったことを確認して、遠征艇を下りた。
歌川は遠征艇に『強制送還まであと60秒』という設定を見つける。
「まさか、はじめからそのつもりで」
菊地原の質問にユウは欠伸で答える。
「本来、俺は首が飛んで今はいない。
今からそうなるだけだ」
「自分勝手で傲慢だね」
「・・・これ以上シナリオに関わる気はない」
三輪はユウの後ろ姿を見つめた。
大切なもののために、そうする未来もあるのだろうか。
~~~~
俺は如月から貰ったトリガーを使う。
如月には俺のトリガーがある。
鬼怒田さんが怒りそうだが。
弓使いと黒トリガーの戦場に足を踏み入れ、体で感じた。
自分が後悔をしていないこと、自分がここで終わることを。
「できれば、二つを揃えたかったんだがな」
「残念だな。風間より本命は如月の頭か?」
「知っていながら風間とあの女をワンセットにしたのか。
嫌な奴だな」
嫌な奴は貴様だろう、と言いたいが押さえた。
挑発などこいつには無駄に過ぎない。
シンクの横で武器を構える。
「私、如月さんの代わりにはなれませんよ?」
「・・・本来ならお前に恋してたのさ。
代わりより・・・生まれ変わったら愛してやる」
「華麗に散りましょう・・・この地で」
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