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ハイスクールD×D~黒衣の神皇帝~ 再編集版

作者:黒鐡
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補習授業のヒーローズ
  祐斗とレイヴェルによる現状把握×悲しみを乗り越える強い気持ち

中級悪魔昇格試験日から、二日程経過した昼頃。僕、木場祐斗はグレモリー城のフロアの一角にいたが、グレモリー城は慌ただしくなっていた。使用人の方々を始めて、グレモリーの私兵も慌ただしく動いている。理由は現在冥界が危機に瀕している事だ。ずっと警戒されていたはずなのだが、冥界中にドウターゲートが大量出現した事がきっかけとなった。

ちなみにここにいるのは僕以外だと黒歌さんとイリナさんとレイヴェルさんがここにいるが、アーシアさんや小猫ちゃんの側にいる。朱乃さんと部長は部屋に閉じ籠っている。小型から大型ドウターの群れが冥界に出現し、各重要拠点及び都市部への進撃を開始した。フロアに備え付けられている大型テレビでは、常にトップニュースとして、進撃中のドウターを映し出していた。

『ご覧下さい!突如現れた門が開かれたと思えば、大量のドウターと思われるモンスターが出てきました!このまま進めば都心部へ向かいますが、これがあの創造神黒鐵様からの警告だったのでしょうか!?』

魔力駆動の飛行船やヘリコプターからレポーターがその様子を恐々として報道している。冥界中に出現したドウターゲートにより大量のドウターが現れた。全部合わせると一万から百万体はいるらしいが、小型から超大型がいて超大型は全長百メートルあると言うらしい。超大型は一体だけだが、容姿は門の番人とも言われるゼットンと言われる奴だ。

「テレビにもそれら全ての様子が克明に報道されているようですね、チャンネルごとに各ドウターの様子が見れるだけでも有難いですわ」

「レイヴェルさんはさっきから何をしているのかな?」

「情報収集をしている所ですが、今の所大型ドウターが百から千体いますが中型と小型を合せば百万体います。四足歩行もいれば獣のようなタイプがおりますし、一番厄介なのはドウターゲートが開いている状態のままですかね」

「あの門は事実上、一誠君が閉ざす役割だったよね?『ですが今はいないので、別の対策を打っている所です』そうだね、今は一誠君がいないのであれば別で閉ざせればいいんだけどね」

レイヴェルさんはパソコンをしながら、僕との話し相手をしてくれたけど黒神眷属としてきっちりと仕事をしている様子だ。冥界政府は創造神黒鐵様の予言や言い伝え通りになったと言い、モンスターの事をドウターと言って超大型をゼットンと呼んだ。

ドウターはゆっくりと飛行しながら進撃し続けているし、このまま行けば重要地点に近いドウターは今日中に辿り着くだろう。小型と中型はそれぞれ分かれて進軍しているのか、それぞれの都市群に到達すると思う。

ドウターが通りかかると森・山・自然を破壊し、まるで砂地のようになって住んでいる生き物も塵と化す。進撃先にあった町や村の住民は今の所最小被害で避難完了とされているが、町村丸ごと蹂躙されていくのをただ見ているしか出来ない僕らグレモリー眷属である。

超大型ドウター通称ゼットンだけは、魔王領にある首都リリスに向かう規格外なラスボス級である。流石黒鐵改とサシで勝負するだけの力を持っていると知った事だ。テレビの向こうで、ドウター相手に冥界の戦士達が迎撃を開始した。

黒き翼を広げ、真正面から或いは側面・背面から同時攻撃で魔力の火が撃ち込んでいく。周囲一帯を覆い尽くす質量の魔力がドウターに放たれていた。強力な攻撃をする悪魔は最上級悪魔で、普通なら滅ぼされるはずが滅んでなかった。門がある限り増え続けていく。

『何と言う事でしょうか!最上級悪魔チームの攻撃を喰らったのに増え続けています!あの門がある限り倒せないんでしょうか!』

テレビに映し出されたのは、かつて人間界に出現して一誠君達が攻撃をして倒したドウターと同様である。一誠君ら黒神やブラック・シャーク隊なら一閃してしまうのに、体の表面しかダメージを与えていない様子を見た事で致命傷すら受けていない事が見て分かる。迎撃に出ている各最上級悪魔チームは、どれもレーティングゲームで上位チームなのに効果のある迎撃が出来ない感じだった。

「確かに最上級悪魔チームなら倒せると思ったのでしょうけど、ドウターを甘く見たのが仇となったのでしょう。ドウターを倒すには効果がある攻撃をしなければ倒せませんが、アレを見るにドウターに効果のある攻撃が一切無いのでしょうね」

「小型ドウターを倒せるのは人間界にいるよね?だったらブラック・シャーク隊を呼べば何とかなるんじゃ」

「確かに召集命令を出されてますが、今はまだ冥界に来ていませんよ。アグニ様の命により、待機となっておりますし壊滅状態にさせるのが手一杯な状況と言ってもいいくらいです」

「ではソレスタルビーイングは来てくれるのかい?『それに関してもまだ待機命令としか言えません』・・・・なるほど、今は策を考えていると見ていいんだね?」

僕がそう言うと静かに頷いていたレイヴェルさんだったが、各ドウター相手を迎撃部隊には堕天使が派遣された部隊と天界側が送り込んだ『御使い』達に、ヴァルハラから戦乙女のヴァルキリー部隊。そしてギリシャからも戦士の大隊が駆けつけてくれた事で、悪魔と協力関係を結んだ勢力から援護を受けたので最悪の状況から免れている。

問題は山積みとされているけど、一つは超大型ドウターであるゼットンは昨夜レーティングゲーム王者であるディハウザー・ベリアル率いる眷属チームが迎撃に出た。ゼットンにダメージは与えられなかった事と歩みを止められなかった。ラスボス級ゼットンはダメージすら無い状態で、何事も無かったように極太ビーム攻撃で町一つが滅んだ事で民衆の不安を煽る結果となってしまった。

『あの王者とその眷属が出撃すれば強大なドウターも倒れるだろう』

と内心で信じ切っていたし、僕でもそう思った。皇帝ベリアルと眷属の力は疑いようのないモノで、万全の態勢の僕達グレモリー眷属でも勝てやしない。唯一勝てるとしたら黒神眷属しか倒せないだろうと言うが、今どこで何をしているまでは魔王らでも把握していないようだ。そしてこの混乱に乗じて各地で身を潜めていた旧魔王派と英雄派の残党らが、暴れ回っていると同時に一誠君を殺した輩達がね。

「冥界にて暴れている旧魔王派は『ナイトメア』を知らない者らであり、英雄派は黒神が居ない今がチャンスだと思っているのか混戦状態となっております」

「この混乱を利用して、冥界各地で上級悪魔眷属の主に反旗を翻したとの報告もある。無理矢理悪魔に転生させられた神器所有者が、これを機に今までの怨恨をぶつけているよね」

「アザゼルや一誠様曰く各地で禁手のバーゲンセール状態と言うでしょう。そちらに各勢力の戦士達が向かってますが、これ以上戦力を割く事は出来ない事だと思いますよ。まずはドウターを何とかしないといけませんし、都市部と重要拠点が機能を失えば敵対組織にとって侵略条件はないでしょ」

「旧魔王派と英雄派のクーデターとドウターゲートによるドウター進撃、そして死神達を寄越した冥府の神ハーデスとの繋がりもあったと言う事になるね。ドウターの迎撃に強大な力を持つ神仏や魔王様が赴く事が出来ないのも、今ここで死ぬ事になれば創造神黒鐵様の二の舞となってしまう」

ハーデスが何時死神の群れで進軍してきた場合、今後何が起こるか分からない。各勢力情勢について、様々な事柄を司る神仏と魔王は重要で大きな存在となっている。幸いな事は、各地域の民衆避難が警報と共に最優先で行われていたので死傷者は出ていない。

悪魔がこれ以上の打撃を受ければ、種の存続が本格的に危ぶまれると共にサーゼクス様が民衆の安全を後手に回す訳がない。旧魔王派が現政府に抱いた怨恨に関して『ナイトメア』にいる悪魔には無いが、ここにいる旧魔王派の残党にとって怨恨以上のがあると思うな。

「『ゼットン』と『ドウター』の迎撃に、魔王様方の眷属がついに出撃されるようだ」

「来ていたのですか、兄様」

先程まで会話していた者とは違ったので、顔を向けるとそこにはライザー・フェニックスがいた。テレビを見ながらレイヴェルさんと話していたので、他の者がいる事に関して気付かなかった。

「兄貴の付き添いでな、ついでにリアスの顔を見に来たらここにレイヴェルがいたのは驚きだ。俺は黒神眷属と一緒だと思ってたんだが、まさかここで情報収集をしていたとは思わなかったぜ。久し振りだな、木場祐斗」

「引き籠っている兄様よりも、私は黒神の命によりここにいるだけですよ。それに私は黒神眷属としての仕事をしているだけです」

一誠君の死と言うより消滅に関して、既にこのヒトにも届いていたようだ。僕達はあの一件で友である創造神黒鐵様兼赤龍帝の兵藤一誠を失った。僕達を先に脱出させたのは、フィールドが持たないと知って黒神と共にトレミーで脱出した。

直後に特殊な龍門=神門を開いて、彼を呼び寄せる事が出来た事に関しては嬉しかったが体が半透明となりアザゼル先生に一言告げて消滅してしまった。黒の駒を残して消えたけど、ヴァーリ達は他の黒神を率いてどこかに行ってしまった。

『こちらアザゼルだが、そちらで赤龍帝の魂がどうなったか知らんか?』

『一体何事です?まるで一誠さんが消滅してしまったような言い方ですが?』

『・・・・そのまさかさ、一ちゃんはまた消滅してしまったが今回はすぐに戻ってくると言っていた。宿主が死ねば、赤龍帝ドライグは次の所有者に行くはずだ』

『そうですか・・・・赤龍帝に関しては神器システムのデータベースを見ているのですが、現世の神滅具所有者特定が困難となっているので分かりません。ですが赤龍帝としては、未だ一誠さんとなっているので大丈夫かと』

グリゴリの神滅具観測機関も現在進行形で調査しているが、詳しい情報の期待は高まっていた。何せ赤龍帝は一誠君のままとなっているし、黒鐵様が消滅した事に関しても一部の者にしか伝えられていない。生きている事は確かだけど、どこにいるかまでは不明のままとなっている。

「レイヴェルさん達黒神は実に勇敢だと思いますが、部長に会う事は出来ましたか?」

ここにいる黒神は、一度は泣いたが今では泣かずにそれぞれのサポート役をやっている。アーシアさんにはイリナさんが付いていて、小猫ちゃんには黒歌さんが付いているからね。僕の問いにライザー・フェニックスは首を横に振る。

「無理だったな。部屋のドアを開けてくれなかったぜ、呼んでも反応なかった。・・・・ま、会える状況ではないだろう。友人、親友であった男が目の前で消滅したからな」

コトッと、何か置いた音が聞こえたのでそこを向くと小猫ちゃんだった。ティーカップを置いてフロアの隅にある椅子に座ったけど、隣には小猫ちゃんの姉の黒歌さんがいる。だけど表情は泣いていないし悲しんでいる訳でもないが、不安な表情をしているだけだった。猫又姉妹の仲を復活出来たのは、消滅した一誠君だからね。

「レイヴェルは何か分かり次第、私や他の眷属悪魔に情報をリークするのだ。黒神から連絡が入り次第、レイヴェルはフェニックス眷属ではなく黒神と一緒にいたまえ。一誠君なら心配いらずともすぐに戻ってくると信じるのだ」

フロアに更に増えたが、パソコンで情報収集をしていたレイヴェルさんと話していたヒトはルヴァル・フェニックスだったか。フェニックス家の長兄にして、次期当主をしていると一誠君から聞かされていた。

端正な顔立ちであり、ライザーのような不良青年の様子と真逆のきちんとした貴族服と言う出で立ちだった。物腰も柔らかく立っているだけで華があるが、ゲームでもトップテン内に入る御方でまだサーゼクス様が魔王やる前からの親友だと聞いている。

「リアスさんの『騎士』か。このような状態だが、レイヴェルは情報収集しているから君でいいか」

僕に近付いて来ると、懐から小瓶を眷属分取り出した。フェニックスの涙だ。

「これを君達に渡すついでにリアスさんの様子を見てきたのだよ。こんな非常時だけど、涙に関しては一誠君が大量に創ってくれたお陰で各迎撃部隊の元に出回っているが人数分用意出来たのも一誠君のお陰かな。有望な若手である君達だからこそ、こんなにも残してくれた私の盟友に感謝したいがもうすぐ愚弟と一緒にドウター退治に向かうとする」

フェニックス兄弟もドウター迎撃に出るのか、確かに不死身のフェニックスは前線の心強い戦力となるだろう。

「・・・・愚弟で悪かったな」

ライザーが兄の言葉に口を尖らせるが、フェニックス家は現代の上級悪魔にしては珍しい多い四兄弟だ。長男と三男はゲームに参加して、次男はメディア報道の幹部だと聞いている。僕はルヴァルさんから涙を受け取ったが、僕達も前線に行くんだと思ったよ。

あの時に大量発注したお陰で、涙は余るように遺してくれたからこれは遺産のように扱うと言われている。ルヴァルさんはライザーの頭部にチョップをしてから、微笑むようにして告げてくれた。

「リアスさんもリアスさんの『女王』も、一誠君の死=消滅で酷く落ち込んでいる。だが私は信じている、神である一誠君がそう簡単に死なないと私は思っている。だからレイヴェルもそこにいる黒歌さんとイリナさんも、本来ならヴァーリ君達と一緒にいるはずなのに何故ここにいると思う?グレモリー眷属の事を心配して来てくれた事だと私も思う。友であった君達でも冷静にいられるのは君ぐらいだろうが、見事だ」

「ありがとうございます。ですが本当に彼は生き返るのでしょうか?」

「聞いた所によると肉体は消滅したと聞いた、まるで三大勢力戦争後に起きた、対ドウター戦で魔力を使い果たし肉体は半透明になったと聞いた。消滅しても生き返った事がある、と言う事実が私達の記憶にある。今回も全く同じ事が起きた、普通なら人間は消えないで遺体として残るはずだ。だからなのだよ、彼はまた戻って来てこの危機的状況を打破してくれるはずだとね」

僕は三大勢力戦争後に起こった事は知らなかったが、ルヴァルさんが言っている事は恐らく事実何だろうね。それに部長と朱乃さんは特に仲が良かったし、朱乃さんは昔、一誠君のお陰で母親を失わずに済んだのだから。

部長は婚約の破談もしてくたが、一誠君には何度も助けてくれた。サーゼクス様の師範と言うのも驚いたが、前四大魔王の事も知っている。一誠君が消滅後、黒の駒は部長が持っているから閉じ籠っているのか。朱乃さんも心の均衡を失い、虚ろな表情でゲストルームのソファに座っている。

『二人共僕らが話し掛けても反応を示さなかったが、きっとアザゼル先生も同じ事を考えているんだろうな』

二人共僕が話し掛けても反応無かったけど、朱乃さんはまるで中にある駒を抱えていたように見えたけどアレは一体何だったんだろう?アーシアさんもゲストルームで泣いているけど、すぐ近くにイリナさんがいるからか悲しみを受け流そうとしているようだ。ゼノヴィアだけは天界に残っていると思うけど、一体何しに残ったのは分からないけどね。

「今、ゼノヴィアさんの事を考えていたようですけど大丈夫ですわ。天界の『システム』に影響を与えるであろうとも、天界に居られるよう一誠様が消滅前に色々と調整してくれたようですから。アザゼル先生や北欧神話の世界樹とも言われるユグドラシルの協力でも短期間でしか居る事は出来ませんが、『システム』を書き換えた事によって長期間居られるようにしたと報告書に書いてありました」

「それは一体何の報告書なのかな?・・・・なるほど、ここには黒神の報告書が載っているからか。一誠さんが消滅前に書き残した事のようだが、繊細で謎の多い天界の『システム』は創造神ならば書き換える事も可能と言う事か」

「各勢力の協力が得られるようになったとはいえ、普通なら不可能な事を一誠様がやってきた事です。ギャスパーさんも戻って来れた事ですし、あとはロスヴァイセさんが来てくれると助かるのですがね」

ここにいないはずのギャスパー君もいるのは、人間界本家にいたからであり自分の神器を見直していた時間があったからだ。ロスヴァイセさんについてはまだ連絡出来ずにいるけど、ここに黒神がいる限り何かしらのバックアップ体制でいるのは確かだ。

例え黒神の『王』でも、僕達の支えがあったのは一誠君だからなのかもしれない。だから小猫ちゃんやレイヴェルさんとイリナさんは、泣かずに何か出来る事を探した結果が今だと思いたい。

「我が家としては、レイヴェルがここに残ってくれてよかったと思っている。黒神眷属から連絡があれば君達も動けるだろう」

「お兄様、私も泣きたい所ですが一誠さんと約束しました。一誠さんに何かあったらグレモリー眷属という場所にいろと、悲しむ前に話し相手をしてくれと。それに私は黒神眷属ですが、今はグレモリー眷属の皆さんと行動しますわ」

「うむ、そう言ってくれると私も嬉しいよレイヴェル。では行くぞライザー、お前もフェニックス家の男子ならば業火の翼を冥界中に見せつけるのだ。これ以上、成り上がりとバカにされたくないだろう?」

「分かっていますよ、兄上。じゃあな木場祐斗。リアス達を頼むぜ、それとレイヴェルもだ。黒神眷属から連絡が来たら動け」

ルヴァルさんとライザーはそれだけを言い残してこの場を去った。再び静まり返ったフロア、レイヴェルさんは自分の兄をちらりと背中を見てから作業に集中している様子だった。今後動くにはまずは情報収集からだと、一誠君に教えられたからね。

「私もですが、レイヴェルやイリナ先輩の中にある黒の駒があるから私達は信じられるんですよね?姉様」

「白音、私もそう思っているにゃ。一誠が神様なのは知っているけど、私達の中にある黒の駒が健在ならば滅んだとしても帰還して来るにゃ」

「・・・・イリナさんは何故強い気持ちにいられるのですか?」

「私だって泣きたいけど、まだ希望があるし一誠君が死んだとは思ってないからだよ。グレモリー眷属は、私達みたいに心が強いって訳じゃないくらい知っていたから私はここにいるんだと思うよ」

小猫ちゃんも黒歌さんもイリナも、諦めている状態ではなかったしギャスパー君もアーシアさんの所にいて一緒にいる。一つだけ思えるのは、一誠君が創った黒の駒が消滅していない事で生きていると思っているに違いない。だから悲しんでもそれは望まない事だと理解しているから、神様に願うと力が増すと言うけどきっとイリナさん達も願っているはずさ。

「木場祐斗、君か」

第三者の声。振り返れば、そこには堕天使幹部『雷光』のバラキエルさんと妻の朱璃さんがいた。

「そうか、やはり、朱乃は」

「朱乃、悲しいでしょうね。貴方」

フロアに現れたバラキエルさんと朱璃さんに、状況説明しながら廊下を進んでいた。お連れする先は朱乃さんがいるゲストルームで、朱乃さんの父であるバラキエルさんと母である朱璃さんは沈痛な面持ちだった。一誠君の事と朱乃さんの事、どちらも知った上で悲しまれているだろう。幸いフロアにいた黒歌とイリナがいたからなのか、僕は二人を案内出来たと思うよ。

こういうのは僕よりも同性の方が良さそうだし、僕はサポートするべきナイト失格でもある。こう言う時に他人任せしか出来ない事だが、剣を振るう時だけでもここにいる者らを守護するのが僕の役目だと思っているからだ。

朱乃さんがいるであろう部屋前に到着し、ドアをノックするが反応無しだ。僕とバラキエルさんと朱璃さんはドアを開いて入室すると、中は明かりを灯しておらず暗がりのままだった。部屋の隅にあるソファに朱乃さんが虚ろな双眸のまま、座っていた。

「朱乃!」

「朱乃、しっかりなさい!」

バラキエルから声をかけると反応が少しあったのか、更に呼びかける為に朱璃さんが朱乃さんを抱いたままにして声をかけた。父親と母親から声を掛けられた事で、初めて反応を返した。

「・・・・とう、さま・・・・かあ、さま」

父と母の顔を確認してから、そう呟いた。バラキエルさんと朱璃さんは黙って頷いて今度はバラキエルさんが抱き着いた。

「話は聞いている」

その一言を聞いて、朱乃さんは表情を戻して父親の胸に顔を寄せた。

「父様、母様・・・・私・・・・」

涙交じりの声。バラキエルさんと朱璃さんは朱乃さんの頭を優しく撫でるのだった。

「今は泣け。父と母はお前が泣き止むまでここにいよう。だがお前は、若手悪魔の代表格となりつつあるグレモリー眷属の『女王』なのだ。すぐにその力を冥界の為に役立てなければならない」

「泣きなさい、溜めてた物を全て吐き出しなさい!それに大丈夫よ、一誠さんはただでは死なないんだから」

「・・・・うぅ、一誠君・・・・どうして・・・・」

父の胸の中で泣き出す朱乃さん、背中から抱き着く朱璃さん。バラキエル夫婦がいれば朱乃さんは回復するだろうと思い部屋を退出した。これ以上野暮だと思ったし、ここから家族での話し合いできっと回復するだろうと思ったからだ。あとは部長のみとなってしまったが、時間の問題かそれとも誰かが来るだろうと思って先程までいたフロアまで戻った。 
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