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Society Unusual talent

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code4 後始末

「手伝いますよ」
雄大が数多くの作業員と共に時計塔の残骸を拾っていると背後から声をかけられ、振り返ると缶コーヒーを二つ持った速水が微笑を浮かべており、雄大に缶コーヒーを手渡した。

「む、ありがとう」
雄大は作業している手を止めて缶コーヒーを受け取る。
プルタブを捻り、缶を傾けて飲む。
しかし、すぐに飲むのをやめて缶コーヒーを視界に、複雑な表情を浮かべる。
速水は笑みを浮かべて言った。

「やはり、あなたもコーヒーにこだわりが?その顔を見たらわかりますよ」

「あ、あぁ。俺そんな顔してたのか?」

「えぇ、そりゃあもう。うちんとこの星雅ってやつもそんな風な顔するんですよ」

「なるほど、星雅もねぇ…」
不味いコーヒーを飲み干して、ゴミ袋に入れ煙草を咥え、懐をまさぐる。
苦戦し、なんとかライターを出すが点火のスイッチを入れた瞬間にバラバラに砕けた。

「…」
雄大は咥えた煙草をゴミ袋に入れて作業を再開する、すると一台のバイクが近くに止まる。
雄大と速水は互いに一瞥し、止まったバイクに視線を向ける。
サイドカー付きの白バイからヘルメットの男女と一匹のアルビノの柴犬が現れた

その中で一番背の高い男がヘルメットを外す。
その顔は雄大も速水もかなり見知った顔だった。

「霊遥葵さん、速水、何があったんだ?」
ヘルメットを座席の上に乗せ、星雅は駆け寄り雄大と速水に問う。

速水が「やれやれ」と言うように肩をすくめて答えた
「例のゼロの世界から異能者が出てきたんだ、四人程ね、うち二人ほどは目視したよ」

「四人か...狂った異能者か...?」

「いや、見たところ狂っていない...けど、攻撃はしてきた。確かナンバーズって言ってたな」

「多分だがうち一人は見たぞ、武槌 雷鳴、と名乗っていた。警察署は瓦礫の山になったよ、撃破はしたが逃げられたようだな、そっちの奴の異能については、分かるか?」

「ああ、まずは容姿から説明するぞ、異能を見たのは二人のうち一人のみ、青い髪を後ろで束ねている男だ。筋骨隆々、大太刀を持っていた、もう一人の異能者からは須佐之男と呼ばれていた。異能は水を操って回避に使っていたから、水系異能かと思われる。もう一人の方は茶髪で小柄な和服の女だ、それ以外はよくわからなかった」

「…女の方は異能かどうかはわからないが、蛇を従わせていた」

星雅は「ふむ…」と顎に手を当てて唸り、
先程のバイクに一緒に乗っていた中学校の制服を着た少女となにやら話す。

少女が一緒に来た柴犬に視線を向けると、柴犬は視線を返した後地面に鼻を近づけて匂いを嗅ぎ始めた。
しかし数分すると「お手上げ」と言うように小さく鳴きながらその場で伏せてしまった

「うーん...もうこの街にはいないみたいです、マルチちゃんの搜索範囲内から完全にいなくなってるそうです...というより、匂いがぱったり途絶えているそうです」

雄大は瓦礫に腰をかけ、柴犬に視線を向けながら言った。
「やつらは亜空間のようなものを作り、その中へ消えた。十中八九『ゼロの世界』への入口だろう。何やらやつら、『ナンバーズ』には目的がどうとか言っていた」

「ここで話し合う前に、場所を変えよう。...二度も説明するのは面倒だからな」


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風雪喫茶店

ホールの大きなテーブルを囲むように六人の男女が座っている。
特殊武装異能警察異能犯罪対策科班長、世界で発見されている十人のSランク所持者の一人、弦巻吹河(つるまきすいが)
異能警察官、最速を誇る異能者、速水風真(はやみふうま)
異能警察官、柴犬のマルチと意思疎通を可能とする少女、姫月琴葉(ひめづきことは)
異能警察官、操血鬼、神鳴樹星雅(かんなぎせいが)

喫茶店のオーナーで成美の母であり、弟の雄大から「もっとも闘いたくない相手」と恐れられている、風雪成姫(ふうせつなるき)
福祉会社『Unusual talent』異能事件処理部長。 霊遥葵雄大(たまはるゆうだい)


星雅と弦巻が指揮をとり、ざっくり説明が済んだ。
「警察署については私と成姫で多方片付いた...が、奴らについては何もわからなかったよ」
弦巻は肩を落とし、頭を抑える

「たっだいま~!!」
大きな声と共に扉を勢いよく開き、成美が帰ってきた。
成美はホールのメンバーを見るなり、「わぁ、すごいメンツだね」と感嘆の声をあげた。
星雅が成美に問う
「成美か、どこ行ってたんだ?」

「どこ行くかちゃんと言っといたよ?なぎ君寝てたけど」

「意味ねーじゃねーか...」

星雅が呆れながらも話を続ける

「で、どこ行ってたんだ?」

「もう一人の方追いかけてた」

「もう一人...?」

「そ、武槌君とやらを持ち帰ろうとしてたからさ、追い掛けたんだけど...逃がしちゃった!」

「でも安心してね、情報はきっちり収集したよ、なんか『ナンバーズ』だとかなんとか言ってた」

弦巻が難しい顔をして呟きを洩らす。
「ナンバーズ...か...」

その時、雄大の胸ポケットからレトロな音が鳴る。
雄大は胸ポケットに入った携帯を取り出し、連絡先を確認するや否や、席を立った。

「すみません、用事ができたので席を外します」
喫茶店からでようと扉に手をかけようとする。

「雄大!」
成姫に呼び止められ、振り返るとライターを投げ渡された。
雄大はライターをしっかり掴み「ありがとよ」と礼をつげて扉に手をかけて開け、外へ出る。

シンボルの時計塔が無くなり、少し寂しい空模様だ。
雄大は空を見て止まる。

『ナンバーズ』『ゼロの世界』
様々な不明な問題が重なり、ため息を洩らす。

「…お前も『ナンバーズ』なのか?」
雄大の言葉と共に、一人の男が現れる。

「…お前が須佐之男さんにダメージを負わせた男か?」
「まぁ、そうだな」
男はニヤッと微笑を浮かべて言った。

「ならばついてきてもらおう」
雄大は疑問を浮かべながらも何も言わずに歩き出した男についていく。

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少し歩き、到達した場所は広い空き地だった。

「…?」
状況が読み込めない雄大に対し、男は雄大に身体を向けて大きく叫ぶ
「俺はナンバーズ6!!名は日本武尊(やまとたける)!!これは一対一の男の闘いだ!さぁ!正々堂々とかかってこい!!」
ポーズと共に堂々宣言した日本武尊のテンションについてこれず雄大は呆れ顔になる。

「…めんどくせぇが…お前が一番話しそうだ」
雄大は上着を脱ぎ、丁寧に畳んで汚れない場所に置いて戦闘態勢をとる。

「さっさと終わらせる」 
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