戦国異伝
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第二百三十九話 伊賀攻めその十
「それを破ることが出来ぬのなら」
「その時はですな」
「この様にして」
「うむ、そうする」
今回の様な時はというのだ。
「この様にな」
「はい、では」
「飛騨者達に任せましょう」
「ではここは」
「吉報を待ちましょう」
毛利と服部も言うのだった、そしてだった。
信長は狼煙が上がったのを見た、煉獄達と話をして一刻も経っていなかった。信長は毛利達と共にその狼煙を見つつ言った。
「さて、あの狼煙をな」
「その果心居士がですな」
「見るかどうか」
「それがですな」
「大事ですな」
「うむ、そうじゃが」
しかしとも言う信長だった。
「その果心居士という者が見ているかどうか」
「それがですな」
「問題ですな」
「うむ、どうしたものかのう」
こうしたことを話していた、正直信長は果心居士が来るとは思っていなかった。だがその狼煙が上がってすぐにだった。
飛騨者達が戻って来てだ、笑顔で言って来た。
「これでいいぜ」
「明日までには」
「お師匠様が来るよ」
「今日中かもな」
「待て、先程狼煙を上げたばかりではないか」
飛騨者達のその言葉を聞いてだ、兼続が驚いて言った。
「それで来るというのか」
「ああ、お師匠様は仙人だからな」
それでとだ、煉獄がその兼続に笑顔で答えた。
「千里眼を持っていてな」
「今の狼煙もか」
「見ていてな」
そしてというのだ。
「すぐに来るぜ」
「果心居士殿は何処におられるのだ」
幸村は飛騨者達にその彼の居場所について問うた。
「一体」
「それはわし等も知らないんだけれどな」
煉獄は笑ったまま幸村に答えた。
「けれどそれでもな」
「来られるというのか」
「ああ、ひょっとすると明日でもな」
「まさか仙術で」
すぐにだ、幸村は果心居士がどうして来るのか察して言った。
「来られるというのか」
「ああ、縮地法なり雲に乗ってな」
「まことに仙人であられるか」
「わし等は嘘は言わないからな」
煉獄は笑ったまま幸村に答えた。
「だからな」
「それでか」
「ああ、あの人はすぐに来るさ」
このことを約束するのだった。
「ちょっとだけ待っていてくれよ」
「ううむ、まさか仙人がな」
「まことにおられるとはな」
幸村だけでなく兼続も言った。
「そのことが信じられぬが」
「それでもな」
「飛騨者達は嘘を言わぬ」
「そのことはその通り」
「ならばな」
「ここはやはり」
二人も言う、そしてだった。
信長はその飛騨者達にだ、こう言った。
「ではな」
「上様は待つんだね」
「そうする」
確かな声でだ、信長は風に答えた。
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