FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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氷の神の実力
前書き
カグラの次はシェリアがディマリアに剥かれたか・・・まぁ、おかげでウェンディ出てきたからいいのだけど。
ただウェンディは剥かれないで欲しい!!ウェンディ服切られたらシリルも巻き沿い喰らわす!!
シリル「え!?」
「何がどうなってるのか、さっぱりわからねぇな」
「これってあのレオンって奴の魔法ってことでいいんだよな?」
ドムス・フラウの応援席にいるマカオとワカバはシリルたちの戦いがどうなっているのかさっぱりわからず、そんな話をしていることしかできない。
「なぁ初代。一応聞くけど、これって計算できてたのか?」
「あ!!バカ!!」
真っ白な吹雪しか見えない魔水晶ビジョンを見て呆けているメイビスに、隣にいたロメオが質問をぶつけてみる。その後ろにいたマカオは彼の分かりきっていることに対する質問に慌てている様子だが。
「ちょ・・・ちょっとだけです!!ちょっとだけ予想してませんでしたが、シリルなら大丈夫だと思いますよ」
誰の目から見ても強がりを言っているようにしか見えない初代マスターの言葉。だがそれに対して何かを言えるものはいない。だって泣かれたら手がつけられないから。
「しかしこれだけの魔法・・・そんなに長時間続けられるとは思えん」
「そうだよなぁ。むしろ、魔力を使い切っちまってそのままやられる様が目に浮かぶぜ」
フリードとビッグスローはそう言う。彼らの言う通り、街全体に・・・それもフィオーレの首都クロッカスの街に激しい雪を降らせ、なおかつ横からの突風も仰がせなければならない。各ギルドが配置されている街でやるのとは訳が違う。魔力の消耗は計り知れないものと言えるだろう。
「普通に考えるとそうでしょう。ですが、映像を見た限りではその勢いは衰えているようには思えません。むしろ時間を追うごとに激しさを増しているように感じます」
冷静な口調でそう言うメイビス。他のメンバーからすると、元々映像が真っ白になってしまっていたため、どのくらい勢いを増しているのかは理解できていないが、勢いが衰えていないことだけはわかる。どれだけ目を凝らしても誰の姿も見えてこない圧倒的な吹雪。さらには風がひどいためにほとんど声も聞こえてこない。
時おり誰かが魔法を受けて悲痛な叫びを挙げることもあるが、すぐに風に消し去られてしまい、どの魔水晶ビジョンから聞こえてきたのか、また、誰がやられた声なのかすらも把握できる状況ではない。
「今は待つしかないでしょう。後どれだけの時間、この吹雪が吹き続けるかはわかりませんが、それが止まないことには何も出来ません」
「信じて待つしかない・・・ということでしょうな」
「そうです。それに、彼らなら大丈夫ですよ、六代目」
隣で腕組みをして眉間にシワを寄せているマカロフの方に笑顔を向けるメイビス。
「私たち妖精の尻尾の強い“絆”を持っています。それさえあれば、きっと彼らは期待に答えてくれるでしょう」
シリルside
「ゲホッ・・・ゴホゴホッ・・・」
レオンに殴り飛ばされた俺は地面に四つん這いになって咳き込んでしまう。魔力をそんなに纏っていた感じはなかったのに、それでもこれだけの力・・・レオンの奴は本当に怖い魔導士だな・・・
「というか・・・ここ・・・どこだ?」
さっきの攻撃で相当飛ばされてしまったらしく、目を使って吹雪の合間を縫って場所の把握をしようとするが、どこなのかさっぱりわからない。
「でも・・・飛ばされたのが今回はラッキーだったかも・・・」
パンチを受けた部分を擦りながらゆっくりと立ち上がる。
レオンの攻撃を受けた時、間違いなく俺の意識は飛んでいた。真っ白だったはずの景色が真っ黒になるのを感じたからだ。だけど、その直後にいくつもの建物を突き破ったことにより、その痛みで意識が戻ってきたのだから。
痛みで意識が戻るなんて、想像したことすらなかったけど、確かに今それが起きた。普通ならあのパンチで戦闘不能になってしまい、蛇姫の鱗にポイントが加算されるところだったんだけど、威力がありすぎて逆に飛んだ意識を呼び戻すことになってしまった。これは俺にとってはラッキーのような気がする。
「とは言ったものの・・・これはこれでまずい感じもするなぁ・・・」
辺りを見回しながらレオンのことを探してみる。だけど、この周辺にはいないのか、それとも姿を隠して機会を伺っているのか、彼がどこにいるのか把握することができない。
「油断しちゃダメだ。あっちは俺の場所を把握してると考えてた方がいいぞ」
そういい聞かせながら、周りに意識を向けて気配を探りつつ、目を使って敵の姿を探す。
「集中!!」
全ての五感・・・視覚と聴覚に全神経を持っていく。すると、正面からジャンプ一番飛んでくる人影を見つける。
それに気付いた俺は横に足をスライドさせて回避する。飛んできた人物は俺が元いた地面を思いきり殴りつけており、その衝撃で地面に大きな亀裂が入る。
「ちょっ・・・」
さっきジュラさんが剣咬の虎のオルガさんを地面に叩き付けているシーンを横目で見てたけど、あの時は亀裂もそこまでの範囲には広がってなかった。精々半径5メートル程度だったように記憶している。それでもすごい力なのに、レオンの一撃はそれよりも遥かに広い範囲に・・・それも、はっきりとわかるほどのヒビを入れているのだ。
「ありゃ?抜けなくなった」
俺がそれに驚愕していると、レオンが左手を右手で一生懸命に引っ張っているように見える。どうやら先程の攻撃で地面に拳が突き刺さってしまい、身動きが取れない様子。
「チャンス!!」
それを見ていた俺はこの好機を逃してはいけないと悟り、右手に魔力を纏わせて突撃を開始する。だが・・・
「どわっ!!」
一歩目を踏み出した途端、地面に広がる亀裂に足が引っ掛かってしまい前のめりに転倒する。おまけに靴が完全に引っ掛かってしまっているようで、なかなか抜け出ることができない。
「よし!!抜けた!!」
その間にレオンが地面から腕を引き抜いており、足を取られている俺の姿を見て足に魔力を溜めていく。
「いくぞ!!」
再びジャンプして向かってくるレオン。でも、運がいいことに俺の方もすぐに割れ目から脱出することができた。おまけにレオンの攻撃は単純。パワーがあるからなのか、はたまた細かい技量がないからなのかは定かではないが、一直線に突進してきてはフェイントも何もなしに技を繰り出してくるだけ。
身動きさえ取れれば、避けることなど容易いこと!!
「氷神・・・・・」
体を一転させつつ蹴りを繰り出してくるレオン。俺はその魔力の流れと筋肉の動きを読み取り、体を後方へと下げて回避しようとする。
「氷結!!」
何の変哲もない、ただ魔力を纏わせただけの回し蹴り。ただし、聖十の魔導士すら越えるほどの超人的なパワーを秘めた・・・ね。それでもさっきまでの感覚でいけば避けられるはずだった。だってさっきから対抗することはできなくても、回避することは何度も出来ていたのだから。それなのに、
ガンッ
レオンの回し蹴りは俺の右脇腹強襲していった。
第三者side
『ああああああああっ!!』
魔水晶ビジョンから聞こえてくる誰かの叫び声。だが、それも風の音に負けてしまい、すぐに聞こえなくなってしまう。
『またしても叫び声が聞こえました!!今のは女性の声のようでしたが・・・』
映像が全く意味を成していないため、実況者のチャパティも正確な実況を出来ずにいる。その隣にいるヤジマとマトー君も同様で、何をどう解説すればいいのか、困り果てていた。
「今の声は・・・シリルか?」
そう呟いたのは妖精の尻尾の現マスター。さすがは絆で結ばれた仲間たちと言うべきなのか、一瞬のこととはいえきちんと仲間の声を聞き取っていたようだった。
「あの声の感じは魔法を放っている時の声ではなかったな」
「たぶん・・・レオンの攻撃を受けちまったんだろうな」
顎に手を当てて声のトーンなどから状況を予測しようとしているフリードと魔水晶ビジョンから魂を見てどんな展開になっているのかを見るのは諦めたのか、仮面を被り直したビッグスローがそう言う。
「でもそれ・・・少しおかしくない?」
「何がだ?」
その2人の間に挟まれている雷神衆の紅一点は不自然な点を感じたらしい。フリードはそれが何かわからずに質問をする。
「だってシリルにはあの目があるでしょう?この吹雪の中でも相手の動きは見通すことができるはず。それに、見えていればあの子は魔法を交わせることはさっきまでの戦いで証明されているんだから、攻撃を受けたってのはおかしくない?」
「確かにそうだが・・・」
あの悲鳴の上げ方は間違いなくやられた時の声だ、と続けるフリード。その会話を聞いていたメイビスも何かがおかしいと感じたらしく、真剣な表情でドムス・フラウに設置されている魔水晶ビジョンを見つめている。
「どう思いますかな?初代」
「この状況ではなんとも・・・ですが、レオンは魔法に力がある分、荒削りなところが多いです。シリルならそれを見極めることは可能だと思うのですが・・・」
明晰な頭脳をフル活用し、なぜシリルが攻撃を受けてしまったのか、考えてみる。だが、そう簡単に答えが出るようなら何も困りはしない。
「ラクサスたちも一体どうなっているのやら・・・」
「エルザもあの傷にこの吹雪じゃ痛みがさらに増してそうね」
シリルだけではなく、他のメンバーも気になっている妖精の尻尾の面々。激しくぶつかり合う音もほとんど聞き取ることが出来ず、試合の状況を読み取ることが出来ないことは彼らに大きなストレスを与えていた。
シリルside
「な・・・なんで・・・」
凍り始めている地面に仰向けになり、疲弊した体を少しでも回復させようと呼吸を繰り返す。
ただ、なぜ今のレオンの攻撃が当たったのか、俺には全く理解できずにいる。さっきまでの感覚なら避けていたはずなのに・・・
「氷神・・・・・」
微かではあるが、レオン声が聞こえてくる。聞こえた方を振り向くと、こちらに突進してきているレオンの姿が目に入る。
「永久凍土!!」
俺たちの鉄拳のような技・・・いや、威力はあっちの方があるか。とまぁ冷静に判断している訳にはいかないな。すぐに頭の中を切り替えて相手の動きを見切ってから回避行動に移る。これも問題ない。早い段階で気付くことが出来たから、ギリギリではあるが避けることは出来たから。そのはずなのに・・・
ザシュッ
レオンの氷の手刀が俺の頭を掠めていく。
「っ!!」
こめかみに猛烈な痛みを感じて、すぐにそこを押さえながらレオンと距離を取るために後ろにジャンプする。手を外して平の部分を見てみると、そこには血が付着していた。
「いってぇ・・・」
血が出ていると動いた時に目に入るかもしれない。そうなると俺の優位性を保つために必要な視覚が奪われてしまう。手から水を出して血が出ている場所を止血する。もちろんその間もレオンから警戒を解くことはない。数秒ほど水を当てていると、血は収まったみたいだ。
「すごいなぁ。見た目によらずシリルはタフだ」
「見た目は余計だよ!!」
こういうのもなんだけど、俺とレオンは対して身長は変わらない。レオンは若干シェリアより小さいし、俺はウェンディよりわずかに大きいから彼女たちの差よりも小さいはず。容姿についてもレオンはそこまで大人びているわけではない。
目が憂いを帯びている感じはするものの、全体像を見ると俺と大して変わらないんじゃないかな?ショタだよショタ。お前が見た目をバカにしたらいけない。
「いやいや、シリルはどっちかといえばロリじゃないかな?」
「ぶん殴るぞ!!」
レオンの挑発に乗って右ストレートを放ってみる。だけどこれは楽々交わされてしまい、右手首を捕まれてしまう。
「いたたたっ!!」
捕まれた瞬間、その場所に強烈な痛みが走る。体が冷えてしまっている上に、レオンの手が魔法を連発しているせいで冷たくなっており、そんなに強く捕まれている感じはしないのにかなり痛い。空いている方の手で彼の手をバンバン叩いていると、彼は払うように俺の腕を投げ、バランスを崩してしまい転倒しそうになってしまう。
「はぁっ!!」
「どわっ!!」
投げられた勢いで敵に背を向けてしまった俺。レオンはそれを見逃すことなくお尻に蹴りを入れてくる。ただでさえもバランスを崩していた上に、不意を付く形で押されたために倒される。おまけに地面が完全に凍ってしまっており、起き上がろうとした際に手がくっついてしまった。ただいつまでも四つん這いの状態だとやられてしまうため、多少無理矢理ではあるが引き剥がして立ち上がる。手のひらはヒリヒリするけど、皮が剥けたわけではないみたいだから一安心といったところだろうか。
「大丈夫?」
「おま・・・敵の心配するとか余裕すぎだろ」
まさかレオンに心配されるとは思っていなかったため、返事よりも先にその余裕にイラついてしまう。
「いや、皮剥けるのは痛いから」
前に似たような経験でもあったのか、そう言うレオン。俺は服についている雪を叩きつつ彼の方を見据える。
「大丈夫だよ。お前の攻撃に比べれば」
「そう?ならよかった」
どこか安心したような表情のレオンは滑らないように足場をしっかりと慣らしている。いくら氷の魔導士と言えども地面が凍っていれば転んでしまう可能性はある。だから足場を慣らしているんだろうな。
「ほらほら。攻めてきていいよ」
指をちょいちょいと動かし俺に攻めてくるように挑発するレオン。こ・・・この野郎・・・
「あんまり・・・ナメるなよ!!」
頭から水を纏う。そこから重心を下げ、勢いをつけて突撃する。
「水竜の・・・剱角!!」
全身全霊をかけた頭突き。当たりさえすれば致命傷は免れない。この気温のせいで水が若干凍っていることもあり、威力はいつもよりも上がっている。
(自分の魔法で相手の魔法の威力を上げてたら世話がないぜ)
スピードもいつもより乗っている。これならレオンを捉えられる。俺がそう思っていると、
「危ね」
あっさりとレオンに回避されてしまう。
「この・・・」
脇を通りすぎてしまった俺はすぐさま着地し、切り返して突進しようとする。
ツルッ
「がっ!!」
しかし、切り返しに失敗して滑ってしまう。しかもそこは、さっきレオンが足場をならしていたところだった。
「引っ掛かったな!!」
「!!」
そう言い俺の目の前に現れるレオン。もしかして、さっきのは足場をならして滑らないようにしたのではなく、逆に滑るように磨いてたのか!?そう言うのは普通押されてる方の人間がする作戦だろ!?どんだけ貪欲なんだよ!!
「って!!そんなこと言ってる場合じゃねぇ!!」
心の中で突っ込んでいた自分に怒鳴りながら急いで避けようとする。
レオンは足を後方に引き、純粋に振り上げる。タイミング的にはギリギリ。かするぐらいならまだいいか!?
「ぐっ!!」
避けているはずなのに・・・レオンの振り上げた足は顎を見事に捉える。そのせいで脳が揺れ、フラフラになり倒れそうになる。
「どりゃ!!」
「いっ!!」
前のめりになった俺を見たレオンは、その反動を生かすために頭突きを繰り出してくる。痙攣を起こして動けなくなっていた俺。だけど、レオンの頭突きで相殺されたらしく、目の前はグラグラしているけど、何とか動くことはできる。
「喰らえ!!」
「おっと」
右フックで流れを変えようとしたけど、それはレオンの鼻先を掠めただけでクリーンヒット出来ない。
「このこのこのこのこの!!」
もう魔法とか関係ない。とにかく一撃入れて流れを変えたい。ただその一心でパンチやキックをガムシャラに繰り出していく。だがそのほとんどは彼を捉えることが出来ず、皮1枚を掠めていくのがやっとの状態。
(おかしい・・・絶対何かおかしい)
拭えない違和感。それでも今は攻めるしかない。運良くレオンはこっちが攻撃している間はそれを交わすことしか出来ていないように見える。カウンターや技を見切って至近距離攻撃をしてくるのも1つの手なのに、レオンはそれをしない。いや、出来ないのかな?
「早い早い!!頑張りすぎ頑張りすぎ!!」
あまりの猛攻に慌てている様子のレオン。彼は力がある分細かく相手のHPを削っていくものがない。こっちが攻めていれば何とかできる!!
「でも、さっき言ったよね」
突然、不敵に微笑むレオン。彼は休むことなく自分に迫ってくる俺の腕をガッシリと掴んだ。
「!!」
腕を捕まれたせいで攻めることも逃げることも出来ない。ただジタバタともがくだけで身動きが取れなくなってしまう。
「ここではお前は俺に勝てないって」
腕を引かれて接近させられた俺に、レオンは膝蹴りを脇腹に叩き込んでくる。そのとてつもないスピードは俺の目ですら捉えることが出来ず、何もできずに受けてしまうことしか出来なかった。
後書き
いかがだったでしょうか?
シリル優勢から一転してのレオン優勢。
そしてシリルが感じている違和感。
次でその違和感の正体は出す予定です(忘れていなければ・・・)
次回もよろしくお願いします。
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