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チビで悪いか!

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4部分:第四章


第四章

「気にするなよ。頼むから」
「頼むから?」
「ああ、もういいから」
 今度はたまりかねた様子になっていた。
「じゃあさ。僕は寄るところがあるし」
「寄るところ?何処よ」
 これもまた咲菜にとってはわからない話だった。いつもは腹が立つ彼に対しても今日は違っていた。何でもわからずもやもやするのだった。
「わからないんだけれど。さっぱり」
「まあこれでさ」
 それでも何も言わずそそくさと前に出て咲菜から別れようとする。
「今日はこれでね」
「これで?」
「うん。それじゃあ」
「あっ、ちょっと」
 菊次郎はそそくさと立ち去った。まるで逃げるように。咲菜はそんな彼を見て首を傾げるだけだった。何が何だかわからなかった。しかしこのことは翌日クラスメイト達に話した。すると彼女達は皆一斉に咲菜に対して怒りはじめたのであった。
「何よそれ」
「あんた馬鹿なの!?」
「ちょっと待ってよ」
 いきなり馬鹿と言われて咲菜の方も不機嫌な顔になった。
 怒る彼女だがそれでも皆の言葉は続く。
「鈍感だと思っていたけれどね」
「ここまでなんて」
「鈍感!?」
 咲菜は話がさらにわからなくなった。眉も目も顰めさせる。
「私が!?」
「そうよ。そこまで言われて気付かないの?」
「皆もう気付いていたのに」
「気付いていたって」
 皆の言葉が変わったことにここで気付いた。
「何によ」
「だからね。三浦君のことよ」
「こう言えばわかるかしら」
「わかる?その一人がどうたらってこと?」
 皆怒った顔で咲菜に語っている。しかしそれでも当人は全く何もわかっていない顔でそこに困惑さえ浮かべているのであった。
「本当に」
「いい!?」
「うん」
 そのわかっていない顔で彼女達の話をまた聞く。
「つまりね」
「三浦君、あんたのことが好きなのよ」
「まさか」
 それを聞いても全然相手にしない。一笑に伏しただけであった。
「有り得ないわよ。何であいつが私のことを」
「やっぱり全然わかってない」
「あんた、本当に鈍いのね」
「だから。何でそうなるのよ」
 少し怒った顔になって皆に言い返す。
「あいつが私のこと好きだなんて。有り得ないじゃない」
「いや、有り得るし」
「考えてみて?」
 また皆は咲菜に対して言うのだった。声が厳しいものになっている。
「何であんたにいつも声をかけてくるかわかる?」
「さあ」
 やっぱりわかっていなかった。
「好きだからよ」
「ついでに言うわよ」
 さらに突っ込んで咲菜に告げる。
「小さい小さいっていうのもね。あいつの愛情表現なのよ」
「まさか」
「だから。そのまさかよ」
「ほら、よくあるじゃない」
 いい加減かなり呆れた顔になっているがそれでも説明を続ける。色々と言っても彼女達もかなり咲菜と菊次郎に対して親身になっている。
「好きな娘程あれこれ構うって」
「それよ」
「そうだったの」
 流石にそれは咲菜も知っている。それを聞いてようやく事態を把握したのであった。わかるとその顔が驚いたような困ったようなものになった。
「あいつ、それでいつも」
「それにね、そのあいつだけれど」
「わかる?」
 皆咲菜がようやくわかったのを見てやっとなのね、ととりあえずはほっとした。しかしそれでもまだ言葉を続けるのであった。
 
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