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7部分:第七章
第七章
「行くわよ」
「うん」
こうして珍しく一緒に登校する姉妹であった。姉の横にいながら妹は。通学路のことはあまり考えずただ姉を見つつ考えるのであった。
(どうしてかしら)
いぶかしむ顔になろうとしているのは必死で注意していた。
(運動していてもどうして。これだけのメイクでこんなに奇麗なんて)
それがどうしてもわからないのであった。自分から見てもやはり奇麗な姉が。このことがわからず彼女の横顔をまじまじと見つつ考えるのであった。
(どうしてなのかしら。秘密があるにしても何かしら)
「遼子」
こう考えていると不意にその姉が彼女の名前を呼んできた。
「いい?」
「いいって?」
「だから。改札口よ」
「あっ」
気付けばもうその前だった。駅の改札口まで本当にあっという間だった。
「定期出して。ほら」
「そ、そうね」
今更みたいに焦る遼子であった。額にうっすらと汗さえかいているのが自分でもわかる。
「それじゃあ」
「少しおかしいわよ」
「私は別に」
家にいる時と同じく誤魔化した。
「何もないわよ」
「本当に?」
「本当よ」
ムキになってひた隠す。
「何もないわよ、本当にね」
「だったらいいけれどね」
「ええ。じゃあ」
何気なくを装って改札口に定期を通す遼子だった。
「行きましょう」
「ええ」
誠子も定期を通して改札口をくぐった。こうして二人並んでプラットホームに出た。遼子にとってはいよいよ勝負の時であった。
「おっ、あの娘今日は早いな」
「そうだな」
「ふふふ」
昨日の男の子達だった。彼等の話を聞いて内心ほくそ笑む遼子だった。まず自分が注目されて緒戦は勝ったと思った。ところがであった。
「おいおい、しかも今日はな」
「お姉さんもな」
「いるなんてな。美人姉妹だよな」
「むっ」
これも内心であるが眉を顰めさせた。
「お姉ちゃんも見てるのね」
「年上っていいよな」
「両手に花ってやつか?」
「馬鹿、そんな上手い話があるかよ」
「当たり前よ」
不機嫌な言葉を心の中で呟く。
「私だって。彼氏なんかとても」
実は恋愛経験はない遼子なのだ。彼氏がいたことはおろか誰かを好きになったこともまだない。だからこうした言葉を聞いても今一つ何と思えばいいのかわからないところもあるのだ。
「作ることなんて」
「あらあら」
そんな遼子に対して横にいる誠子は随分と軽い感じである。
「男の子達随分と楽しい調子じゃない」
「楽しいって?」
「男の子はああじゃないとね」
彼女は随分と砕けていてしかも余裕である。そこには年長者としてのもの以上の何かがあった。遼子もそれは感じ取ることができた。
「女の子に興味がないとね」
「興味がって?」
「そうよ。女の子に興味があるから話が動くのよ」
その余裕のある態度で述べる誠子だった。
「恋の話がね」
「そういうものなの」
「そうよ。大体遼子はどうしていつもお洒落してるのよ」
「えっ!?」
姉に問われて思わず声をあげた。
「どうしてって?」
「だから。どうしてなのよ」
また妹に問うてみせる。
「お洒落してるのは。どうしてなのよ」
「それはその」
こう問われると返答に窮した。どう答えていいのか言葉すら思いつかなかった。
「まあそれは」
「それは?」
「奇麗になりたいから」
「奇麗になりたいのね」
「もっともっとね」
こう答えるがそれ以外に何があるのかと内心では思っていた。
「なりたいからよ」
「そうよね。だから奇麗になりたいのよね」
「ええ」
姉の言葉に対してこくりと頷く。
「そうよ」
「それってどうしてなの?」
「えっ!?」
姉がさらに突っ込んできたのでまた声をあげる。
「どうしてって?」
「だからどうしてなのよ」
問い掛けは続く。
「それは」
「それはって。そう言われたら」
「わからないとか言わないでよ」
にこにことして言葉を返してきた誠子だった。
「まさかとは思うけれど」
「そのまさかなんだけれど」
本当に首を傾げてしまう遼子だった。
「どうしてって言われると」
「あれっ、あの二人何か」
「言い争いしてね?」
後ろの男の子達に言葉はもう耳には入っていなかった。どうでもいいことになってしまっていた。それよりも横にいる姉であった。
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