美容健康
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2部分:第二章
第二章
「早く食べてね。お母さん今度は洗濯しないといけないから」
「わかったわ」
遼子もお母さんのその言葉に頷く。
「じゃあ。これ食べてね」
「後で髪セットしてお化粧もするんでしょう?」
「ええ」
誠子に話したことと同じ返事を返す。
「だったら早くしなさい。いいわね」
「駄目よ、御飯はちゃんと食べないと」
「朝はしっかりってことなの?」
「そう、それが一番いいのよ」
少し聞いただけでは実に道徳的な言葉である。
「美容にはね」
「最初からかなりいいじゃない」
お母さんは遼子の言葉に自分の言葉を尖らせてきた。
「それでどうしてまた言うのよ」
「気をつけないといけないの」
それでも言う遼子だった。
「こういうことはね。努力次第だから」
「それで男の子にもてるの?」
「うち女子校じゃない」
サラダのトマトを食べながら言う。
「男の子なんていないわよ」
「じゃあ何の意味もないじゃない」
お母さんの言葉は実に辛辣だった。
「違うかしら。それで」
「違うわよ。それはね」
まだ言う遼子だった。
「普段からちゃんと整えておくことが大事なんだから」
「そんなに必死ならアイドルにでもなったら?」
「アイドル?」
「それかモデルよ」
冷めた声で遼子に告げる。
「どっちかになったら?渋谷か原宿歩いていたら声かかるでしょ」
「それもいいけれどね」
こうは言ってもあまり興味のなさそうな遼子だった。芸能界に対しては。
「それでもそれは今は興味ないわ」
「そうなの」
「まあとにかく」
ここで自分の両手を合わせる遼子だった。
「御馳走様」
「はい、じゃあ後は鏡とにらめっこしてなさい」
「随分棘のある言い方ね」
「あんた位の時はね」
またお母さんの声が尖ってきた。
「何をしても奇麗なんだから。過剰な努力よ」
「奇麗ならより奇麗によ」
まだ言う遼子だった。
「そうしないとね。駄目なのよ」
「もう勝手にしなさい」
流石にもうお母さんも呆れてしまった。御飯を食べ終えた遼子はサラダのガラスボウルを水の中に置いてそれから歯を磨いて身支度に入った。それを終えてから悠然と家を出て登校するのだった。
「おい、今日もいるぜ」
「ああ、やっぱり奇麗だな」
駅のホームで一人立っていると他の学校の男の子達の声が聞こえてくる。
「何ていうかな、あの制服もいいよな」
「着こなしよくねえ?」
「当然よ」
彼等の言葉を聞いて内心微笑んでいる遼子だった。
「研究してるんだから。制服の着方も」
「芸能事務所、入ってるのかな」
「入ってるんじゃね?」
男の子達は少し勝手な予想に入っていた。
「あれだけ可愛いとな」
「普通に声かかるだろ」
「美人姉妹ってやつだな」
「!?」
今の言葉を聞いた遼子の眉がピクリ、と動いた。顔に険が僅かに走る。
「美人姉妹って!?」
「あの娘とな、同じ中学だったツレいるんだよ」
「ああ」
「そいつから聞いたんだけれどな。あの娘お姉さんいるらしいぜ」
「へえ、そうなのか」
「よくわかったわね」
遼子は彼等の話を聴きながら思った。
「そこまで。同じ中学の子なんて」
ちらりと彼等を横目で見る。見ればその制服は知っている高校の制服だった。それを見て誰が言ったのか少し予想立てた。
「あの子かしら。それとも」
「お姉さんも同じ高校でな」
「そうなのかよ」
しかし予想立ては中断するしかなかった。ここで姉の話なったのでそちらに関心を向けたからだ。より正確に言うと向けざるを得なかった。
「やっぱり奇麗な人だぜ」
「へえ、そんなに奇麗なのか」
「けれどな」
ここで話が変わった。
「タイプは違うらしいな」
「姉妹なのにか?」
「あの娘はどっちかっていうとアイドルだよな」
「まあそんなところだな」
自分でもこれは自覚していた。実際にあるアイドルのメイクや髪型を参考にしている。ファッションは別のアイドルだが。だから自覚できることだったのだ。
「けれどお姉さんはな。どっちかっていうと」
「何なんだ?」
「陸上選手だってさ」
「よくわかったわね」
遼子は彼等の話を聞いて思わず呟いた。
「そうよ。お姉ちゃん陸上部だからね」
「メイクとかは薄くてな」
「ナチュラルってわけか」
「健康的な美人らしいぜ」
まさにその通りだった。誠子のこともよくわかっているようだ。
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