魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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第31話 とある梅雨の一日
「おはよう、零治!」
「おはよう、零治君」
「はよ〜す」
テストも終わり梅雨シーズン。ジメジメと熱くなってきて寝づらい時期になってきた。
テストはみんな思った通りにいったみたいだ。
なのはは当然、フェイトもなんとか古文を45点まで持っていた。
それでみんなハッピーといきたかった所だったが、1人問題があった。
「どうしてこうなったんや………」
「自業自得だ」
はやてが苦悩して課題をやっている所にフェリアが冷たく言った。
「ふぇ〜ん、フェイトちゃん………」
「はやてが悪い」
「なのはちゃん………」
「少しは反省するべきなの」
「すずかちゃん………」
「二人の言うとおりだよ」
「零………」
「眠いから却下」
「何でみんな放置なんや!!放置プレイか!?」
はやて、女の子がそんなこと言うな。
「何で私たちの名前が無いのかしら………」
「本当に失礼ね………」
「全くだ」
それぞれ文句を言うアリサ、加奈、フェリア。
「当たり前やん。フェリアちゃんはともかく、二人はドSやないか」
「ドSって………」
「いい度胸ねはやて………」
眉をピキピキさせながら怒りを露にする加奈。
「レイ、ドSってなんだ?」
そうか、そんな知識知るわけないか。
「ドSってのはな、なのはやアリサ、加奈のように人を痛めつけて快感を得る頭のいかれた奴らのことだ」
「なるほど」
ポンっと手を合わせるフェリア。
「零治君、生きてまた会おうね」
「無事に帰ってきてね」
フェイト、すずか?
いきなり何言ってるんだ?
まるで俺が今から戦場に行くみたいに………
「………零治君?」
「何だ?なの………」
その瞬間悪意に満ちたプレッシャーに俺は何も言えなくなる。
「いい度胸ね、何が変な奴ですって?」
「兄さん、本人を前にしてよくそんな風に口が回るわね………」
3人がそれぞれ近づいてくる。
「お、俺が一体何をした!?」
「零治君………」
「すずか、お前もあいつらに………」
「ドSで頭のいかれた奴って言ってたよ………」
…………………そうだった!!!
「零治君オハナシする?」
「断る!!」
俺は初めてなのはのプレッシャーから逃げる。
「逃すと、」
「思ってるの!?」
逃げた先に、アリサと加奈が立ちふさがる。
「クッ、3対1とは卑怯な………」
「安らかに眠ってな」
「頑張れ〜零治君〜!」
「「「「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね………」」」」
「いいなぁ俺も罵られたい………」
はやてとクラスメイトが俺に好き勝手声をかけてくる。
いろいろ言いたいことがあるが………
神崎組、後で覚えてろ。
「零治君………」
魔王様がゆったり近づいてくる。
「くそ、どけ!!」
俺はフェイントを混ぜ、アリサと加奈の間を抜けようとした。
「甘いわ!!」
俺が抜ける瞬間に俺の後ろ足に足を引っ掛け俺を転ばすアリサ。
俺はなんとか手で着地し、直ぐに立ち上がろうとする。
「本当に甘いわ兄さん」
「うがっ!?」
俺の背中に足を乗せ、立ち上がらせないようにする加奈。
「くそ………」
「お遊びは終わりかな?」
いつの間に俺の目の前にいたなのは。
「さぁオハナシなの………」
俺の制服の襟を掴み運ぶなのは。
いつも思うけど、どこからそんな力が………
「ちょ!?待て!!た、助け………」
俺の腹にアリサのボディブローが貫く。
「静かになさい」
アリサの冷たい一言にクラスみんなも静かになる。
「さぁ行きましょ」
俺は結局3人にズルズルと連れて行かれることになった。
「またあいつは何かやらかしたのか?」
入れ違いに入ってきた桐谷がフェリアに聞く。
「ああそうだが………桐谷」
「何だ?」
「お前はドSか?」
「えっ?」
桐谷はその後フェリアを誤魔化すのに苦労したのだった………
「朝は本当にひどい目にあった………」
「お前ももう少し言葉に気をつけろ」
昼休み、俺は肩を抑えながら廊下を歩いていた。
「「「有栖先輩、加藤先輩こんにちは」」」
「よっす。元気だな一年生は」
そんな俺たちに一年生の女の子3人組が声をかけてきた。
「先輩、悲鳴聞こえましたよ。いつものですか?」
「ああ、いつものだ。お前たちもうちのクラスにいる魔王には気をつけろ。おはなしって言葉が出たら即座に逃げろ。じゃないとトラウマになるぞ…………」
「大丈夫ですよ。有栖先輩だけみたいですから………」
「そうなのか!?」
「お前、気づいてなかったのか?」
桐谷にも言われる俺。
そういえば俺にしかやっていないような……………
「それじゃあ、失礼します」
「ああ、転ぶなよ〜」
俺達から離れていく女の子達。
「零治、知ってる子か?」
「いいや、知らない」
「…………どれだけフレンドリーに話してるんだよ」
「いやぁ、あのときから色んな人から声かけられんだよ」
あの時とは体育館でやった、イケメンバトルである。
あの後から、学年関係なく声をかけられるようになった。
「お前もか………」
「桐谷もか?」
「ああ、ラブレターなんかも渡されて正直迷惑だ」
神崎組に聞かれたら処刑もんだな。
「そんなこと言うなよ。相手はマジなんだぞ」
「だからいちいち答えを返すのがめんどくさいんだよ」
ここがコイツの良いところだよな。
別に無視しても構わないのに、律儀に断りに行くからな。
だからこそ、あのバカみたいに人気が落ちないんだよな………
「まぁいいや、早く俺たちも教室に戻ろうぜ」
「ああ、そうだな」
俺たちはそれぞれの教室に戻っていくのだった。
「いったい何があった!?」
俺の言葉は最もだと思う。
教室に入った瞬間、バカが血を流し倒れているのだから。
「おい、フェイト!」
「どうしたの、零治!?落ち着いて」
「落ち着いていられないだろ、完全に殺人事件だぞ!!」
神崎組だって歓喜の涙を………………
って何で?
「流石、神崎君。みんなが羨ましがるオハナシを受けられるとは」
「流石はリーダー!!」
「一生ついていくッス!!」
神崎は神崎組の二人に肩を担がれ立ち上がる。
「よく言った、同士諸君。我が宿敵有栖零治を倒し、一緒にハーレムを目指そうじゃないか」
宿敵ってなんだよ………
満身創痍ながらも神崎組に宣言するバカ。
「行くぞ、みんな!!」
ぞろぞろ連れて、教室から出ていく神崎組。
後5分で授業なんだけど。
「フェイト………」
「神崎君がしつこく話しかけてきて、あまりにしつこかったからアリサと加奈が………」
なるほどね。
それで歓喜してたのか。
お前らの人生それでいいのか?
「でもアリサちゃん、零治にやるお仕置きはこれの3倍はあるから手加減してるんだけどって」
俺ってマジで化け物だな。
ディストーションフィールド要らなくないか?
結局、神崎組が帰ってきたのは授業が始まって30分後だった………
「暑い………」
5時間目、雨が降ってきて、余計ジメジメしてきた。
「暑い、暑い」
「………………」
「暑い、暑い、暑い」
「………………」
「暑い、暑い、暑い、暑い」
「………………」
「暑い、暑!!」
「うるさいの」
鈍い痛みを感じ、俺はその場で意識を失った………
「鬼だな………」
その様子を見ていたフェリアは呟いた。
「あれ?いつの間に寝ていたんだ?」
俺が起きたら5時間目の休み時間だった。
「始まってすぐだよ。私も今日はちゃんと授業を受けたかったから無視してたんだ」
「そうなのか。でもこの頭の鈍い痛みは………」
「変な夢でも見たんじゃない?」
「そうか、そうだよな。なのはが俺の頭に何かしたのかと思ったよ」
「違うぞ零治、なのはが………」
「フェリアちゃん、世の中には知らんでええこともあるんやで」
フェリアの口をふさぎはやては言った。
「でも記憶がチグハグなような………」
「細かいことは気にしないほうがいいよ」
「まぁそうだな。どうでもいいだろうし」
フェリアは零治がなのはに毒されている事に不安を覚えたのだった。
ピンポンパンポン………
『2ーA組、有栖零治君、八神はやてさん、至急生徒会室に来てください』
ちょうどHRが終わった矢先、こんな放送が流れた。
「何故に!?」
「零治、また何かしたの?」
フェイトの冷たい視線が俺に突き刺さる。
「はやてちゃんもだけど………」
「なのはちゃん、それはないわ。今日はずっと課題やってたからなにもしてへんで………」
「ただ単に会長が俺たちに用があるんじゃないのか?」
「そうやね。だったら急ぐべきやないか?」
「そうだな、みんなは先に帰っていてくれ」
俺はそう言い残してはやてと共に教室を出た。
「単刀直入に言うわ。零治君、次の生徒会長あなたがやりなさい」
生徒会室に着いたとたんの会長の第一声がこれだった。
なぜか分からないが、カーテンをすべて閉め、部屋を暗くし、会長の机にあるスタンドだけがついていた。不気味すぎる………
なので俺は………
「間違えました、失礼します。いくぞはやて」
「う、うん」
俺ははやてを連れて生徒会室を後にしようとする。
「ちっ仕方がない、確保ー!!」
会長の掛け声と共に暗闇から現れる生徒会員。
「ちょ!?確保って!」
「どこさわってんねん!この変態!!」
俺とはやては最初こそ撃退したが、いきなりでしかもこちらは2人。あっという間に拘束された。
「流石は零治君とはやてちゃんだね」
「何の真似です?」
「だって2人、直ぐに帰るんだもん」
「そりゃ、こんな不気味な所に入りたないわ」
未だに電気は会長の机にあるスタンドだけ。
部屋の電気はまだ点けていない。
「で、何のようです?」
「勧誘。零治君には次の生徒会選挙に出て欲しいのよ」
「生徒会選挙?そんなのあったっけ?」
「零治君、寝てたやろ………」
「生徒会選挙は生徒会長を決める選挙よ。会長だけは選挙で決めるのよ」
そうなのか。前の学校は全部の役職を決めてたからちょっと違うな。
「他の役職はどないするんですか?」
「なんだ、はやても知らないじゃん」
「やかましいわ」
「他の役職は会長が自分で集めるの。自分がやり易い生徒会がいいでしょ」
それだと遊びみたいにならないか?
まぁそれも会長次第ってことか。
「で、何で俺なんですか?」
「前の時も思ったんだけど、零治君って自分で思っている以上に人を引き付ける力があると思うの。はやてちゃんと二人のコンビだったらこの中学がもっと面白くなると思ったから」
何かいつの間にか凄い評価高いんですけど………
「確かに零治君はそんな感じするなぁ」
はやてまでかよ………
「嫌ですよ。俺、そんな柄じゃ無いんで………」
「そう、まぁいいわ。すぐいい返事をもらえるとは思っていなかったから。取り敢えず頭には入れといて頂戴」
「まぁ了解しました」
「じゃあ次は期末のあとにやる企画の事を相談しましょう」
その後、俺とはやては何故か生徒会メンバーと一緒に下校時間ギリギリまで打ち合わせをしていた。
「零治君、ええんか?」
帰り道、そのままの流れではやてが会長との話をしてきた。
「ああ、俺は嫌だよ。俺は基本、静かに平凡に過ごしたいんだよ」
「でも、私も会長が言う通りだと思うで。私達も直ぐに零治君とは親しくなれたやん」
「お前たちが変わってるんだよ」
お前たちは人が良すぎるんだよ。学校の省かれ者の俺に簡単に話しかけてくるところなんかは。そんなんじゃ、いつか足元をすくわれると思うぞ。
「………世の中はそんなに優しくはないからな」
「?何のことや?」
「独り言だ。それにはやては管理局員だろ。そうなると副会長に出来ないだろうが」
「そ、それって、私が…………」
「はやてを巻き込めないならやったって意味ないだろ」
「そうやろうと思ったわ!!」
頭をハリセンで叩かれた。
なして?
その後、はやては不機嫌だったが、下らない話をしながら俺達は帰路に着いたのだった。
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