弱点
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1部分:第一章
第一章
弱点
秋山陽子は成績優秀、容姿端麗で知られている。
クラスでは女子のクラス委員としてしっかり者でもあった。部活は軽音楽部でヴォーカルである。
色白で髪は肩が完全に隠れるまで伸ばしている。髪の色は黒だ。二重の切れ長の目はやや斜め上になっている。口は普通より少し大きく唇は薄い。背はそれ程高くはないが脚が奇麗だ。全体的にすらりとしている。
確かに見事な容姿である。運動もであった。
「うわ、またやったわね」
「いい記録出してるわ」
「足速いわね」
軽音楽部にしておくのが惜しいとだ。陸上部員に言われる程脚が速い。しかも跳躍も得意だ。つまり運動神経も見事なのだ。
まさに完璧であった。高校きっての才媛とまで言われていた。おまけに性格もしっかりとしていて公平で面倒見がいい。困ったところは何もないようであった。
そんな彼女なので誰からも好かれていた。奢るところもないので余計にだった。しかしだ。
皆こうも思うのだった。そんな彼女を見てだ。
「確かに凄い娘だけれど」
「弱点何もなし?」
「欠点とかないのかしら」
「どうなのかしら」
人間誰でも欠点や弱点がある。その言葉を彼女にあてはめて考えるのであった。
「今のところそれはないけれど」
「けれど何かあるよね」
「そうよね、何か絶対に」
「あるけれど」
こう考える。しかしだった。
どうしてもそれは見つからなかった。部活においても見事な歌唱を聴かせてくれる。歌も上手いのであった。余計に弱点がなかった。
「ベースの演奏も上手いし」
「音楽もいける」
「じゃあ弱点ないのかな」
「そうなるのかな」
皆そう思い出した。彼女があまりにも何でもできるのでだ。
そんな中でだ。文化祭の日が来たのであった。
あるクラスでだ。この出し物になったのであった。
「お化け屋敷にするか」
「そうだよな。ここはとびきり怖くな」
「そんなのにするか」
「ああ、徹底的に怖いのにしような」
そう話してであった。そのクラスはとにかく恐ろしい、誰もが怖がるようなお化け屋敷をすることにしたのであった。それが決まったのであった。
また陽子のクラスではだ。女の子達がこんな話をしていた。
「えっ、出るのあそこ」
「そうなのよ。出るらしいのよ」
何かが出るという話が為されていた。
「どうやらね」
「それマジだったの」
「本当の話だったの」
「そうみたいよ」
興味本位の真面目さでだ。女の子達は顔を見合わせて話していた。その顔は今にもお互いくっつきそうにまでなってだ。そのうえで話していた。
「あの山に登るとね」
「後ろから一本足の片目のお化けが出て」
「血を吸うって」
「本当だったんだ」
「それって滅茶苦茶怖いじゃない」
「だからよ」
中心になってその話をする娘がここで集まっている皆に話した。
「その日はその山には絶対に登るなって言われてるのよ」
「登ればそのお化けにやられるから」
「だからね」
そしてだった。言われることはだ。
「その山にはその日は絶対に登るな」
「そういうことね」
「つまりは」
「そう、絶対によ」
話をする娘がまた話す。
「そう言われているのよ」
「成程ねえ」
「怖い話もあるわね」
「世間には」
そんな話をしていた。その時だ。
陽子は自分の席にいてそうしてそこから動かない。何処かはなしを聞かないようにしてだ。そこに蹲っているのであった。
話をしていた女の子達は彼女に気付いてだ。声をかけた。
「あれっ、陽子ちゃんどうしたの?」
「何かあったの?」
「元気ないみたいだけれど」
「べ、別に」
話を聞いてだ。びくりとなって返す感じだった。
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