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浪速のど根性

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3部分:第三章


第三章

「わかっとるな」
「ああ、大丈夫や」
 グローブを打ち合わせながら部員達の言葉に応える。リングの周りには相手の学校の部員達もいれば自分の学校の部員達もいる。新聞部もいたりする。
「おい登坂」
「今日は勝つんやろな」
「アホ、今日もやろが」
 新聞部の言葉にムキになってすぐに言い返す。
「今日も勝つんやろが。訂正しとかんかい」
「うるさいわ、御前の記事いうたらいつも今回も成績最下位かこれしかないんじゃ」
「悔しかったら他のニュース提供せんかい」
「何しろいうんや」
「スキャンダルでも起こせや」
「酒とか煙草とかな」
 彼等も無茶苦茶を言う。
「やってみいや」
「ほれほれ」
「そんなんしたらボクシングできんやろが」
 煽りに本気で返している。
「酒とか煙草とかな、身体に悪いやろが」
「その前に校則違反やっちゅうねん」
「御前いい加減校則位読んどけや」
「くそっ、新聞部の奴等は口が強いわ」
「それよりええか?」
「最後の打ち合わせすんぞ」
 そんな彼に対して部員達が言ってきた。新聞部と口喧嘩をした彼に立腹している感じだ。
「それでや。相手はな」
「腕が御前より長い」
「腕がか」
 自分の腕を見つつ彼等の話を聞く。
「そや、リーチがちゃう」
「そこはわかっとるやろな」
「ああ」
 彼は部員達の言葉に頷く。今度は真剣な面持ちだった。
「それはな。わかっとるで」
「そやったらええな」
「それでフットワークは御前の方が上や」
「それやったら負けんで」
 真剣な顔のまままた頷いた。
「誰にもな。じゃあ足で攻めるわ」
「ああ、そうしろ」
「そうすれば勝てるで」
「よっしゃ」
 ここまで話して意を決した顔をあげた。
「じゃあそろそろゴングやな。正面からぶつかるで」
「勝てや」
「俺が負けるかい」
 燃える目で相手を見据えつつ応える。既に身体も相手に向けている。既に戦闘態勢に入っている。
「ほな行くで」
「ああ、やったれ」
「打ちのめして来い」
 こう彼に声をかけて試合に行かせる。試合は相手のリーチを意識しつつ慎重に進める。互いに小競り合いを続けつつ数ラウンドを過ごし遂には最終ラウンドとなった。
 最終ラウンドに向かう前に。また部員達から話を聞いていた。
「今のところ互角や」
「このままやったら引き分けやぞ」
「ああ、わかっとる」
 リングの上で屈伸しつつ彼等に応える。グローブを嵌めた手はロープにかけている。
「いよいよや。やったるで」
「やるんか?」
「相手見てみい」
 ここで部員達に相手を見るように言った。
「どうなっとる?」
「ばてとるわ」
「まあそやろな」
 彼等は相手を見てそれぞれ言った。見ればその相手はもうかなりばてている。小勢り合いばかりだったというのに肩で息をしている。
「あれだけ動き回ったらな」
「御前に合わせてな」
「体力でも負けんで」
 守はこう言って不敵な笑みを浮かべてみせた。
「フットワークとこれやったな。誰でもな」
「そやな。御前にはな」
「殆どの奴がその二つでは勝てへん」
 どうやらこの二つが彼の長所であるらしい。見たところそれ程大きくはなく腕も短い。しあkしその彼でも長所を活かしているのだった。
 
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