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真田十勇士

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巻ノ二十六 江戸その十一

「何かと汚かったですな」
「毛利元就殿も色々されたというが」 
 西国において謀神と言われていた、幸村は彼のことも聞いていた。
「しかしあの方は己の為に使われてはおらぬ」
「そのお三方と違い」 
 こう言ったのは望月だった。
「汚い謀略でもですか」
「あの方はまだよかった、しかしじゃ」
 本当にと言った幸村だった。
「松永殿や宇喜多殿は度を過ぎておられた、毛利殿よりも遥かにな」
「ではです」
 猿飛は主に顔を向けて問うた。
「それがし都で南禅寺の住職の方を聞きましたが」
「南禅寺。都でも名刹じゃな」78
「以心崇伝殿といいまして」
「聞いたことがあるが」
「学識gは相当とのことですが」
「謀も使われてか」
「その学を曲げてまで相手を攻めることもあるとか」
 猿飛は顔を顰めさせてその僧侶のことを話した。
「陥れ蹴落とし」
「そして南禅寺の住職にもじゃな」
「なったとの」
「曲学阿世か、それはな」
「いけませぬな」
「汚い謀の中でもな」
 とりわけ、というのだった。
「ならぬものじゃ」
「左様ですか」
「そういえば聞いた、その崇伝殿はな」
「よくない方ですな」
「僧侶というよりはじゃ」 
 むしろと言うのだった。
「天魔と言う方が近い」
「そうした方ですか」
「悪名高い方とのこと、そうした方はな」
「特にですな」
「あってはならぬ」
 こう猿飛にも他の者達にも言う。
「決してな」
「そうなりますな」
「やはりな」
 こう言うのだった。
「それは最悪の謀じゃ」
「汚い謀の中でも」
「とりわけ」
「そうなりますか」
「そう思う、拙者はな」 
 学を曲げてまで相手を陥れそして南禅寺の住職になった崇伝はというのだ。
「あってはならぬ謀をされる方じゃ」
「例え謀は使ってもですか」
「学を曲げてはならぬ」
「そうしてはですか」
「そうじゃ、僧侶は学ぶ立場でもある」
 ただ教えをだ、人に教え伝えたり修行をしたりするだけでなくだ。このことは仏教伝来からのことである。
「まして南禅寺の住職ともなればな」
「深い学識をですか」
「備えておられる」
「そのことは間違いないからこそ」
「学を曲げてはならぬ」
「そうなのですな」
「誰であろうとしてはならぬが」
 それでもというのだ。
「高位の僧であれば尚更。身を正してな」
「邪な謀は使わぬ」
「そうあるべきですか」
「それを忘れた時はな」
 まさにと言うのだった。 
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