本気で挑むダンジョン攻略記
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Chapter Ⅰ:to the beginning
プロローグ
前書き
以前「ハーメルン」の方で掲載していましたがこっちに移転しました。バックアップはとって無かったのでもう一度書きなおしてます。もしかしたら少し変わってるかもしれません。
まあ、初見の人も、知ってる人も是非どうぞ。
2016/01/24 加筆修正
転生、というものをご存知だろうか?
この場合の転生というのは宗教などで良く耳にする「輪廻転生」ではなく、二次小説で良く見かける「お詫びに転生させてあげるよ」的な奴の事だ。
え?何故それを今聞くかって?
おいおい、このくらい察しがつくだろ。実はいるんですよ。俺の目の前に「私は神です」と言って来る怪しい奴が。
「あの、幾ら何でもその言い方は失礼ではありませんか?」
「気のせいでは?自分は今まで喋ってませんでしたし。」
さっきから此方の頭の中を読んだかの如く話しかけてくるが、気のせい気のせい。それに残念だったな。もし失礼な事を考えていても違うと言い張れば物的証拠は無いのだから無罪だ。そんなんだから胸部装甲も残念なのだ。
「あ"?」
「すいません。謝りますからどうかその右手に凝縮されたエネルギーみたいな奴どうにかしてください。」
反省。調子に乗りすぎた。ていうかマジで何だよそのエネルギー。
「…っていうか、もしかしてさっきから本当に心を読んでます?」
「ええ。プライバシーは此方としても尊重しますが、ずっとだんまりでしたので少々読ませて戴きました。」
さいですか。これはもう神様で良いんじゃね?さっきまで散々疑ってたけどそもそも現実逃避でもあったのは自覚してるし。
「話を進めますね。貴方には転生していただきます」
「何で俺?自殺はしたけど別に未練とかは無いぜ?」
「丁度自殺している人がいたので連れてきたら貴方でした。」
「じゃあ他の人にしよう。恵まれない人生を過ごした人にチャンスを!」
「却下。」
「解せぬ。」
そんな即答しなくても良いじゃない。というかマジで俺転生しなきゃいけない訳ですか。
「転生って何所に行くの?」
「それを今から決めましょう。これから一枚引いてくださいね」
俺の目の前に伏せられた五枚の札が現れる。
「それはジャンルです。『アニメ』、『ラノベ・小説』、『マンガ』、『映画』、『ゲーム』の五種類から更に『学園・恋愛系』、『スポーツ系』、『ホラー&ミステリー』、『ファンタジー』、『日常系』へと派生させます」
「やけに細けーな、おい」
「あくまで本人の運で選んだという形にしたいですから。こっちには責任はありませんという意思表示でもあります。」
「王道バトルとかロボットとかは無いのな」
「死亡率が高いですから除外しました。転生してすぐに死なれても困りますし。」
「まあ、確かにそうだ。」
神様っていうくらいだから色々と大変なのだろう。あくまで想像だが。そんな忙しい合間にわざわざ転生させた奴がコロッと死んでしまったら確かに堪ったものじゃないだろう。
「真ん中の札で」
「『ラノベ・小説』ですね。それでは次です。」
「次も真ん中で」
「『ファンタジー』ですね。」
ラノベのファンタジー作品か...色々とあるが総じて魔法やら何やらがある作品ばかりの筈。良いね。心が躍る。
「ファンタジーつっても死亡率は低めなんだろ?」
「勿論です。まあ、貴方が先程まで生きていた世界で交通事故で死ぬよりは高い確率であるのは否めないですが。」
「そんなんで十分だよ。というか交通事故って殆ど不注意とかが原因だろうから結局自分次第じゃん」
「そう言って貰えると助かります。それでは最後に原作を選びましょうか。7枚の中から選んでくださいね。内容はランダムなので私も知りませんが。」
俺の前に現れる7枚の札。
ごくり。
さっきまでは割と適当に決めたが、これで俺の次の人生が決まるとなると急に緊張してきた。それこそラノベのファンタジーだろ?主人公が「お〇ぱい」連呼する某作品のようなものを選んだら一般人にはひとたまりも無いだろう。
「ふぅ...真ん中で。」
男は度胸。覚悟を決めて先程までと同様に真ん中を選ぶ。結果は――
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』
「いよっしゃああぁぁぁッッ―――!!!!」
何とか一般人でも無事に切り抜けられる作品を引き当てた。しかも原作をある程度知っている世界だ。友人に進められてアニメだけだが見た甲斐があったというものだ。冒険者にならなければ安全な一生が過ごせるだろうし、冒険者になるとしても商業系や生産系のファミリアなら大丈夫な筈。まあ、個人的にはあの世界の神々ってそんなに好きじゃないからファミリアには入らない方向で行こう。
「なかなかの当たりを引きましたね。」
「あ、やっぱりそうなん?ってか他の札は何なの?」
「今回はこれでした。」
『ハイスクールD×D』、『灼眼のシャナ』、『新世界より』、『Fate/zero』、『終わりのセラフ小説版』、『オーバーロード』
「怖いわ!わざとやってないよね!?」
「まさか。それにどうせ行かないのだから気にしてもしょうがないでしょう」
「…それもそうだな。すまん」
「いえ。それでは特典を決めましょう。決めるのは個数です。その個数だけ好きな特典を上げましょう。」
そう言って神様が取りだしたのはトランプ。未開封のそれを開け、上から13枚のカードをとる。
「エース(1)からキング(13)までのトランプのカードがランダムに13枚あります。これから貴方が引いたカードの番号が個数です。」
「OK。じゃあ初志貫徹って事で真ん中で。」
そう言って俺が引いたのは『9』だった。
「9か。まあまあだな」
「いえ、中々高い方ですよ?」
「え?」
いやいや、エース(1)からキング(13)まであるトランプをランダムに13枚って...あっ!?
「お気づきのようですね。私は別に"エースからキングまで1枚ずつとは言ってません"から。」
そうして開かれた残りの12枚は全てエース(1)から3までの数だった。
「…やっぱり狙ってやってません?」
「まさか。先程言ったでしょう?ランダムだと。天文学的な確率ですが、万が一という奴が一発目に来た、それだけでしょう。」
「そもそも未開封の奴をシャッフルしてないのに何でその並びなんですか...」
「しましたよ?迅すぎて見えなかっただけでしょう。」
「ナニソレコワイ」
トランプとか庶民的だなぁとか思ってたのにいらんところで神様クオリティだった。
「それに、先程も言ったようにどうせ結果は変わりません。」
「はいはい。そういう事にしておきますよ。それで特典ですよね。何でも良いんですか?」
「ええ。後これは個人的なアドバイスですが持ってくる特典の元ネタは一つの作品に絞った方が良いです。パワーバランスとか色々と補正もかかりますし、悪影響もありますので」
「例えば?」
「この前『鋼の錬金術師』の手合わせ錬成の錬金術と『とある魔術の禁書目録』の異能無効化能力の手を願った者がいたのですが、結局手合わせ錬成出来ずに直ぐに死にました。」
「それは只のアホだろ」
「私もそう思います。後、随分前に『Fate/staynight』のランサーの宝具と『ルパン三世』の次元の射撃能力を願った者は結局作中での結果から銃は必中するが宝具は必中しないという補正が...」
「兄貴ィ―――!!!」
それは不憫すぎる!ランサーの兄貴はカッコイイんだぞ!それをあんなおっさんの方が上だと!?
「かくなる上は俺がその常識を覆す!」
「結果は変わりませんからね?」
「…やっぱり辞めときます」
誰だって自分の身が可愛いのさ。すまん、兄貴。
「取り敢えず、出来れば一作品で固めれば良いんだろ?」
「ええ。あくまで個人的なアドバイスですが。補正はそこまでかからないかと。」
特典か...別に戦闘系のスキルでも良いが折角転生するのだ。わざわざ死亡率が高い冒険者になる必要も無いしやっぱり生活系か?料理、掃除、洗濯は勿論言語や商売の才能も便利だろう。いや、可愛い娘捕まえるためにイケメンになるのも男としては捨てがたい。
「あ、一つだけ言い忘れてました。転生する際にノルマが課せられます」
「へえ、そういうのがあるんだ。主人公と関われとかそんな感じ?後は何歳まで生きろ~とか?」
「ダンジョンを制覇する事です」
「…ごめん。耳がおかしいみたいだ。もう一度言ってくれない?」
「ダンジョンを制覇する事です」
「嘘だよね?」
「ダンジョンを制覇する事です」
「何度も言わなくても良いよ!?ていうかマジで!!?」
嘘だろ...確か原作のトップランカー達ですら60あたりをうろちょろしてた筈だ。そんなダンジョンを制覇しろと?
「そもそもあのダンジョンって何層あるんだよ...」
「あ~、そう言えば分かりませんでしたね。じゃあ100層って事で。」
「そういうのも変えられんの?」
「私、神様ですから」
「良く分からんけど、凄いのは分かった。」
あのダンジョンをクリア。クリアか...
これは特典全て戦闘系にする覚悟がいるな。
さようなら、俺の平和な人生よ。
「ノルマの期限は貴方が死ぬまでです。ダンジョンで死のうが病気で死のうが老衰で死のうが事故で死のうが殺されようがそれは変わりません。」
「じゃあサクッとクリアしてその後の人生を謳歌するのはアリ?」
「可能ですよ。要はクリアすれば良いのです。特にそれ以外に此方からの干渉はしませんから。あ、クリアできなかったら罰ゲームが待ってます。」
「…ちなみに、どんな?」
「…聞かない方が良いと思います。」
絶対にクリアする。そう決めた瞬間だった。だってあの神様の目からハイライトが消えたんだもの。
そうは言っても、俺一人でクリアするのはかなり難しいだろう。余程強い特典をつけたところで食料はいるしサポートはいるに限る。不眠不休で何日も戦えるように特典で望めなくは無いのだろうがそこまで人間を辞めたくない。仮に冒険者のトップランカー達を連れていたとしても果たして彼らが100層まで行けるのか...
「あ、特典で他作品のキャラを連れて行っても良いの?」
「ええ。一つにつき一人ですが可能です。作品が纏まってれば先程言ったように補正も殆どかからないかと思います。」
「分かった。ありがと。」
つまり、俺に必要なのは自分でも戦える力と、役に立つ頼もしい仲間だ。その条件を満たすものと言えば誰がいるだろうか。先程話に上がったランサーの兄貴はどうだろうか。サーヴァントとなれば十分な強さだろう。いや、ちょっと待て。サーヴァントの維持には魔力が必要な筈。サーヴァント数体とかは流石に維持だけで手一杯になりそうだ。サーヴァントクラスで特にこっちに負担もかけずに戦える規格外な奴らはいないのか。
というか、まず俺自身の特典も決めなきゃいけないじゃん。そういう奴らが沢山いる作品で最強の能力..
「『Dies irae』のラインハルト・ハイドリヒの永劫破壊(エイヴィヒカイト)にしよう」
「…は?」
「そんでもって残った特典で黒円卓を出来るだけ連れて行こう」
そうじゃん。こいつらだよこいつら。こっちが維持しなくても良い強い奴ら。これならダンジョンも制覇できそうだ。
ん?どうしたんだよ神様。こっちをあり得ないかのような目で眺めて。
「…普通、こういうのって"ファミリア入ってステータス上げて最強になってやる"とかいう流れじゃなかったですか?」
「いや、そんな段階踏んでたら時間が無いし。」
「そもそもさっきまでサーヴァント考えてましたよね?サーヴァントなら魔力消費の分でギリギリ納得のいく範囲だったのですが何故...」
「強いし。それにカッコイイし。」
「しかも何故ラインハルト・ハイドリヒ...」
いやいや、カッコイイじゃん獣殿。やっぱり藤井蓮と迷ったんだが、『鋼の錬金術師』なら大総統閣下、『ガンダム』ならシャアが好きな俺だ。どちらを選ぶかなど目に見えてるだろ?
「そもそも永劫破壊(エイヴィヒカイト)はラインハルト・ハイドリヒと同化しなければ使えませんよ?」
「え?そうなん?」
「渇望が違いますし、魂というか存在の強度が違いますから。特典使って聖遺物、肉体との同化をすれば使えるとは思いますが...」
「取り敢えず簡潔に言うと?」
「特典3つ使えば一応ハイドリヒ卿になって永劫破壊(エイヴィヒカイト)が使えます。」
「よし、採用」
結局のところカール・クラフトを除けば黒円卓最強だ。特典2つで連れて行ける黒円卓メンバー二人分と思えば、どちらが上かなど比べるまでもない。
「じゃあ残りのメンバーだけど、こっちも人物と永劫破壊(エイヴィヒカイト)は別々?」
「いえ、此方はそこまで手を加えませんのでセットで特典一つ分です。ただし本来とは別の聖遺物をつけるならば2つ分です。」
「取り敢えずまず3人。ザミエル、ルサルカ、シュライバーね。」
ザミエルさんは絶対に連れて行きたい。何せおそらくカール・クラフトを除いて黒円卓で一番"頭脳(ブレイン)"としての適性が高いから。やはりダンジョンに潜る以上指揮官は必要だろう。
ルサルカは単純に俺の好み。だって可愛いだろ、ルサルカ。それに永劫破壊(エイヴィヒカイト)以外の魔術も使える筈だ。むしろ彼女の汎用性に期待している。
シュライバーは単純に最強の戦力としてだ。ぶっちゃけ黒円卓で最恐の能力だと俺は思っている。良くあれに勝てたな、主人公たちは。
「残りは3人ですよ。」
「あのさ、リザさんとトバルカインのセットとかは無理だよね?」
「ええ。あくまで一人で特典一つです。」
「じゃあリザさんと、『黒円卓の聖槍(ヴェヴェルスブルグ・ロンギヌス)』単体で」
「聖遺物単体でよろしいのですか?」
「うん。トバルカインの正体を知っている身としてはやっぱりちょっとね。ザミエルにも何か悪いし。」
「貴方の決めた事なら別に良いでしょう。」
「あ、出来れば"櫻井"の一族以外でも使えると嬉しいんだけど」
「そこは補正でいけますね。そもそも"櫻井"の一族がいませんから。」
「そっか。それは良かった。」
「それでは最後の一人です」
「…ベイ中尉かな。割と好きなキャラだったし。」
「分かりました。以上で特典は全て決まりましたが、変更はありますか?今ならまだ変えられますが」
獣殿の力に黒円卓5人、そして聖遺物が1つ。十分だな。
「いや、十分だよ。ありがとね、相談に乗ってくれて。」
それにしても何故こんなに親身に説明してくれてるのに今までの転生者達はバカみたいな特典の組み合わせをしたんだ?
「というか、今までの人達にも同じように説明してるんだよね?」
「…ええ。ただ、所謂踏み台ばかりで、その...」
「…君も苦労してるんだね。」
「分かってくれますか。」
「お疲れ様です。」
全く、こんなに親切なチュートリアルは珍しいんだから、ちゃんと話を聞かないと。
それこそ俺みたいに真面目にね!
「いえ、貴方も十分に問題児だと思います」
「解せぬ」
そんなに俺って変な事をしたか?ただダンジョンをクリアしたいだけだぞ?仮に問題児的な事をしているとしてもノルマ達成の為の不可抗力だろう。そう、仕方なかったんだ。
「開き直らないでください。」
「はい、すいません」
「後は転生するだけですが、穴が開くタイプと意識が薄れていくタイプ、どちらが良いですか?」
「意識が薄れる方で。」
むしろ逆を選ぶ奴がいるのか?
とそんな事を考えているうちに意識が...
「それでは私が出来る事は以上です。ノルマの達成を心から願っていますよ」
最後に何か神様が言っていた気がしたのだが、結局聞き取れないまま俺の意識は売れていった。
「貴方の為に私の方で色々と手は加えておきました。十分に楽しんで貰えると思いますよ?」
「それこそ、十分にね」
後書き
反省はしている。後悔はしていない( ー`дー´)キリッ
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