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ガンダムBF・トライリベリオン

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File1

 
前書き
お久しぶりの2話目でございます。今回は説明回になってしまいました。どうぞ、よろしくお願いします 

 

ガンダム。それは、1979年に子供向けに制作されたロボットアニメだ。2020年の現在まで40年以上続いているその作品は、コミカライズやノベライズを含めればシリーズの数は100を超える。
そして、アニメやその他のガンダム作品に登場する機動兵器の模型、通称「ガンプラ」も40年の時と共に進化を続けた。完成度、価格、作りやすさなど、プラモデルといえばガンプラと言っても過言ではないほどに成長を遂げた。
そして、ガンダムの長い歴史を記念して、遂に自らの作ったガンプラを操り戦わせるゲーム。ガンプラバトルが実装された。
ガンプラバトルは全世界で爆発的な人気を誇り、今ではオリンピックにも等しい大会が行われるほどである。

「そしてその選手を育成するための学園の一つが、このガンプラ第3学園なのです……へぇ、お偉いさん達も随分と酔狂なことを考えるね」

自宅に届いたチラシに書いてある物を読みながら、少年はコタツに寝転んだ。季節は年明けの三ヶ日も終わった1月7日。中学三年生の彼にとっては志望校を決めて勉強をしなければ危険な時期なのだが、そんな様子は彼には全く見られない。単に頭がいいのか、それとも高校に行く気が無いのか。

「で、どうだいアラタ。行く気になったかい?」

そう少年、アラタに問いかけてきたのは、対面上に座っている老婆だった。老婆とはいうが、弱々しさは見れず下手をすればまだ白髪の40代と言っても過言では無い。
その老婆に、アラタはポイとチラシをコタツの上に置いた。

「別に、興味無いよ。ガンプラは好きだけどアルバイトしなくちゃいけないし」
「しなくていいわよ。高校くらい行きなさい」
「だから定時制高校でいいよ」
「駄目よ。ちゃんとした学校いかないと」
「ガンプラ学園だってちゃんとした学校とは言えない気がするけどね〜」

ヘラヘラと笑いながらアラタはコタツから出て自分の部屋へと階段を上っていった。
部屋にあるのは、必要最低限な物。勉強机にベットにタンス。唯一最低限のものでは無いのは、勉強机の上にある模型工作に使われる道具と一体のプラモデルが直立しているものだけだ。
赤と黒の翼に、背中にあるウェポンラックに収納してある折りたたみ式の長剣とレーザーキャノンを背負っている。そのフェイスは目の下に赤いラインが入っており、どこかダークサイドのイメージがある。トリコロールのそのボディには、切り取った後などまるでなく、まるで元からそうであったかのような完成度を誇っている。
RGデスティニーガンダム。それがそのプラモデル、ガンプラの名前だ。

「ガンプラ学園とか……いい加減、婆さんに迷惑もかけられんしなぁ」

確かにガンプラもガンプラバトルも大好きだ。だが、ガンプラ学園ともなると全国から選りすぐりのファイターが集まり、受験をするのだから、自分が合格する可能性など0に等しいだろう。
受験するにも多大な金額が必要となる。もう祖母に迷惑は掛けられないのだ。

「とは言っても、バトルはやっぱりしたくなるよなぁ」

ベットから立ち上がり、机の上にあったデスティニーガンダムを手に取る。もう正月も終わって数日。
そこら変のゲームセンターや、模型店に行けばバトルシステムは使えるだろう。やるとこもないし、定時制高校だろうとさすがに三学期が始まればそれなりの勉強をしなくてはならない。ならば、思いっきりバトれるのもこの時期が最後だろう。だとしたら、いまのうちに楽しんでおくとしよう。
クローゼットから取り出した適当な服に着替え、デスティニーガンダムを専用のケースに入れて階段を降りて行った。

「婆さん、俺ちょっと出かけてくるから、なんかあったら連絡して」
「はいよ〜。気をつけてね〜」

ガラガラと玄関を開け、いつもの通りへと歩いていく。ごく普通の商店街の通りは相変わらず平常運行で、特に変わりはない。
強いて変わっているところを探すとしたら、電気屋にある大型テレビから流れている映像だろうか。

『本日のゲストは、人気急上昇中の新人歌手、ヒラガオカ・チサキさんです』

流れているのは、年末年始によく放送される長寿番組の特番。テレビでよく見る初老の男と、それとは対照的な若く美しい少女が話している。
紫がかった長い髪を頭の横で纏めている。俗に言うサイドテールというやつだ。目は綺麗な空色。スタイルは少女とは思えないほどグラマラスなもので、それも彼女の人気のひとつなのだろう。

「へぇ、最近人気なんだなこの人」

人気だとしても、アラタは全くと言っていいほど知らない。テレビはあるが、未だにブラウン管、しかも見るとしてもガンプラバトルの中継か、ニュースぐらいしか見ていない。あまり興味がなかった為に、今の中学ではあまり友人もいないし、彼女の歌も聞いたことがない。

『最近はどう?学校には行けてるの?』
『そうですね。仕事の合間を縫って行けるようにはしてます。やっぱり、学校は楽しいので』
『あれ、確か中高一貫だったよね?』
『はい。だから、頑張らないと進級できないかもしれないので』

そう言って笑っている彼女は、とても自分と同い年の女の子には見えない。きっと数々の修羅場を経験してきているのだろう。

『それでは、聞いていただきましょう。ヒラガオカ・チサキさんで、“オラシオン”です』

司会者が進めていくと、スポットライトが移動した彼女の元に集まり、ヒラガオカ・チサキのステージが始まる。
寒さに体が堪えてきたアラタは、そのステージが気になりながらも電気屋から立ち去り、行きつけの模型店へと向かっていった。


商店街の通りには、数多くの人が集まる。老若男女様々だ。そこに似合う人もいれば、明らかに場違いな人だっている。
その中でも、明らかにこんな商店街は不似合いな女性がいた。

黒いスーツ姿のその女性は、長い黒髪にスーツの上から純白の白衣を身に纏った美女。キョロキョロと辺りを見渡しながら歩く姿は何かを探しているように見える。

「おかしいな……ここら辺の筈なんだが…」

女性はその手に握られたメモとにらめっこしながら歩いている。どうやら相当の方向音痴らしい。さっきから同じ場所を行ったり来たりしている。
ピッチリと締めていたネクタイを緩め、ガリガリと頭を掻き毟る。その姿からは、品性の欠片も感じられない。
フラフラとしていると、町の商店街らしい模型店が目に入った。そこには沢山の子供達が集まりガンプラバトルを楽しんでいる。思えば自分にもあんな時代があったのに、今では行き遅れのおばさんギリギリになってしまった。

「とりあえず、あそこで道を聞いてみるか……歩くのも疲れたし……」

溜息を吐きながら、その模型店へと入っていった。中は年明けということもありそれなりに賑わっている。
小さな子供が大半で、その中にチラホラと大人も混ざっている。恐らくは実業団の選手達だったりするのだろう。
中を見ながら歩いていると、一人見たことのある顔がいた。
髪はやや長めで尖ったように逆立っている。黒髪に黒目の少し細めの少年。
名前を知っているわけでは無い。ただ、何度か顔を見たことがあるというだけで、名前までは知らず、どこで見たかも覚えていない。
そこまでハッキリと覚えていないということは、大した人物でもなかったのだろう。
女性はそう割り切り、店内の中央にあるバトルスペースへと歩いていく。

「いけぇ!Zガンダム!」
「はっはっは!ザクとは違うのだよ、ザクとは‼︎」

バトルスペースでは、小学生程度の少年と、父親らしき中年の男性が年齢を感じさせる台詞を言いながらガンプラを操作している。
この仲の良いおやこはの様に、周りでも複数の組が各々のガンプラで戦っている。
まだまだ未熟なものから、高い完成度を誇る熟年の物まで様々だ。
数多くの人が集まるゆえに、下手をすれば柄の悪い客まで入ることがたまにある。

「おらぁ!サッサとドキやがれ‼︎」

そう。こんな感じにマナーを守らないタイプの人間が来ることもしばしばだ。
時代錯誤な不良と言った服装をした大柄な男と、腰巾着のような小太りの男の二人組が楽しくバトルをしていた家族を押しのけていく。父親らしき男は、半泣きになっている少年を庇いながら歩き出す。
本当なら、チンピラに文句の一つでも言いたかったのだろうが、子供がいる手前、あまり危ない行動には出れなかったのだろう。

ーその行動は間違いではないよ。

女性は胸の内で男性をねぎらい、ため息をついてからチンピラを睨みつけた。
男は取り巻きのチンピラと自分のガンプラでバトルをしている。
その姿にイラつき、自らのガンプラで手を下そうとした時、そのチンピラ2人に挑む少年がいた。
黒い髪に、黒い目。その手に握られた赤いツバサを持つガンプラ。
立ち向かうその姿で、漸く彼が誰か思い出した。

「運命使いの、クサナギか?」

 
 

 
後書き
次回には、デスティニーのバトルに入れますので、よろしくお願いします。 
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