ヴァンパイア騎士【黎明の光】
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黒主学園、開校。
9
「ま、入学早々不真面目な態度をとった罰って事だな」
「なら今すぐ謝りますっ!」
「適当に喜んどけ。お前らが記念すべき守護役第二代目だ」
いつの間にか、私は理事長がいるステージまで連れて来られてしまったらしい。
硬い床の上にすとん、と爪先を付いたのを見届けて、鷹宮先生が離れる。
お前らって何だろう。
その疑問はすぐに解消された。
私と同じくステージに立たされている男の子。
銀色の髪の――綺麗な人だけど、彼は夜間部の生徒ではないようだった。私と同じ黒い制服を身に付けている。
彼の手には空色の小さな折り鶴が乗っていて、それを無表情で眺めている。
……この人も風紀委員に選ばれたのが不本意なのかな。
心の中でそっと同情する。
「君たち、宜しく頼むよ!」
理事長がニコニコと私達に近寄ってくる。
手には黒い腕章を持って、それを一枚ずつ私と空色の折り鶴の彼に装着した。
「これは?」
「風紀委員の証である腕章だよ。これからはこれをずっと付けておくように」
尋ねると、理事長はにこやかに応じてくれた。――が、この有無を言わさない感じが何とも。
私は小声ではい、と答えるしか出来なかった。
この学園の教師たちは人の話を聞かない特性があるみたい。
再びマイクを握り、何かを語り出す理事長からため息混じりに顔を背けると、空色の折り鶴の人と目が合った。
うわ!
思わず声に出そうになったけど、片手で口を押さえる。
緩く片側の眉を寄せ、何かを偵察するかのような顔付きだ。……品定め、されてる?
「あんた……」
低い声が発せられる。
明らかに私に対してであろうその問い?に、何故か背筋が伸びる。
「な、何でしょう……」
上擦った声で応じるが、彼は唇を結んだままさっきと同じ怖い顔付きで私を睨んでいる。
……何なの、いったい!
心の中で喚いた途端ふっと彼の表情が弛んだ。さっきと同じ無表情に戻り、私に興味を失ったかのように目線を外す。
拍子抜けする私を余所に、彼はぼそりとこう言った。
「気のせいだった…何でもない」
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