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硝子の心

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3部分:第三章


第三章

「カラオケ。どう?」
「カラオケ?」
「そうよ。皆と一緒?それとも二人で行く?」
「皆でって言われても」
 今はそうした気持ちにはあまりなれなかった。今一つ浮かない顔で静香に返す。
「それはあまり」
「じゃあ二人で行くのね」
「え、ええ」
 完全に静香のペースに入れられてしまいその中で応えた。
「それじゃあ二人でね」
「行こう。駅前のあのお店でいいわよね」
「まあお店は何処でも」
 正直なところ今一つ行く気にはなってはいない。しかしそれでも静香の言葉に応えて頷く。暗い気持ちはあったがそれでも相手のペースに入れられてしまっていた。
「いいけれど」
「あそこハイパージョイ多いからいいのよね」
「ハイパージョイ好きなの」
「あとセガも好きよ」
 カラオケの機種の話もにこにこと話す静香だった。
「まあダムも好きだけれど」
「何よ、それ」
 静香の今の言葉を聞いて思わず笑ってしまった清音だった。ここでやっと少し笑顔になった。
「結局何でも好きなんじゃないの?」
「そうかも」
 笑顔でそれを否定せずに受け止める静香だった。
「私結局あれなのよ」
「あれって?」
「歌、好きなのよ」
 こう話すのだった。
「歌うのも聴くのも。大好きなのよ」
「そう。大好きなの」
「そうよ。だから機種はね」
「ええ」
「結局あれね。何でもいいのよ」
 またこう話すのであった。
「何でも。それじゃあ今日の放課後二人でね」
「わかったわ」
 今度は先程よりも少し明るい笑顔で頷くことができた清音だった。
「じゃあ放課後二人でね」
「行こうね」
 こうして二人でカラオケに行くことになった。入った店はその駅前の店であった。暗い個室の中には壁にそのまま付けられたソファーがある。二人は並んでそこに座った。そのうえで頼んだアイスティーを飲みながら曲を入れていく。曲は静香がどんどん入れていた。
「えっ、もうこんなに入れたの?」
「うん、清音ちゃんも歌うよね」
「まあそうだけれど」
 カラオケに入れば歌う、清音もそれは同じだ。しかし今彼女が戸惑った理由はそれではなかった。何と静香は気付けば十曲も入れてしまっていたのだ。
「しかもこの曲ってどれも」
「どうしたの?」
「何かあれね」
 画面に出ているその曲達のタイトルを見ての言葉だった。
「どれもやたらと元気が出そうな曲ばかりね」
「そうでしょ?私こうした曲が大好きなのよ」
 にこりと笑って隣にいる清音に話す静香だった。
「明るい曲がね」
「それでこうした曲入れたの」
「まだどんどん入れるわよ」
 しかもこれに留まらないというのである。
「もう何十曲もね」
「そんなに入れるの」
「清音ちゃんもそういう曲好きよね」
 そのにこりとした、やはり能天気なものを強く感じさせる笑みで清音に問うてきた。
「どうなの?やっぱりそうよね」
「そうね」
 自分の本音は隠して頷く清音だった。
「どちらかっていうとね」
「そう。じゃあ決まりね」
 清音のその言葉を聞いてさらに明るい笑みになった静香だった。
 
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