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戦国異伝

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第二百三十八話 幕府その四

 信長は上機嫌で宿として迎えられた東本願寺、新しく出来た本願寺のその寺に入ってそこで蘭丸達に述べた。
「まずはよい」
「はい、この状況は」
「民達が上様が将軍となられたことに喜んでいることは」
「太政官となられたことにもですな」
 蘭丸だけでなく幸村と兼続も言った。
「よいですな」
「それも非常に」
「うむ、民があってこそじゃ」
 まさにというのだ。
「天下人じゃからな」
「民にそっぽを向かれますと」 
 蘭丸がここで信長に述べた。
「それで天下人となくなります」
「その通りじゃ、異朝の隋じゃが」
「煬帝ですか」
「煬帝は民の心を見なかった」
「そのうえで政を行い」
「ああなったわ」
「国を滅ぼしてしまいましたね」
 蘭丸は信長に応えて隋のことを述べた。
「まさに」
「うむ、随は滅ぶ国ではなかった」
「むしろこれからでした」
「栄える国だった、しかし」
「煬帝が贅を尽くし無用な戦を重ね大運河や長城を築かせた結果」
「民が背いてな」
 そしてだったのだ、隋は。
「乱が起こってじゃ」
「滅びましたね」
「そもそも煬帝を帝にしたのが過ちだった」 
 隋という国の、というのだ。
「煬帝は確かに才気に満ちておったが」
「しかしですね」
「贅を好み無闇に普請や戦が好きだった」
「その結果でしたね」
「国が滅び後に唐が立った」
「煬帝は猫を被るのが得意でしたな」
 幸村も煬帝について言った。
「太子になる為に上手く本性を隠していました」
「書にもあるな」
「はい、それで親を騙し」
「自身の兄を陥れてな」
「太子となりましたな」
「あれは文帝と皇后の過ちだった」
 隋を開いた煬帝の父である文帝とその母である独孤皇后のだ。
「二人共決して愚かではなかったが」
「むしろ聡明でしたね」
「相当にな。しかしな」
「煬帝の方が上で」
「黙れたのじゃ、文帝は最後で気付いたが」 
 煬帝、当時太子であった楊広のだ。
「遅かった」
「それで煬帝に殺されましたか」
「そう言われておるがな」
「真実はわかりませんね」
「そこまではな、しかし煬帝が帝位に就き」
「民を顧みぬ政を行った結果」
「国は滅んだ」
 まさにだ、そうなったというのだ。
「それを見るとじゃ」
「民あっての天下人ですな」
「そうじゃ、その民を守る為に」
 信長は誓って三人に告げた。
「魔界衆を討つぞ」
「さすれば上様」
 今度は兼続が言って来た。
「安土に戻りましたら」
「すぐに戦の用意を整えてな」
「そのうえで」
「伊賀を攻める、決めた通りな」
「そうされますか」
「その前に一つ政でやっておくことがある」
 その政はというと。 
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