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平常心

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2部分:第二章


第二章

 その彼を見てだ。顔を真っ赤にさせてしまっていた。
 何とか店に入ろうとする。ところがである。
「うう、やっぱり」
 足が止まってしまった。
「散髪以外で行くのって」
 憚れてしまう。それで足を止めてしまったのである。
 彼女は困ってしまっていた。どうしていいかわからなかった。
 それでだ。部活でもだ。困った顔でいた。
 告白した、しかしできない。それで途方に暮れていた。部活でもそうした状況でだ。暗い顔でいた。その暗さは余計に増していた。
 先生もそれに気付いてだ。彼女に声をかけた。
「ねえ、安達さん」
「はい?」
「悩みあるのかしら」
 こう彼女に問うたのである。
「何かそんな感じだけれど」
「それは」
「あるなら言って」
 真面目な顔で未来帆に言う。
「是非ね」
「それは」
「あるのね」
 また言う先生だった。
「じゃあ何かしら。先生でよかったら言って」
「言っていいですか?」
 未来帆は戸惑いながらもだ。先生に対して口を開いた。
「実はですね」
「どうしたの?それで」
「今好きな人がいまして」
 こう話すのである。
「実は」
「好きな人ができたのね」
「美容師の人で」
 このことも話した。
「凄く格好よくて奇麗な人なんです」
「それでその人に告白できないのね」
「どうしても」
 そしてだ。さらに話した。
「どうしても言えません」
「怖いのね」
「どうしたらいいでしょうか」
 暗い顔をさらに暗くさせてだ。そのうえで先生に対して問う。
「一体。どうすれば」
「先生言ってるわよね」
 先生は彼女の話をここまで聞いた。そのうえでだ。まずはこう言ってきたのだった。
「いつもね」
「じゃあやっぱり」
「そうよ、まずは平常心」
 出した言葉はこれだった。
「平常心よ」
「平常心、ですか」
「そう、それを忘れないで」
 こう話すのである。
「落ち着いて。それで我を忘れず」
「そうして先に行けば」
「それでいいのよ」
「じゃあ告白も」
「前に出て」
 先生はこうも話した。
「それでね。告白すればいいから」
「勇気を出してですか」
「いきなさい」
 また言う先生だった。
「一歩前に出てね」
「わかりました」
 それを聞いてだ。未来帆はまずはこくりと頷いた。
 
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