その手で引き金を引け!!
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第八章 再会
第二話 君の彼
前書き
オリキャラの主要キャラクター男がやっと菊地原と絡む。
人が食べ物を食べる音はかなりうざい。
ぼくはかなりそれが嫌い。特にこの男だから。
忍田本部長、城戸司令官、風間さんなどがいる会議モードな中で、男はただ一人カップラーメン赤いたぬきを食べている。
五杯目の赤いたぬきを開けてお湯を入れた。
まだ食べるのか。太ればいいのに。
それよりこいつ、話を聞いているのだろうか。
「貴様、話を聞いとるのか!!」
鬼怒田さんが怒るのも無理はない。
自分の処遇の話をまるで聞かない捕虜など捕虜ではない。
捕虜と言う自覚すらないらしいが。
男は真剣に赤いたぬきを見て無視した。
忍田本部長は呆れていたが、とりあえず話を進めた。
「せめて名前ぐらい教えてくれないか」
「・・・却下だ。飯の恩は返す。
あと、三分・・・」
「名前がわからないと呼びにくいんだが」
「ならユウでいい。
あと二分三十秒」
この人、何のカウントしているのか訳わからない。
しばらくしてそのカウントが赤いたぬきを食べ始めるカウントダウンだと知る。
金髪の男ユウは赤いたぬきを食べ始めようとした。
その時、部屋に駆け込んできたのは可憐だった。
息を切らしてある。生身だ。
そしてユウを見るなり怒鳴り付けた。
「赤いたぬきを寄越しなさい!!
つかくれ!!」
腹を空かしたバカはここにもいた。
赤いたぬきを引ったくり、割り箸も奪うとユウの隣に座り込んだ。
その割り箸は間接キスになると気づいていないぼく。
「俺の赤いたぬき・・・」
「あ?」
「・・・」
上下関係が見えてきた。
可憐はユウを見て怒りの顔を笑みに変えた。
「ユウ・・・あなた、本当にユウなの?
私が斬ったあなた・・・」
それを聞いた瞬間、話を聞いていた風間さんとぼくは顔色を変えていただろう。
今では覚えていない話だが。
ユウという金髪の男が、可憐が自ら手をかけた存在だと言いたいのか。
可憐のあの言い方だと、外見だけ似ていると言うことになる。
いや、待て。可憐の彼って霊じゃあ・・・
あぁもうわかんない。
話の読めない城戸司令官らは複雑な表情をするばかりだ。
「ユウがここにいる方法なんて色々あるから言わないけど。
赤いたぬき食べ過ぎじゃない?」
「事情はすべて話す。
代わりにそっちの事情も聞かせろ。」
「えぇ構わないわ。ただ・・・
忍田本部長や城戸司令官は風間さん達に比べて何も知らないわ。
この中で話を始めても無駄よ」
そう、話を始めても忍田本部長らは何も知らない。
今、話をされても困るだけだ。
ぼくらだけならともかく・・・
そこで動いたのは風間さんだった。
「ではユウに説明しながら、全体に説明します。
如月、頼めるか?」
「えっ・・・私、話すの苦手で。
伝えるのダメで・・・あぁもう!!
私がトリップした時からでいいですか!!」
可憐は風間さんにフォローされながら話し始めた。
トリップした日のこと。
風間隊であるぼくらに可憐の彼氏の魂の欠片の付着。
簡単にいうとぼくらが魂の共有者に変化しつつあること。
四塚市の魔法を利用した門の出現。
アフトクラトルが攻めてきた際に現れた黒トリガー。
ざっとこれぐらい。
「それと、私がこの世界で生まれたこと。」
それは初耳だった。
可憐は生まれも育ちもこの世界ではないとばかり考えていた。
まさか生まれは三門市だったのか。
「それ、お前の推測なしの説明だな。
今のその話でわかることはいくつかあるさ。
それよりまずは俺だな。
簡単に言う。俺は可憐・・・お前が手をかけたユウじゃない」
「・・・同じであって違う時間軸から来たの?」
「似たようなもんさ。
未来を変えるために手をかけられる前に、俺は俺自身に念じたんだ。
お前が無事であるように・・・
消滅の数日前の俺に消滅時の記憶をとばして」
「あなたは消滅する前のユウ・・・?
確かに年単位じゃなきゃ、記憶ならある程度飛ばせるけど。
魔法使いの協力なしにまず、世界は飛べない。魔法使い・・・?
あ、クレアか。」
誰も言わないの?
無事であるように?
その言葉の意味がわからない。
その言葉を言った時のユウの心音は異常に動揺していた。
「可憐、落ち着いて聞け。
俺はお前にあった日から、お前があの世界の人間ではないことも、お前が斬られるも知っていた。
この世界に来ることすら。」
可憐の心音は動揺と恐怖で満ちていた。
それもそうだ。
彼は自分ははじめから犯人を知っていたという発言に近いことを言ったのだから。
「あなた、私の敵だったの・・・?」
その問いがされた際なぜかユウはぼくを見た。
憐れみの目で。
「違う。俺はお前があの世界に飛ばされたのを偶然目撃したんだ。」
ぼくは思い出して思わず立ち上がりかけた。
前に男が子供を抱き抱えて叫ぶ夢を見た。
あれはこの男の記憶だったのではないか。
ぼくはそれを過去夢と言うのを知らなかった。
「その日からお前の未来を大雑把に魔法使いに頼んでみてもらったんだ。
守りたかったんだ。
未来を知ることで変えられる未来なら・・・
でも変えられなかった。
だからこんな邪道な手しか使えなかった。
過去の自分に世界を渡らせ、お前が来る時に会えるようにするしか」
ぼくは・・・可憐のためにそこまで出来るだろうか。
あの男には勝てないのだろうか。
いや違う。あの男に勝てることを目標にするより、可憐に愛されればいいだけの話。
忍田本部長は何か思い出したように質問した。
「待て、その話だと今までネイバーフッドにいたことにならないか?」
確かに。今までこの世界にいたなら本部にいればよかった。
そうしなかったのなら・・・
それにあのトリガーは明らかに・・・
「あぁ・・・それを聞かれるとキツいな。
実は今までアフトクラトルにいた」
「はぁ!?バッカじゃないの!?
シナリオに絡む国にいてどーすんのよ、このクズ」
「クレアの野郎がやりやがったんだ!!」
「クレアに頼む方がバカなのよ。
冷蔵庫を熱湯庫に変えるような奴に頼むな!!」
風間さんが意外にも二人の様子を見て、ひっそり笑みを浮かべていたのが見えた。
二人を眺める忍田本部長をよそに、城戸司令官は一番肝心なことを問い詰めた。
「結局、君は今後どうする気だ」
ユウは城戸司令官に言われて首をかしげた。
可憐も赤いたぬきを食べながら首をかしげた。
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