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修学旅行

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3部分:第三章


第三章

「雄大よ」
「自由時間何処に行くんだ?」
「ええと、金閣寺かな」
 その少年雄大は周りの問いにまずはこう返した。
「そこはどうかな」
「金閣寺か」
「ってそこ皆で行くぜ」
「だから別にいいんじゃね?」
「あそこは一回行ったらいいだろ」 
 それぞれこう話すのだった。
「それより四条行かないか?」
「四条大通り」
「そこに行かないか?」
「あっ、そこいいね」
 雄大は周りの話を聞いて頷いた。
「そこだとお土産も買えるし。それに」
「それに?」
「何があるんだよ、それで」
「うん、二人きりになれるかも」
 こんなことも言う彼だった。
「ひょっとしたら」
「二人きり?」
「何だそりゃ」
 周りは今の二人という言葉に反応した。
「俺達六人だぜ」
「二人じゃねえぜ」
「おい、何だよそれって」
「あっ、いや」 
 周りに言われてだった。ここで気付いたのだった。
「何でもないよ」
「何でもないのか?」
「本当か?」
「うん、何でもないから」
 こう言って誤魔化すのだった。
「気にしないでいいよ」
「そうか。それならいいけれどな」
「それじゃあ今は」
「そうだよ、折角の京都だからな」
「楽しもうぜ」
「軽井沢と京都は来たら楽しむ」
 軽井沢については若い女の子の観光地となっていることを嘆いている元政治家の男がいた。この男は何の芸のなさと不見識を露わにさせて政治家を自ら辞めることになったがこの男はかつて自らが私物化している番組においてこれを言っていたのだ。軽井沢が観光地であって悪いという話はあくまでこの男の手前勝手な脳内妄想でしかない。だがテレビという狭い世界の中で思い上がったこの男にはわからなかったのだ。こうした下劣にして破廉恥な輩が大手を振って歩けるという怪奇現象が起こるというのは戦後の日本だけであろう。
「そういうものだからな」
「最低限のマナーは守ってな」
「マナーは守らないとね」
 雄大もそれはしっかりと言う。
「それじゃあね」
「今から行くぜ」
「いいな」
「うん、じゃあ」
 こうしてだった。彼等はその京都に降り立った。まずはその日と次の日の前半をかけて京都市内を学校単位で回るのだった。その間雄大も里香も気が気ではなかった。何処か焦った顔でいたのだった。
「参ったなあ。これじゃあ」
「一緒になれないじゃない」
 それぞれその顔で呟いていた。
「このままじゃどうしたらいいんだろう」
「会えないとかなったらどうしよう」
 しかし周りは二人のそんな心配には全く気付かない、皆それぞれ京都の観光名所を次々と回っていく。そうして満面の笑顔であった。
「金閣寺ってあれだよな。一休さんの将軍様の」
「ああ、足利義満な」
「あの人が建てたんだよな」
「そうそう」
 その金色のみらびやかな寺院を見て笑顔で言う。前の池にその姿が映りさらに美しい。後ろにある緑も実に奇麗なものである。
 
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