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修学旅行

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1部分:第一章


第一章

                      修学旅行
 修学旅行がはじまった。行く先は京都である。
「清水寺行くんだよな」
「あと平安神宮な」
「それと金閣寺」
「美術館もな」
 とにかく色々なものを回るというのだ。
「まずは全員でそれぞれ回ってそっから自由行動らしいな」
「映画村行くのか?」
「ああ、そこは絶対に行くらしいな」
「それじゃあ戦隊に会えるかな」
 皆新幹線の中にいる。その中であれやこれやと話をしているのだ。
「最近毎年あそこで撮影してるからな」
「仮面ライダーの方がいいけれどな」
「ライダーは無理だろ」
「あれっ、一回出ていたぜ」
「そうだよな」
 このことも話される。彼等は映画村がとにかく楽しみであるらしい。それが実際に会話の中にも出ていて弾ませてもいるのだった。
「電王でな」
「もっと出て来て欲しいけれどな」
「色々と無理みたいだよな」
「そうだよな」
「まあそれはそれで回れるな」
「映画村一回行ってみたかったんだよ」
 そんな話をしながら京都に向かう。そんな中でだ。女子生徒の一人が自分の席で難しい顔になっていた。そのうえで言うのである。
「京都に着いたら」
「着いたら?」
「どうするの?」
「あっ、何でもないわ」
 だがここではこう言うだけであった。
「別にね」
「別にって」
「どうしたのよ、言葉を止めて」
「言いかけて止めるのはよくないわよ」
「だから何でもないから」
 しかし彼女はこう言うのだった。口を波の形にしてだ。
「別にね」
「そうなの、別になの」
「何でもないの?本当に」
「うん、だから気にしないで」
 また言う彼女だった。
「それはね」
「だったらいいけれどね」
「私達は」
「ええ。京都かあ」
 彼女はまた言った。
「それだったら」
「で、どうするの?」
「何か行きたいところあるの?」
「ええ、それはね」 
 こう皆に返す。見れば黒い髪をポニーテールにして尖り気味の大きな耳をしている。兎に似た耳だ。目は明るくかまぼこに似ている形をしていて少し上を向いている。口は大きく唇は奇麗なピンクだ。顔は顎がほんの少ししゃくれているが短く可愛い感じだ。背は一六〇程度でほっそりとした身体をしている。その身体を赤いブレザーと青のネクタイとミニスカートの目立つ制服で包んでいる。ブラウスは白で丁度トリコロールになっている。
 彼女の名前を岡山里香という。その彼女が周りに戸惑った顔を見せて対応しているのだ。
「まあ色々と」
「いや、それじゃわからないから」
「京都っていっても広いわよ」
「ええと、まあ」
 里香は周りの返答に窮する。しかし咄嗟にこう言ったのだった。
「まあれよね」
「あれって?」
「つまりどうするの?」
「自由時間だけれど」
 その時の話をするのだった。
「その時にまあ考えてるけれど」
「考えてるって何を?」
「何考えてるのよ」
「色々と」
 返答になっていなかったがこう言ったのだ。
「色々とね」
「それでわかると思う?」
「さっぱりわからないけれど」
「どうなのよ、それって」
「わからないかしら」
 当の里香は首を傾げさせる。とはいっても彼女は本当にわかっていない。これは否定できなかったし疑いようのなことであった。
 
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