世界中で俺が1番恋した色
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茶
土曜日がやってきた。
朝9時に家を出て試合会場に向かった。今回の試合会場は少し遠い場所にある。しかも、紅乃の試合会場までは歩いて20分くらいかかってしまう。
「勝つぞ」
1人で気合を入れて、試合会場へ向かった。
試合会場に到着すると、既に数人が集まって走ったりしている。俺もスパイクに履き替えアップを始めた。
アップでグラウンドを走っていると、一試合目の始まりを告げるホイッスルが鳴った。
ボールを蹴る音が聞こえ、ボールが蹴りたくなってきた。
パス練習をしていると、一試合目の終りを告げるホイッスルが鳴った。
次の次が試合だと思うと、武者震いがした。
先生が集合をかけた。メンバーの発表だ。
「フォーメーションは4-5-1でいく。
キーパーから……」
キーパーから順番にメンバーが発表されていく。トップの俺は呼ばれたとしても一番最後だ。
軽い返事の声が聞こえる。
「最後にトップは葵花だ。」
「ハイッ」
「相手の藍相には、都大会で悔しい思いをしている。3年生がいなくなってメンバーは変わっているが、リベンジをしよう。」
その言葉に皆が返事をして、円陣を組んだ。
二試合目の終りをつげるホイッスルが聞こえた。
いよいよ次は俺たちの試合だ。
タッチラインに整列する。
藍相も紺色のユニフォームを身にまとって並んでいる。
ピッチに礼をして、入場する。
応援してくださる方に礼をして、それぞれのポジションに散らばった。
審判がホイッスルを鳴らした。
藍相がボールを回している。
キーパーまでボールが回った。
キーパーから鋭いパスが最前線の2年生に通る。
まずい、あの選手には都大会で点を決められている。
ディフェンスがマークについたが、彼のスピードには追いつけない。
あっさり振り切られて、キーパーと1対1になった。
彼の打ったシュートはキーパーの手にあたり、コーナーキックとなった。
キッカーは、シュートを打った選手だ。
ボールを持って走って行った。
相手選手のマークにつく。
鋭い回転がかかったボールがゴール前に飛び込んできた。
キーパーがジャンプした。
ボールはその手の少し上を嘲笑するかのように過ぎていく。
俺は、このボールはゴールラインを割ると思った。
しかし、ボールが少し落ちてゴールネットに吸い込まれた。
藍相が先制だ。
センタースポットから試合を再開させた。
いいテンポでボールを回して、中盤にボールが渡った。
しかし、マークについていた相手選手にあっさりボールを奪われてしまった。
そこからは一進一退の攻防が続きハーフタイムを迎えた。
ハーフタイムになって、紅乃のことを思い出した。そうだ、絶対にこの試合に勝たなければならない。
その時監督に呼ばれた。
「前半は動きが良くなかったぞ。後半に2点取ってこい。いけるな?」
「2点どころか、3点取ってきますよ。」
「頼もしくなったな。任せたぞ。」
そう言って監督に背中を押された。
選手が全員ピッチに散らばったのを審判が確認すると、後半開始のホイッスルが鳴らされた。
早速、俺にボールが回ってくる。一旦ミッドフィルダーの選手にボールを預けて、前線に走った。
その選手は俺の動きに合わせて最高のパスを送ってくれた。
残る相手は、ディフェンス1人とキーパーのみだ。
スライディングをしてくるディフェンスを冷静にかわすと、残りのキーパーが飛びこんでくるのが目に入った。
俺は、ループシュートを選択して確実に1点を取った。
まずは1点。同点だ。
相手のキックオフで試合が再開した。
前半の早くに先制されたこともあり動きが硬かった優虹の選手たちも次第に動きがよくなってきた。
サイドの選手がいい位置でボールをカットした。サイドの選手が蹴ったボールがきれいな弧を描いて、俺の頭にピンポイントで合った。
俺の頭に合ったボールはサイドネットに突き刺さった。
逆転だ。チームメイトが集まってきた。
試合が再開され、優虹がボールを奪った。
このまま試合が終われば勝てる。
そうすれば…と考えていたその時だった。
優虹のディフェンスがゴールキーパーにパスしたボールがゴールに入ってしまった。
オウンゴールだ。
勝ちを掴みかけての失点は痛すぎた。
後半も残り時間が少ない。
あとワンチャンスあるかないかだろう。
試合が再開された。
先ほどオウンゴールを演出してしまった、ディフェンスにボールが渡った。
「葵花、任せた!」
その声が聞こえて、超ロングボールが飛んできた。
ペナルティーエリアの、少し外にいた俺の頭を超えていきそうである。
俺は、ゴールに向かって走ったが届きそうではない。
どうにかしようと思った。
そのデイフェンスのミスを帳消しにするためかどうかは自分にも分からなかった。しかし、このチャンスでどうにかしなければならないと思った。
これしかない!と思い、俺は飛んだ。
ボールが上を過ぎようとする。
少しコースを変えれば入ると思った。
キーパーが構えた。
空中にいた俺は、「オーバーヘット」の体制に入った。
右脚を振りかぶって、ボールに合わせる。
自分に、向かってくるボールと違い、自分を越えていくボールは難しい。
ジャンプが少し低かった。
タイミングは完璧だったが、少し脚が届きそうになかった。
思いっきり足を伸ばした。
すると、つま先にボールが当たった。
つま先に当たったボールは、キーパーの頭を越えそうだ。
キーパーが必死に走るのを見ていると、俺は地面に落ちた。
地面に倒れている間に、どよめきに似た歓声が聞こえた。
それは、守った歓声なのか、ゴールが決まった歓声なのかは分からなかった。
審判のホイッスルが聞こえてくる。
試合終了だ。
決まったか、延長戦か確認するために立ち上がる。
「勝った……!?」
スコアボードには3が記録されていた。
ゴールを見ると、ネットに当たったボールが止まっている。
落ち込んでいる相手選手と握手を交わし、応援してくださった方々にも礼をした。
「監督、用事があるので帰っていいですか」
「……。まぁ、言ったとおり3点決めたから今日はいいだろう。特別だぞ」
「ありがとうございます」
そう言って、試合会場を後にした。
走る体力なんて、残っていないはずなのに、紅乃が試合をしているであろう、カルタ会場へ向かった。
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