ロックマンゼロ~救世主達~
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第16話 コンピュータ施設の屋根
前書き
南極のコンピュータ施設に再び
ゼロが転送されたのは、コンピュータ施設の屋上であった。
『…ゼロ、聞こえる?施設内部からは、入れないみたいだから、外から潜入するしかないみたい…無理…しないでね…』
「了解。」
念のためにフレイムチップを使い、武器に炎属性を付加させてからダッシュで先に進むと、メカニロイドが迎撃してくる。
「天昇斬!!」
ジャンプから繰り出すセイバーによる斬り上げを受けた運搬用メカニロイドが炎に包まれながら爆散した。
途中でトラップと思われる地雷が床に設置されていたが、上手くジャンプしてやり過ごす。
狼型のメカニロイド…一年前のネオ…アルカディアでの戦いで見た物と同型の物が襲い掛かるが、チェーンロッドで槍のように突くと、メカニロイドに穂先が突き刺さる。
「エナジーチェーン!!」
ヘケロットのDNAデータをラーニングして得た必殺技。
突き刺さったロッドの穂先からゼロにエネルギーが流れ込んでいき、エネルギーを吸い尽くされたメカニロイドは機能停止した。
「使えるな」
エネルギーが少なくなって来た時に重宝するだろう。
新技の試しを終えたゼロはメカニロイドが投げる雪玉をかわしてZセイバーで両断する。
壁に手と足をつけ、ゆっくりとパイプの敷き詰められた足場に着地すると、前回のミッションで見た蒼い砲台のようなメカニロイドがいたが、シールドブーメランで無効化しつつ、セイバーを構えた。
「旋牙突!!」
ダッシュの勢いを利用したセイバーの突撃技を繰り出すと、まともに喰らったメカニロイドは弾け飛び、奥にいるメカニロイドも同じく旋牙突で破壊すると、壁蹴りで上に向かう。
再び雪玉を投げるメカニロイドが出現したが、バスターショットを引き抜き、ジャンプでかわしてチャージショットを放つことで破壊する。
途中で浮遊する爆弾があったが、タイミングを見計らって突破し、この先にもメカニロイドは大量にいたが、ショットを連射して返り討ちにする。
施設内に入れる坂道を発見したが、地雷が敷き詰められているため、注意して進まねばならない。
ゼロがジャンプしようとした時、仕留め損ねたメカニロイドが雪玉を放り投げてきたので、ゼロはそれを回避しながらチャージショットを放って破壊した。
下の方で爆発音が聞こえたので下の方を見遣ると、かわした雪玉が転がり、地雷を爆発させていた。
ゼロはこれを好機と見て飛び降りると、雪玉を追いかけるように進んでいく。
雪玉が地雷を無くしてくれるため、比較的安全に先に進むことが出来たので、施設内に通じるシャッターを発見し、シャッターを潜ると、かなりの浮遊爆弾があったが、爆風を浴びないくらい距離を取り、ショットを放ち、爆弾を破壊した。
全ての爆弾の排除に成功したのを見ると、奥にあるシャッターを潜って広い部屋に出た。
「ここは…」
「ふふ…」
「っ!!」
周囲を見渡した際に聞こえた聞き覚えのある声、レヴィアタンの声に反応してゼロは再び辺りを見回したが、誰もいない。
しかし間を置かずして、部屋を水が満たし、何処からか四天王の一人であるレヴィアタンが姿を現した。
「久しぶりね、ゼロ。また会えて、嬉しいわ。ルインがいないのは残念だし、折角の再会を楽しみたいのは、山々だけど、残念ながらそうも言ってられないの。あなたを倒したら、すぐにあのエルピスとか言う司令官を相手にしなきゃ、いけないからね。さあ、行くわよ、ゼロ!!」
レヴィアタンが愛用の槍、フロストジャベリンを構えながら不敵に言う。
ゼロも無言でセイバーを構え、前回の戦いの経験からフレイムチップを使用している状態だ。
「はあっ!!」
開幕と同時にジャベリンからホーミング弾を連続で放つ。
前回の時と同じ攻撃なので、ゼロはそれを全てかわし、水中の浮力を利用したダッシュジャンプでレヴィアタンの背後を取ると、セイバーを振るう。
「相変わらずやるじゃない」
セイバーの斬擊をジャベリンの柄で受け止めると、不敵な笑みを深める。
「俺はエルピスを追わなくてはならない。ここで時間を食うわけにはいかない」
「ふふ…そうね。私もあなたを早く倒してエルピスって司令官を処分しないといけないから、ここで時間をかけるわけにはいかないわ」
腕に力を込めてゼロのセイバーを弾くと、上昇しながら無数の氷塊を発生させた。
「避けきれるかしら?マリンスノー!!」
前回の時より氷塊の数が多く、どうやらレヴィアタンも前回の戦いの時よりもパワーアップしているようだ。
しかし、今回の戦いは壁があるため、ネオ・アルカディアで戦った時よりは戦いやすいので壁を駆け上がり、セイバーをチャージしながら壁からダッシュジャンプをして距離を詰める。
「させないわ!!」
即座にジャベリンを高速回転させることで氷の輪を作る。
前回の戦いの時よりも遥かに硬度が増しており、シミュレーションでは前回の戦いの時の炎属性のチャージセイバーにも耐えることが出来るようになった。
「はあっ!!」
「キャアッ!?」
しかし、それはゼロが前回の時のままならの話であり、繰り出されたチャージセイバーが氷の輪を砕き、衝撃波を喰らったレヴィアタンが吹き飛ぶ。
追撃にゼロがショットを連射したが、レヴィアタンも簡単に喰らうはずがなく、縦横無尽に動き回ることでショットを回避した。
「(前の戦いの時より強くなっている…。これが以前エックス様が言っていたゼロに搭載されているって言うラーニングシステム?)」
まだオリジナルのエックスが統治者だった頃に聞いたゼロに搭載されている自己強化システム・ラーニングシステム。
戦えば戦う程に学習し、能力を向上させていくシステムだと聞いており、つまり戦いを長引かせれば、ゼロの能力は強化されていくのだろう。
「(面白いじゃない……流石はエックス様の親友。そうこなきゃ…)」
ゼロがセイバーにエネルギーをチャージしながら接近する。
もう一度チャージセイバーを繰り出すつもりなのだろう。
「何度も喰らうわけないでしょ!」
一気に浮上し、ゼロから距離を取って真上に移動すると、槍を下に構えて急降下する。
しかしゼロはそれをダッシュで回避すると、チャージセイバーをレヴィアタンに繰り出そうとする。
「ウォーターサークル!!」
即座にジャベリンを高速回転させ、ゼロを吹き飛ばす。
そして床に倒れたゼロを見て、レヴィアタンは全てのエネルギーを解放した。
「受けてみなさいゼロ。これが新しく編み出した新技よ。トルネードスピア!!」
ジャベリンを真上で高速回転させ、水流竜巻を発生させる。
水流竜巻でゼロを引き寄せつつホーミング弾を乱射した。
ゼロはダッシュしながら、竜巻の引力に逃れつつ、ホーミング弾を回避するが、竜巻の影響もあって完全には避けきれず、何発か直撃を受ける。
「ぐっ……」
「これでとどめよ!」
ゼロに向かって槍を構えて急降下するレヴィアタン。
しかしゼロもすぐさま立ち上がり、チャージセイバーを繰り出すには時間が足りないため、炎をセイバーに纏わせた。
「天昇斬!!」
急降下するレヴィアタンを迎え撃つように、ジャンプからの斬り上げを繰り出すゼロ。
セイバーとジャベリンのエネルギーが激突し、辺りに閃光が迸った。
一方、エルピスはコンピュータ施設のコンピュータからパスコードを引き出すことに成功していた。
「クックック…ネオ・アルカディアで最もセキュリティーの高いエリア…ネオ・アルカディアの地下とユグドラシルに入るためのパスコードを手に入れたぞ…もうここに用はない。」
エルピスは転送の光に包まれ、コンピュータ施設から脱出した。
そしてコンピュータルームからエルピスらしき反応が無くなったことに、ボロボロになったレヴィアタンが苦笑した。
「ハァハァハァ…あなたと遊んでいる間に…エルピスに、逃げられたみたい…ちょっと、夢中になりすぎたわ。馬鹿みたい…あなたの強さが…私をおかしくするの…次は…もう少し、賢くやらせてもらうわ…じゃあ、また…ね」
「…………」
転送の光に包まれ、レヴィアタンが去っていくのを見届けたゼロは溜め息を吐いて通信を繋げた。
「こちらゼロ…ミッション終了。転送してくれ」
『了解』
ゼロも転送の光に包まれ、レジスタンスベースに転送された。
「ミッション終了です。」
「転送完了まで…2…1…転送!!」
転送の光に包まれたゼロが司令室のトランスサーバーに現れ、シエルがゼロを出迎える。
「エルピスは、パスコードを上手く手に入れたみたい。パスコードは、ネオ・アルカディアで最も、セキュリティーが高いエリアの扉を開けるためのもの…もしかして…そこにダークエルフが封印されているのかしら…取り敢えずお疲れ様、ゼロ、メンテナンスを受けてきて。今度はルインが出撃するようだから」
「…分かった。」
そう言うと、メンテナンスルームに向かう。
ゼロも相当なダメージを負っているのでメンテナンスにはかなりの時間が必要だろう。
「さて…私は、この輸送機工場に向かうよ」
「輸送機工場…ここは今は使われていない工場らしいの。でも、最近修理されて、小規模だけど再び稼働し始めたみたい…エルピスは、何のために工場へ行こうとしているのか、分からないけど、彼一人でなんて、無謀だわ。ルイン、お願い…彼を止めてあげて」
「うん、分かってるよ。ネオ・アルカディアに邪魔されないで無事にベビーエルフを破壊出来たら…ね。オペレーター、転送をお願い」
「ミッション発令…各員転送準備にかかれ。」
「転送準備完了…転送!!」
転送の光にルインが包み込まれ、輸送機工場に転送された。
「気をつけてね…ルイン」
ルインの無事を祈りながら、シエルはルインの帰りを待つ。
一方、ゼロに敗北したレヴィアタンはネオ・アルカディア本部のメンテナンスルームのメンテナンスベッドに横になっていた。
「…パワーアップしても勝てないなんてね、これは“アレ”の出番かもしれないわ…」
四天王の能力・アームドフェノメノン。
それはレプリロイドの汎用性を捨て、メカニロイドのように一つの能力に特化させる能力であり、レヴィアタンの場合は水中での能力に完全特化させた物になる。
これを使えばゼロに勝てる可能性もある。
ふと、ガラスのある方を見遣れば、自身の顔が移る。
それは見慣れた自分の顔でもあり、同時に…。
「ルインの…私の……私達の…お母さんの、顔…か…」
女性型ではあるが、四天王の中では最もエックスの特徴を受け継いでいるレヴィアタンだが、顔だけはエックスには似なかった。
ハルピュイアやファントムは当然として、普段の落ち着きのない性格のためにエックスとはあまり似ていないと思われがちなファーブニルも黙っていればエックスの面影があるのにだ。
しかし、ルインの正体と自分達との関係を知った途端に理由に気付き、そして初めてゼロと戦った時、ゼロが自分にとどめを刺さなかった理由も何となくだが分かった。
一年前の秘密基地でのゼロとの戦いでレヴィアタンは完敗した。
一瞬、レヴィアタンは死を覚悟したが、ゼロはセイバーを構えたまま動かなかった。
“くっ…、何故…殺さない?”
先に沈黙を破ったのはレヴィアタンだった。
そのまま肩で息をしながらゼロを睨みつける。
“…………分からん”
“はあ?”
予想外の返答に思わずレヴィアタンは間の抜けた声を上げるが、ゼロはそれに構わずレヴィアタンに尋ねた。
“……お前、以前、俺に会ったことはあるか?”
思わぬゼロの問いに、レヴィアタンは目を見開くが、すぐに冷静さを取り戻してそれを否定した。
“あるわけないでしょ。あなたと会ったのはこれが初めてだわ”
“そうか…お前のアーマーの色とその顔はあいつらに…”
それだけ言うとゼロは口を閉ざした。
ゼロは今まで出会った四天王達に何者かの面影を感じていたが、レヴィアタンにはそれを強く感じていた。
朧気にだが、記憶の中で見え隠れする二人のレプリロイド。
レヴィアタンは外見といい、雰囲気といい、そのレプリロイド達によく似ていたのだ。
後にネオ・アルカディア本部に帰還したレヴィアタンはゼロの言葉を考えていたが、レヴィアタンが思い出したのは、自分の主でもあり、親でもあるオリジナルエックスだった。
“(ゼロは私をエックス様だと思った…?)”
確かに自身のアーマーの色はエックスに似ているが、他の四天王とは違って顔は似ていない。
それにゼロは“あいつら”と言っていたのだし、その後もレヴィアタンは時間がある時、いつもゼロの言葉の意味を考えていた。
もしかしたら、自分達の出生には自分達も知らない秘密があるのではと思っていたらまさかの的中である。
デュシスの森、兵器工場で姿を現した朱のレプリロイドを戦闘記録の映像で見た時、とても懐かしい感覚を覚えた。
起動して初めてオリジナルエックスを見た時と同じような感覚。
“これが、新たにレジスタンスに加入したレプリロイド、ルインだ。お前達、奴の顔と特徴を覚えておけ。恐らく奴はゼロと並んでレジスタンスの主力となるはずだ”
“なあ、何かあいつ、レヴィアタンに顔が似てねえか?”
ファーブニルに指摘され、映像を拡大すると、レヴィアタンと酷似した顔が映る。
瞳の色はレヴィアタンは海を思わせる蒼で、ルインは自然の緑を思わせる翡翠だったが、確かに似ていた。
“まあ、確かに似ているがな。それはどうでもいいことだ。何故、奴が俺達に酷似したアーマーに換装出来るかは分からんが、倒すべき相手であることには変わりない”
“まあいいか!ゼロ以外にも骨がありそうな奴が出て来て嬉しいぜ!!”
ファーブニルもルインに対して不思議な感覚を抱いていたが、エックスから強く引き継いだ真っ直ぐな心…そこから出て来る闘争心がそれを掻き消していた。
レヴィアタンはルインの映っているモニターに目が離せなかった。
「今なら、ゼロが言いたかったことが分かるわ…ゼロは私からエックス様かルインの面影を見たのね…それとも両方か…」
恐らくは後者だろうが、今となってはどうでもいいことだ。
「もう一度ゼロとも戦いたいけど、ルインとも戦ってみたいわ。一体どんな戦いをしてくれるのかしら?」
ちゃんとした会話もまだしていないが、レヴィアタンは宿敵と同じくらいには母であるルインに興味を抱いていた。
母と娘が相対するまで…後。
後書き
一応レヴィアタンの顔はルイン譲り。
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