首輪
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1部分:第一章
第一章
首輪
全寮制の名門女子学園として有名であった。
私立聖美学園はそうした学園として知られておりそこに入ることは名誉なこととされていた。実際に入学した小林薫もそう思っていた。
黒を基調として金色を配したその制服に身を包んで寮から学園に向かい授業を受ける。入学してすぐにそのことに恍惚となっていた。
その彼女はだ。ある時気付いたのだ。
上級生達の首にだ。あるものが付けられていた。それは。
首輪であった。殆ど、いや全ての者がそれをしている。そのことに気付いたのだ。
「ねえ」
それで入学してすぐに親しくなった紫藤菖蒲に尋ねたのだ。教室で彼女の席のところに来てだ。そのうえで彼女に尋ねたのだ。
「気になることがあるんだけれど」
「どうしたの?」
「先輩達だけれど」
こう前置きしてから言うのだった。
「何で皆さん首輪してるのかな」
「あっ、そういえばそうよね」
言われて菖蒲も気付いたのだった。
「皆さんしておられるわよね」
「あれ何でかしら」
首を傾げながら言う薫だった。
「何で首輪なんて」
「そうよね。何でかしらね」
菖蒲もそれを聞いて述べた。
「校則でそうなってるのかしら」
「そんなの書いてないけれど」
校則はもう入学してすぐに細かいところまで読んで確かめている。だからそれはもうわかっていることだった。
「一行もね」
「首輪をするとか?」
「するなとも書いてないけれど」
それもないのだという。
「けれど。首輪なんて」
「ファッションかしら」
菖蒲は首を傾げてこう述べた。
「それじゃあ」
「首輪がファッションなの?」
「世の中何が流行るかわからないじゃない」
菖蒲はこう考えるのだった。そしてそれを薫にも話す。
「だから。それじゃないかしら」
「そうかしら」
それを聞いても首を捻る薫だった。
「そんな風になるかしら」
「そうじゃないの?世の中何が流行るかわからないわよ」
またこのことを言う菖蒲だった。彼女はふわふわとした髪に大きな目を持つ小柄な女の子である。それに対して薫は彼女と比べると幾分か背が高くその髪は赤毛でショートにしている。幾分かボーイッシュな顔立ちである。スタイルは菖蒲は胸がかなり大きいが薫は尻のラインがいい。好対照な外見であると言えた。
「だからね」
「そういうものかしら」
「それによ」
ここでまた言ってきた菖蒲だった。
「うちの学校て校則厳しいじゃない」
「そうね、それはね」
「それもかなり」
このことは事実だった。名門女子学園に相応しくその校則はかなり厳しかった。さながら軍隊の如き厳しさである。
「厳しいわよね」
「だから変な格好はできないし」
「ええ」
「首輪もそれを考えたらね」
こう話す菖蒲だった。
「そんなに気にすることないんじゃないかしら」
「そうかしら」
「そうよ」
笑って薫に話す。
「気にすることないわよ。それにひょっとしたら」
「ひょっとしたら?」
「先輩達がされてるじゃない」
笑顔はそのままである。
「それじゃあ私達もね」
「するかもってこと?」
「そうじゃないの?」
こう言うのである。
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