極彩色の花達
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2部分:第二章
第二章
母親の声がしてきた。すぐにこう言ってきた。
「おかえり」
「ああ、おかえり」
「晩御飯もうすぐだからね」
すぐに夕食の話をしてきたのだった。
「ちょっと待っててね」
「ああ。じゃあその間に」
亮治は玄関から出てそのうえで階段を昇りながら応える。
「花置いていくから」
「えっ、またお花買ったの」
「悪いか?」
「別にそうは言っていないけれど」
しかしというのは言葉に滲み出ていた。
「けれどそれでも」6
「俺の部屋に置いて俺が世話するから」
「わかったわ。それにしてもね」
母の言葉は続く。
「あんた本当にお花好きよね」
「ああ」
「しかも派手なお花ばかり」
このことも言うのだった。
「好きよね」
「じゃあ置いておくからな」
「そうしてくれ。じゃあな」
「ええ、置いておいてね」
そんな話をしてから二階にあがりそのうえで自分の部屋に入る。そこは何処もかしこも赤や黄色の派手な花ばかりが置かれている。その形も独特でありまさに異形の花々であった。
今自分が持っている花を置いてからだ。一旦ベッドの上に寝転がった。そのベッドの周りも花達に囲まれている。その赤や黄色も実に派手な色だ。
その花の中に囲まれた亮治はほっとした顔になる。そしてそのうえで言うのだった。
「やっぱり落ち着くよな」
こう言ってほっと一息つくのだった。そうした日々を送っていた。
その彼はとにかくそうした花を見ればすぐに買った。そして彼はやがて花屋でのアルバイトもはじめることにしたのであった。
「えっ、じゃああれか」
「花に囲まれたいからか」
「それでなんだな」
「あと金が必要になった」
こう自分の教室でクラスメイト達に話すのだった。
「あまりにも買い過ぎたしな。肥料も必要だしな」
「それでか」
「それで金が必要なのか」
「ああ、それでだ」
まさにそうだと話す彼だった。
「それにやっぱりな」
「とにかく花に囲まれたいのか」
「ああした派手な花にか」
「落ち着く」
このこともここでも言うのだった。
「だからだ。是非な」
「それがわからないんだよな」
「そうだよな」
「何でなんだ?」
ここで友人達は首を傾げながら述べていく。
「何でそんな花ばかり集めるんだか」
「しかも囲まれてな」
「それが落ち着くんだな」
「そうだ、落ち着く」
彼ははっきりと言い切った。
「だからバイトもはじめる」
「じゃあ部活はどうするんだ?」
「そっちはどうするんだ?」
「当然そちらも続ける」
辞めるということはしないというのだった。
「両方やる」
「まあ頑張れ」
「それじゃあな」
こうして彼はその花屋でのアルバイトもはじめたのだった。彼は実際に花屋で派手な花達に囲まれて満足していた。いつも穏やかな笑みを浮かべて働いていた。
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