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戦国異伝

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第二百三十七話 魔界衆その十三

「あ奴もおるし権六達もな」
「そうしたことが出来る故」
「御主達を連れて来ていいと思ってじゃ」
「お供を許して頂いたのですか」
「そういうことじゃ、しかしわしもことが終わればな」
 都のそれがというのだ。
「すぐに安土に戻る」
「そしてそのうえで」
「伊賀攻めの用意に入る」
 信長自身もというのだ。
「そうする」
「左様でありますか」
「そうじゃ、とかくな」
「今は、ですな」
「御主達はわしの傍におるのじゃ」
「そしてそのうえで」
「色々と働いてもらう」
 都においてというのだ。
「忙しいぞ。よいな」
「畏まりました」
「それとじゃ。徳川家じゃが」
「はい、あの家が何か」
「前から思っておったが武辺者は多い」
 そうした者は十分にいるというのだ。
「四天王等な」
「大久保殿のご一族や鳥居殿も」
「多い、しかし文が出来る者はな」
「少ないですか」
「御主はどう見るか」
「弥八郎殿がおられますが」
 本多正信の名をだ、蘭丸は挙げた。
「ですが」
「あ奴だけじゃな」
「しかもあの方はどうも」
「家の中でじゃな」
「評判が悪い方です」
「徳川家の中では毛色が違うからな」
 その武辺者が多い徳川家の中でだ、実は徳川家は三河以来の武辺者が多い家である。それ故に戦には強いがだ。
「しかもな」
「あの方ご自身が」
「一物あるな」
「徳川殿への忠義は確かですが」
「陰謀を好む」
「特にご子息は」
 彼の嫡男である本田正純はというのだ。
「お父上以上にです」
「陰謀を好むな」
「剣呑な方です」
「それ故にな」
「あの方は家中で浮いております」
 その嫡男の正純共々というのだ。
「それがです」
「仕方ないにしてもな」
 徳川家の中でだ。
「徳川家の文が弱くなっておる」
「どうしても」
「まあしかし竹千代にとってはいいかも知れぬ」
 家康のこともだ、信長は述べた。
「その方がな」
「武辺の家である方が」
「うむ、よい」
 家康にとってもというのだ。
「下手に文が強いとな」
「あの方はですか」
「謀を覚えてな」
 それも過度にだ。
「竹千代自身を悪く変えてしまう」
「だからこそ」
「あのままでよい」
 そうだというのだ。
「武辺でな」
「では徳川家も」
「うむ。武じゃ」
 それがいいというのだ。
「それでいい、竹千代は政もよいが」
「真面目な政をされていますね」
「そrでよいのじゃ」
「だからですね」
「下手な謀は不要じゃ」
 家康にはというのだ。
「だから弥八郎もな」
「そしてご子息も」
「浮いておるのじゃ、しかし二人は徳川家に必要じゃ」
 本多も正純もというのだ。
「だからな」
「このままですね」
「あの者達は徳川にあってよいのじゃ」
「そういうことになりますか」
「そうじゃ、では我等はな」
「都に向かい」
「ことを果たそうぞ」
 こう言ってだ、信長は蘭丸達を連れ上洛した。そして遂に一つのことを果たすのだった。彼にとっても天下にとっても大きなことを。


第二百三十七話   完


                         2015・7・27 
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