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真田十勇士

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巻ノ二十五 小田原城その十一

「川が多く」
「田畑は多く持つことが出来る」
「栄えることが出来る場所です、それこそ」
「それこそとは」
「近畿の様に」
 こう言うのだった。
「それが出来ます」
「まさか」
「それは」
「関東が近畿程まで栄えるとは」
「とても」
 家臣達は僧侶の話を聞いて皆首を傾げさせた。
「ならないのでは」
「幾ら何でも」
「確かに東国はそれなりに栄えているとしても」
「それでも」
「今はそうですが」
 僧侶は家臣達にも話した。
「しかし」
「やがては、ですか」
「そこまで栄える」
「そうした場所ですか」
「本朝は近畿とです」
 その近畿と、というのだ。
「関東の二つが栄える場所です」
「主に、ですな」
「はい、尾張や安芸、九州の北。それに」 
 さらに言う僧侶だった。
「東北の仙台の辺りもいいでしょうが」
「安芸や仙台もですか」
「実は本朝の全てを巡ってもきまして」
「ご存知なのですな」
「そうした場所も栄えます、しかし」
「天下の軸となるのはですな」
「近畿と関東です」
 幸村にだ、僧侶ははっきりと述べた。
「この二つがなれます」
「だから関東もですか」
「今後政の仕方によっては」
「都や大坂、奈良がある近畿の様に」
「栄えます」
「そうなのですな」
「ですから」
 また言った僧侶だった。
「武蔵にもです」
「その江戸にも」
「行かれては」
「しかし東国の軸といいますと」
 ここで幸村はあえて言った。
「今は小田原、そしてかつては」
「鎌倉ですな」
「そうですが」
「確かに鎌倉や小田原もいいですが」
「それでもですか」
「場所が今一つよくありませぬ」
 こう言うのだった。
「どちらも」
「相模自体も」
「確かに鎌倉は守りやすいです」
 このことは僧侶も言った。
「しかし周りに田畑が少なく」
「三方が山で」
「一方が海です」
 それが鎌倉が守りやすい理由だ、その為頼朝もそこにいたのだ。そして室町幕府も東国を治める中心としたのだ。
「それがいいにしても」
「周りに田畑が少なく」
「そして狭いです」
 このこともだ、僧侶は指摘した。
「それが為栄えましても」
「それが限られている」
「だから都程栄えなかったのです」
「そう仰るのですか」
「しかも関東全体から見てです」
 僧侶はさらに言った。 
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